7月1日、多くの市民が座り込み反対する中で、福井県の大飯原発3号機が再稼働した。それに先立つ5月16日、都内で講演会「さようなら原発 脱原発・持続可能で平和な社会をめざして」が開催された。東京電力・再建計画を検証して「原発は不良債権」と指摘する慶応大学教授・金子勝さんの講演を載録する。(文・構成=渡瀬義孝)

プロフィール▶かねこ・まさる
1952年東京都出身。1980年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。東京大学社会科学研究所助手、法政大学経済学部教授などを経て、現在は慶應義塾大学経済学部教授。近著書に『原発は不良債権である』(岩波ブックレット)、『「脱原発」成長論』(筑摩書房)、『新・反グローバリズム』(岩波現代文庫)、『失われた30年-逆転への最後の提言』(神野直彦との共著 NHK出版新書)等

<家庭向け電気料金にしわ寄せが>

 「原発がないと経済は成長しない」とか、「化石燃料費がかかるから電気料金を値上げする必要がある」と言う人たちがいます。こんな嘘デタラメに騙されないように、今日は経済の視点から原発を検証してみます。

 まず推進派の大前提として、「エネルギーが足りないから原発は必要」という話があります。しかし、例えばこの冬は「原発がほとんど止まっているので停電が起きるかもしれない」と言われていましたが、全然足りました。恐らくこの夏も電力は足りているはずです。大手企業の自家発電装置が去年からどのぐらい増設されたのかを調べてみれば、「何で足りないの?」となるはずです。

 でも次に言われるのはコストです。「原発を止めれば石油や石炭の燃料費がかさむから、原発は一番安いんだ」とデマ・キャンペーンが行われるわけです。しかし最近明らかになったように、東京電力の電力供給は家庭向けが38%しかないのに、利益の91%はそこから得ていました。実際に昨年、一般家庭の電気料金は600円から1000円ぐらい値上がりしています。

 一方で東電の場合約6割を占める企業向けの電気料金は、2002年福島原発での事故隠しをきっかけに形だけ自由化されました。なぜ形だけかと言えば、自由化と言っても既存電力会社以外に選択肢はほとんどないからです。

 とは言え自由化されたので、例えばトヨタ自動車には関西電力、中部電力が売り込みにくる。電気料金を上げれば入札に勝てないので、その分のコストを家庭向けに転嫁しているわけです。

 この家庭向け電気料金は、総括原価、つまり発電コストに一定の利益を乗せて価格設定できる。おまけに地域独占ですからぼろ儲けです。この総括原価のなかには燃料調整費があり、3カ月毎に経産省に申請しますが、ほぼ間違いなく認可されます。

 私は東電の有価証券報告書を精査していますが、燃料費の上昇分をほとんどすべて電気料金値上げでカバーしていることが分かりました。当然、企業向け電力分のコスト増も家庭向けが負担しているわけです。なんでこんなことを国が認めるかと言えば、東電が怖いからです。

<原発のない電力会社ほど黒字>

 さて、電気料金はこんなカラクリですが、昨年12月までの各電力会社の財務状況を見ると、11社のうち3社は黒字です。一つは原発を持っていない沖縄電力。もう一つは大間原発を建設中ではありますが、主に水力発電と火力発電の電源開発、そしてほとんど石炭火力発電の中国電力です。中国電力は島根原発を持っていますが、原発依存度は3%です。

 つまり原発を持っていない電力会社は、ほとんど黒字決算なんです。なぜなら、燃料費が上昇しても、実質的にその分を電気料金に乗せられるからです。逆に原発をたくさん持っている電力会社ほど赤字が酷い。しかも早く稼働停止したところほど赤字が酷い。

 その理由には二つの要因があります。第一に、原発の発電コストは1キロワット時当たり5~6円とされていますが、石油火力は10円を超えています。本当は原発の発電コストがこんなに安いわけがありません。安全投資を抑えて、老朽原発を動かすからです。ともあれ、経産省にはこのありもしない価格で申請している。それを火力で代替するとなると、計算上は一気に赤字が増えるわけです。この赤字を埋めると称して電気料金が値上げされるわけです。

 しかも原発は一般の発電と違って、止めても危険、止めても維持費がかかります。さらに建設費だけで一機3000億から5000億もしますから、多額の借金をしている。当然資本コストの割合が高くなるので、減価償却費だけでものすごい額になる。おまけに借金返済コストもかかる。東京電力は、2012年3月末で約13兆円の総資産がありましたが、同時に約8兆5000億も借金を抱えています。

 ですから、「原発が止まったから新たに燃料費が生じますよ」というのは嘘で、原発が全部止まるというただそれだけで、1兆2000億前後の赤字が生じているはずです。だから一刻も早く動かしたいのです。

(続きは本誌1328号でご覧ください)

 

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