<原告陳述は認めない、損害論は争点になるかどうか不明~裁判所との前哨戦~>

 以前の裁判では、福島原発事故のような過酷事故の発生と被害の実状は単なる「杞憂に過ぎない」と一蹴されてきた。1973年提訴の東海第二原発設置許可処分取り消し訴訟においても裁判所の判断は例外ではなかった。

 しかし、福島原発事故が起こってしまった現在、その事故も収束していないばかりか、被災住民の惨憺たる生活が先の見通しもたたないまま続いている現状では、もはや「杞憂」という魔術は通じなくなったのである。

 したがって今回266名が原告となって提訴した、日本原電東海第二原発に対する操業差し止め・国の設置許可処分無効確認等の訴訟では現実に過酷事故は起こる、その被害は広範囲に及び、継続的で深刻な悪影響を人とコミュニティに与えているという事実に基づく被害論が大事な争点であると原告らは考えてきた。その思いを中軸に、二度と福島原発事故のような事故を起こしてはならない、と訴訟を決断したのである。

 その線上に福島原発事故被害に重ねて、それがもたらした放射能による原告自らの体験を陳述する機会を口頭弁論期日の度ごとに確保し、訴訟を起こした意味を繰り返し訴えることが、この訴訟の筋をしっかりと裁判所に理解してもらう上で必要だと考えた。

 しかし、第二回口頭弁論期日を前にした進行協議(訴訟手続きにかかる法廷外での話し合い)から、原告らの考えと裁判所の訴訟指揮の方向とに食い違いがあらわになってきた。次回以降原告陳述を認めない(第一回期日では3人の原告陳述を認めた)と。

 4人目の原告が予定していた陳述は「事故が起きたら農業が出来なくなる」という趣旨のものであるが、そのような被害論につながる議論が本訴訟で争点になるかどうかわからない、というのだ。原子炉の新安全基準に照らして旧基準の合理性があるのかどうかの争点がまずあって、それが順序として先だ、つまり安全論にかかる基準の合理性をめぐる争点から入りたいとの訴訟指揮を示したのだ。以上が前哨戦である。

<裁判を受ける権利を否定する「事務連絡」と第三回期日の一方的閉廷宣言>

 原告全てを入れる法廷は無い、どうするか。裁判所外に法廷を準備するか、法廷内部をモニターできる装置と場所を準備せよ、という原告側要求に、裁判所は休廷時間を設けて原告を入れ替える、そのための待合室を設けるとして裁判は始まった。

 それが集会の場になる、所員の指揮に従わないなどの一方的理由で待合室を廃止する、当事者席の増加要求は一切認めない、原告が裁判所に協力する立場から当日の法廷に入る原告の抽選を原告自身が行ってきたが、裁判所敷地内・敷地出入り口付近でのその作業を禁止する、口頭弁論期日の時間を今後1時間とする(先の協議で1時間30分としたのに)、などと裁判所は連絡してきた。この裁判所の裁判を受ける権利を踏みにじる行為に、その不当性を批判し話し合いの場を求めたが裁判所は応じなかった。

 なお先に述べた原告陳述を認めないというのは裁判官会同での国家意思だということも分かっていたので、裁判長の訴訟指揮に対して原告の立場を断固主張するべく第三回期日に臨んだのである。事前に裁判所は原告・準備書面の弁論を「留保する」と通告してきた。こうして第三回期日の焦点は原告本人の弁論を認めさせることができるかどうかに定まった。

 準備書面2「日本原電の経理的基礎」、準備書面3「被害論①福島原発事故被害の実相、被害論②被害論の法的位置づけ」、と代理人による弁論は予定通り進み、ついで原告本人が弁論(「本件発電所が過酷事故を起こした場合の損害について」)に入ろうとした時、裁判長が制止した。間髪をいれず多数の原告が「裁判長に異議あり」、「民訴法150条により裁判長の訴訟指揮に異議あり」と口々に叫んだのである。

 「黙りなさい」との裁判長の制止があったが止まず、原告本人が立ちあがって自分の準備書面の弁論がなぜ必要かの理由を述べ、他の原告が裁判長の訴訟指揮の不合理を述べたてた。

 結局、裁判長は原告らの異議申し立ては正当であること、したがってそれに対する法的対処をとる必要のあることも忘れて、「閉廷」を宣言してしまった。全くの失態といわねばならない。その後の総括集会において原告らは、法廷での行為の合法性・正当性を確認し次への闘いを誓いあった。

 

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