福島の子どもの避難実現を求める「ふくしま集団疎開裁判の会」が1月18日、院内集会を行った。

 「ふくしま集団疎開裁判」は、2011年6月、福島県郡山市に住む14人の小中学生が郡山市を相手に、年間1ミリシーベルト以下の安全な場所で教育を受けることを求めて起こした裁判。

 一審の福島地方裁判所郡山支部は、同年12月に申し立てを退ける判決を下したが、その根拠は年間被ばく線量が100ミリシーベルトを超えていないというものだった。「子どもの人権侵害」ともいえる判決に対して原告と弁護団は直ちに異議申し立てを行い、現在、二審の仙台高裁で係属中である。

 院内集会で柳原敏夫弁護士は、子どもたちの健康を憂慮し、「子どもたちがバラバラにされずに、なおかつ被ばくを避けることを実現するには自主避難という方法では限界がある。学校ごと、クラスごと、集団の単位で避難するしか解決の方法はありません」と訴えた。

 福島県南相馬市在住の「安心安全プロジェクト」代表・吉田邦博さんは、福島県の大部分が原発であれば「C区域」に相当するエリアで、高性能マスクを着用し、10時間以上居てはいけない場所だと指摘。それと同等の汚染場所に人々が住まわされていることを批判した。

 さらに南相馬市に住む人々の衣服を放射能測定した結果を報告。「長袖のTシャツ1枚から130ベクレル。5回洗濯した後に再度測ると150ベクレルに増えた」。南相馬市の理髪店で集めた頭髪も計測したところ1キログラムあたり130ベクレルと、衣服や頭髪が汚染されていることを警告した。

 昨年、福島市の切り干し大根から1キログラム当たり3000ベクレルの放射性セシウムを検出したこともあり、大気中に汚染物質が浮遊している可能性が高いとのこと。

 千葉県船橋二和病院の柳沢裕子医師は、ホットスポットとなった茨城県取手市の小中学生の心電図異常が事故前より増加したことに言及。

 「チェルノブイリの経験を見ていれば心配することがたくさんある。危険かもしれないということが分かっていて、対策をとらずに、『やっぱり危険だった』というのはあり得ない」「避難が困難であることは重々分かってはいるが、安全でないと何回でも言わなければいけない」

 「原子力行政を問い直す宗教者の会」の大河内秀人住職は、宗教者が過去に戦争を止められなかったこと、今回の原発事故も止めることができなかったことを深く反省し、活動を続けている。事故直後から西日本の会員に子どもたちの疎開避難受入を要請したが、福島県側で人々を県外に流出させない力が強く働いた。そこで去年4月に福島で全国集会を開き、県庁の教育委員会に疎開の要望書を提出したという。

 「パルシステム命結(ぬちゆい)の会」の瀬戸大作さんは、昨年7月以降、福島の仮設住宅の支援活動をしている。そうした中、双葉町の井戸川克隆町長と会い、「ボランティアは非常にありがたい。だけど福島の中通りの子どもたちは避難すべきだともっと言ってほしい」と言われたことを報告。現地の状況を伝え、東京だからこそできる運動の展開を訴えた。

 休憩をはさんで第二部。新潟県内の疎開受け入れについて「新潟雪だるまの会」の榎本健二さんが、自治体と市民の協力で実現させたいと意気込みを語る。

 FoEジャパンの満田夏花さんは、20ミリシーベルトの避難基準撤回を求め、放射線量の高い福島市渡利地区の避難区域設定を要請し続けてきた。だが国は避難基準をさらに緩和させようとしていると指摘。

 現在、原子力規制委員会が原発事故後の避難基準を策定しているが、事故直後の数時間は毎時500マイクロシーベルト(週50ミリシーベルト)、その後は毎時20マイクロシーベルト(年20ミリシーベルト)という高い設定だ。

 ところが規制委員会の防災対策指針に関する検討チームでは、さらに高いIAEA基準の採択を求めている。それは緊急時の避難基準として週100ミリシーベルト、毎時1000マイクロシーベルトというとてつもない被ばく量を強要するものだ。

 そうした方針を許しがたいとする一方、満田さんは昨年6月制定された「原発事故子ども被災者支援法」に希望を見出した。

 一昨年の8月に郡山市から静岡県に避難した長谷川克己さんは、色々な苦悩はあるものの子どもの未来・健康が一番重要だと呼びかける。

 「政府側へのアクションも必要ですが、もうひとつはやはり福島に2年住み、いまさらという気持ちの福島県民に対しても、大人としての行動をとるべきだと語ることが大事だと思います。子どもや未来に対して責任を持つのが大人です」

 続いて先に発言した吉田邦博さんが、南相馬市で放射線の健康影響に関する知識が広まらないことへの危惧を語る。そして、あるボランティア団体が汚染されていない落ち葉を子どもたちに提供したことへの疑問を投げかけた。

 「落ち葉に触れられなくなった現実をなぜ感じないのか。なぜそこに子どもを住まわせて何とも思わないのか。自分たちが良いことをしたという満足のために平気でそういうことをする。より子どもたちが逃げれない状況になっていることに一切気づいていない。方向性を間違えることで被害を大きくする可能性があることを考え、地元の声を聞いてやっていただきたい。避難したいという声を上げられない人は地元にいっぱいいます」

 最後に柳原敏夫弁護士が「裁判と並行して全国・全世界の市民のネットワークを通じて、国に子どもたちの救済をさせる運動を起こしていく」と強い決意を示した。

 (編集部・温井)

(本誌1334号掲載)

 

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