千葉県市原市東国吉では、ここ数年で、バスの本数が極端に減少した。サラリーマン家庭は都市部への通勤は不便で、農家も高齢化している。

 自然は残っているが、昔の美しい景色は減ったという。石油の時代に入り木炭の需要が減少、薪炭林としてのナラ・クヌギなどの雑木林は消えた。政府は住宅材として杉の植林を奨励したが、現在は安い海外の木材に押されて需要はなく、しかも95%の杉が病気で製品価値が無い状態だ。

 こうした状況に対し東国吉では地元ボランティアが集まり、壊れた遊歩道や農業用水路の復元、竹藪の整理を行っている。

 さらに「子供の教育の場」などを目的にキャンプ場の整備が行われ、上総掘りによる井戸建設が昨年4月から始まった。「上総掘り」は、千葉県木更津発祥の人力のみで行う掘り抜き井戸工法。かつて温泉や石油の採掘で成果をあげたが、1970年代には役割を終えている。

 地元有志の方が気の遠くなるような掘削作業を行う中、私も何度か参加した。そんな中で、井戸掘りを手伝うガーナの「マンフィーと青年基金」代表・マンフィーと知り会い、貧しい村の水事情を知った。

 ガーナ現地では川の水を生活用水として利用するしかないが、工場排水や大量の農薬が流れ込み不衛生だ。そのため寄生虫で苦しむ子供も多いという。マンフィーは日本で集めた募金でガーナのウコランザ村に井戸を2基建設、結果1年で病気の発症率が半分に減った。今は新たにもう1基の井戸建設を目標に募金活動を行っている。上総掘りも参考にしたいとのことだ。

 自然環境を破壊すれば、命に直結している水を失う。井戸掘りを通じ水の大切さを再認識すると同時に、里山をよみがえらせようとする東国吉の人々に希望を与えられた。
 キャンプ場の井戸は、今年6月に完成。手押しポンプを設置し、澄んだ水になるまでの水汲みが現在も行われている。飲み水としての役場申請まであと少しだ。

 (阿部峰志)

 

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