「東電原発事故に際して、アカデミズムは真実を明らかにする責任を果たしたか」。福島大学と東京大学の研究者らが行ってきた、放射能汚染の実態解明や被災者への情報提供などの成果を振り返るシンポジウムが2月11日に東京大学本郷キャンパスで開かれた。

 「アカデミズムは原発災害にどう向き合うのか」と題して開かれた同シンポジウムでは、東大医科学研究所に所属し南相馬市立総合病院非常勤医でもある坪倉正治氏が福島県南相馬市での医療の現状を報告。

 南相馬病院の医師らは、事故直後から内部被ばくを調べるホールボディーカウンター(WBC)を貸してくれるよう各地の原発に要請したが、ことごとく断られたという。

 坪倉氏は「本格的にWBCを運用する体制が整ったのは事故後半年たった2011年9月からで、住民からは『なんで半年も放っておいたのか』などと詰め寄られた。翌年3月までに約1万人を検査したが、チェルノブイリ事故当時、ウクライナでは最初の1年で検査件数が約13万件に達していたことを後から知り、日本の被ばく検査体制のお粗末さにがく然とした」と当時を振り返った。

 また、内部被ばくの現状について「セシウムが徐々に排出されていることが確認できている」とする一方、「中には継続して汚染された食物を摂取し続け、数値が下がらない人もいる」と指摘。「継続検査体制の確保が必要だが、受診率や関心が大きく低下しており、多くの人が(被ばくを)余りにも気にしなくなり過ぎている」と警鐘を鳴らした。

 福島大学の後藤忍准教授は、原発安全神話によって国民の公正な判断力が低下する状況を「減思(げんし)力」と呼び、同じ過ちを繰り返さないために「放射線と被ばくの問題を考えるための副読本」を学内研究者らと作成した。

 後藤氏は、副読本に対して学内で様々な形で圧力がかかったことを踏まえ「大学から『市民からの要望に寄り添うべく特段の配慮を』と要請されたが、大学は『安全』と思いたい市民にだけ寄り添い、放射線に慎重な市民の不安には寄り添おうとしない」と述べ、知性の公平さを欠いた大学当局の姿勢を批判した。

 (ジャーナリスト・斉藤円華)

(本誌1335号掲載)

 

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