原発事故直後の2011年4月に行われた統一地方選挙。ドキュメンタリー映画『選挙』(2007年)では、自民党候補として選挙戦の赤裸々な内実をさらけ出した山内和彦さんは、再度川崎市議会選挙に挑む。ただし今度は脱原発を掲げ完全無所属での立候補。選挙事務所も組織も準備もなく、タスキや握手も封印しての選挙戦だ。その姿を追った『選挙2』が参院選前の7月6日に公開される。監督の想田和弘さんに話を聞いた。(聞き手=編集部)

プロフィール▽想田和弘(そうだ・かずひろ)
1970年栃木県足利市生まれ。東京大学文学部卒。スクール・オブ・ビジュアルアーツ卒。93年からニューヨーク在住。NHKなどのドキュメンタリー番組を40本以上手がけた後、台本やナレーション、BGM等を排した、自ら「観察映画」と呼ぶドキュメンタリーの方法を提唱・実践。その第1弾『選挙』(07年)は世界200カ国近くでTV放映。その後『精神』(08年)、『Peace』(10年)、『演劇1』『演劇2』(12年)を発表。いずれも国際的な賞を受賞。著書に『なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか』(講談社現代新書)など。



<違和感のある原発事故後の選挙風景>

◆作品の編集には2年近くかかっていますね

 自分が見たものを消化できなかった。なんか変なものを撮ったけど解釈に困るな、という感じでした。正直言えば、映画にならないかもと思って半ば捨てていたんです。

 けれども昨年12月の衆院選の結果を見ていたら、ムラムラと撮った映像を見たくなった。実はそれまで1回も見ていなかった。今だったら編集できるんじゃないかと思ったらドンピシャでした。

 2年近い間、知らず知らずのうちに見たことを消化していたんでしょうね。時間を置いたからこそ映像を解釈できたという気がします。

 撮影当時は新聞でも「原子炉へ窒素注入」などと、事故が続いている状態が生々しく伝えられていました。日常会話にも放射能汚染の話題が出るなど、みんな原発のことで頭が一杯だったわけです。けれども一方で、駅には人があふれ、すごい急ぎ足で通勤し、公園では子どもたちがたわむれ、お母さんたちはいつものようにスーパーで買い物をしていた。

 あれだけの事故が起きたというのに、選挙戦では候補者たちは相変わらず駅頭に立ち、「おはようございます、いってらっしゃいませ」とお馴染みの選挙風景を繰り広げ、原発事故を争点にすらしない。有権者もいつものように無関心にその前を通り過ぎて行く。

 それらが並列していることが不思議で、僕の中でつながらなかった。

 いわば普通のパニック映画のセオリーからはあり得ない風景が映っていたわけです。たとえば宇宙人が襲来してきたら、みんな「キャー」といって逃げるお決まりの図がありますよね。ところが僕が撮ったのは、宇宙人が襲ってきているにも関わらず、いつも通りスイカ使って会社に行っているという図ですよ。

◆昨年の衆議院選挙では自民党が大勝しました

 原発をずっと推進してきたのは自民党だというのは、有権者ならみんな知っていますよね。しかも党首である安倍晋三氏は「原発維持します」と公言していました。にもかかわらず、あれだけの大差で彼らが勝った時には衝撃的でした。「ほんとかよ!」って。

 チェルノブイリ級の原発事故が起きたのに、原発を推進してきた政党が選挙で大躍進する。この不思議な結果というか、「不条理」を理解する鍵が、実は事故直後に川崎で行われた小さな市議会選挙に凝縮されていたのではないか。そんな気がして『選挙2』を編集したわけです。

※これに続く内容
<カメラも状況に巻き込まれてしまう瞬間>
<現在の政治を変える道筋は何なのか>

(続きは本誌1338号でお読みください)

 

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