米国から来日したNGO「資源・安全保障問題研究所」所長のゴードン・トンプソン氏と、米プリンストン大学公共・国際問題教授のフランク・フォンヒッペル氏が、1月19日、衆議院議員会館で講演を行い、核燃料サイクルの見直しを訴えた。

 各国の核物理学者らで作る「国際核分裂性物質パネル」(IPFM)のメンバーである二人は、講演に先立ち1月17日に青森県庁を訪れた。そこで六ケ所村の核燃料再処理工場に対して独立した国際的な専門家による安全性評価を行なうよう県に要請した。

 フォンヒッペル氏は、核物理学者で、ホワイトハウス「科学・技術政策局」国家安全保障担当次官を務めた。核不拡散政策の権威でもある。講演では、各国が高速増殖炉に取り組んだが実現せず、使用済み核燃料から分離した大量のプルトニウムが核拡散の危険をもたらしたと語る。

 「1974年にインドは高速増殖炉用として分離したプルトニウムを使って核兵器を作り、核爆発を起こした。アルゼンチン、ブラジル、韓国、パキスタン、台湾が『民生用』の再処理技術を手に入れようとしていたが、これは秘密の核兵器計画に役立てるため。今日非核兵器国で再処理をしているのは日本だけ」

 「IAEAは使用済み核燃料の中のプルトニウムは自己防衛的だと言っています。つまりセシウム137に囲まれているからです。厚い防護壁の後ろで処理する能力がなければプルトニウムを使うことはできない。しかし再処理をしてしまうとプルトニウムは簡単に扱うことができる」

 さらに再処理を各国がやめた理由として次の点が指摘された。①再処理をしても放射性廃棄物処分場立地はしやすくならない。再処理をしないスウェーデンとフィンランドの方が地下処分場の計画が進んでいる。②電力会社は高速増殖炉が商業化されると思っていない。③使用済み燃料を貯蔵し、そのまま直接処分するよりも再処理の方が10倍高い。④プルトニウムをMOX燃料として、原子炉に装荷すると制御できる安全余裕が少なくなる。プルトニウムの含有量が多いため使用済み燃料の発熱量が高く、地下処分が困難になる。

 ちなみに日本の六ヶ所再処理工場は、40年間運転するだけで8兆円かかり、建設費や廃止のためのコストを含めると13兆円にもなるという。なぜ日本は再処理を進めようとしているか改めて疑問が湧く。

 続いてトンプソン氏が再処理の放射線リスクについて語る。まず福島第一原発事故によって大気中に放出されたセシウム137の量が36ペタベクレルなのに比して、4つの使用済み核燃料プールの合計が2200ペタベクレルと桁違いに大きいことを指摘。使用済み燃料に膨大な核生成物が含まれているかがわかる。しかし六ヶ所再処理工場はそうした放射線リスクに対しての「システマティックな研究がなされていない」状態だ。

 「六ヶ所のプールには3千トンの使用済み核燃料が稠密に詰め込まれている。ここに入っているセシウムの量は約1万ペタベクレル。プールの水がなくなった場合、加熱発火して、セシウムが漏れる危険がある。高レベル廃液タンクや関連機器でも化学爆発が起こり得る」

 こうした六ヶ所再処理工場のリスク低減については、高レベル廃液のストック量を制限し、使用済み燃料プールの稠密度を下げ、最終的に廃止措置に至るプロセスが提示された。そして使用済み核燃料を乾式貯蔵で保管する方がコストも安く、リスクも低いという。

 さらに情報を公開し、独立した評価委員会と公聴会を開き、市民と専門家が評価できるシステムが必要と訴える。

 たとえばドイツでは70年代に再処理工場をニーダ・ザクセン州に建設することを計画したが、州政府は放射線リスクを含めた様々なリスクを検討する委員会を設置。その後、公聴会を開いて討論が行われ、最終的に州は計画を拒絶した。

 「産業側・規制当局は、リスクについて公開の議論をすると悪意のある者にどこに弱点があるのかを知らせることになると主張するだろう。しかしそうした秘密主義が悪い影響を及ぼす。ある研究者によると86年のチェルノブイリ事故は秘密主義から起きたという。ある操作をすれば原子炉が暴走する危険性があったのに知らされていなかったからだ。秘密主義でセキュリティが保障されるのではない」

 日本の核燃料サイクルは、発足当初から政府や電力業界に異論があった。にも関わらずそれを推しきって進めてきたと、東京新聞が報道している。そんな体質が今回の原発事故を招いたともいえる。再処理に関して情報の公開と社会的な討論が必要だと改めて感じた。

 (編集部・N)

 

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