東京電力福島第一原発事故に対する模擬裁判「原子力発電所を問う民衆法廷」の第1回公判が2月25日、東京都内で開かれた。市民による民衆法廷に法的拘束力はないが、日本の原発政策を解明し、今回の事故の責任を明らかにすることが目的だ。開廷にあたって判事役の前田朗氏が、法廷の基本姿勢は原発事故被害者の視点に立つことであると訴えた。

 被告とされたのは、東京電力の清水正孝前社長や勝俣恒久会長、斑目春樹原子力安全委員長や菅直人前総理大臣など。罪状は、大量の放射性物質を環境中に放出したことによる公害犯罪の法律違反、ならびに業務上過失致死傷罪である。

 申立人として福島県から避難した7人が意見陳述を行なった。福島原発から1・5㎞の場所に住んでいた亀屋幸子さんは、避難について「国からも東電からも何の情報も入ってこない。何も分かりませんでした」と訴える。「原発事故により将来にわたる生活不安と放射線の影響による健康不安を抱えながら避難生活を余儀なくされています」。

 南相馬市に住んでいた村田弘さんは、避難の中で86歳と99歳の知人が亡くなり、原発事故で津波被害者の捜索・救助が1ヶ月放置されたことを憤る。「政府も東電も今回の原発事故による一般の死者はゼロだというが、とんでもない」。

 福島で有機農業を行ってきた大河原多津子さんは、事故後に顧客が次々離れていくことに大きなショックを受けた。

 判事役の鵜飼哲氏は、事故後の政府の対応を批判し、「民衆は一つではなく分断されている。家族、生産者と消費者、仕事をしていた仲間同士が引き裂かれバラバラにされている。原発そのものが原発労働者、ウラン採掘労働者のさまざまな犠牲の上に、民衆が分断されていることを条件に存在してきた」と訴えた。

 つづいて検事役の河合弘之弁護士が発言。河合弁護士は、浜岡原発差止訴訟弁護団長で脱原発弁護団全国連絡会代表でもある。今回の東京電力の事故について、個人責任を追及しないマスメディアの姿勢を厳しく批判した。

 「オリンパスの虚偽報告事件は発覚してから1、2ヶ月で逮捕、強制捜査。非常に厳しい民事責任も問われている。ところが東電の事件で社会的、民事的、刑事的な責任の追及はひとつもありません。人間は個人的責任追及を受けない限り深刻に考えない。逃げてしまう。同じことが繰り返され、原発の再稼働も集団無責任状態の中で再開される」

 証人尋問で証言した高橋哲哉氏は福島県出身。震災後に『犠牲のシステム 福島・沖縄』(集英社)を刊行した。高橋氏は原発は稼働する限り様々な犠牲を生み出し、人権を侵害すると批判。電気を利用してきた自身にも一定の責任があるとしながらも「だまされた側がそれに気づいたらだました側の責任を追及するのは全く当然のこと。

 国策として原発を推進してきた側の責任とそこから出てくる電力を享受してきた市民の責任とを同じく考えることはできない」として、戦後の西ドイツが自国でナチス犯罪の裁判を行ったことにふれた。「このような事故を二度と繰り返さないために、むしろ市民は法的責任・刑事的責任のありかを追及する責任がある」。

 たんぽぽ舎の山崎久隆さんも証言台に立ち、東京電力がいかに原発事故の対策を怠り、危険性を過小評価してきたかを明らかにした。
 第2回公判は4月15日、大阪での予定。詳しくは
   http://genpatsu-houtei.blogspot.com/

 

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">