放射能に汚染された福島県飯舘村の現実 原発事故が多くの大切なものを奪った 長谷川健一さん
福島第一原発事故から半年経った今でも収束の目途は立たず、多くの人が避難したままだ。9月4日、東京都内で「知ろう、ふくしま かえよう私たちの生き方」と題した講演会が開催された。主催は同実行委員会。講師は報道写真家の樋口健二さんと、福島県飯舘村の酪農家・長谷川健一さん。福島県酪農業協同組合理事でもある長谷川さんは、飯舘村の厳しい現実を語った。(写真提供:長谷川健一)
<日本一美しい村を襲った放射能>
こんにちは。福島県は飯舘村からやってまいりました長谷川と申します。私の部落は、飯舘村前田地区で、その区長もやっております。
飯舘は日本一美しい村として推薦され、認定を受けた村です。標高は平均450m、面積230平方キロメートルと非常に広く、その内75%が山です。
3月の地震当日、私は牧草地で重機に乗って仕事をしていたのですが、突然目の前に地割れが起きました。驚いてすぐに家に向かったのですが、幸い家は屋根瓦が落ちたくらいでそれほど被害はありませんでした。
地震後は停電のために何もできなかったのですが、私は自家発電装置を設けており、それで搾乳していました。近隣の酪農家にも発電機をもってまわって搾乳し、終わったらその発電機でテレビを見ていました。
すると原発が爆発して避難範囲が5キロ、10キロと広がっている。心配になり14日夜9時頃、村の対策本部に行きました。ちょうど村の担当者がおりまして、「いったいどうなっているんだ。村の放射能の値はなんぼあるんだ」と尋ねたら、「45マイクロシーベルトを超している」と。「それじゃえらいこったべ」とすぐ帰ろうとすると、その担当者は「ちょっと待ってくれ。村長にこのこと口外するなと言われている」と。つまり黙ってろと言うわけです。私は「なに馬鹿なこと言ってんだ」と、すぐ部落に戻りました。
私の部落には5つの班があり、それぞれの班長さんに連絡して、翌3月15日夕方6時半から緊急集会を開くことにしました。当日は雨が降っていて、それが雪になりました。みんな集まってもらったのですが、今思えば悪いことしたなと。後にカメラマンの森住卓さんと話して分かったのですが、一番線量の高かった時だったからです。
当日森住さんは飯舘村の隣の伊達市にいて、計測すると毎時50マイクロシーベルトあった。それで伊達市から飯舘村に向かった。飯舘に入るとすぐに私の部落なのですが、集会所前でクルマを降りて線量計を見たところ、毎時100マイクロシーベルトをオーバーした。
彼らは目の前にある民家に入って、「とんでもない放射能の数値になっている。すぐ避難しなきゃダメだ」と言ったそうです。ところが放射能なんて匂いもしなければ目にも見えない。知らない人が突然家入ってきて「逃げろ」と言われて、その家の人はきょとんとしていたそうです。
3月15日には飯舘村のいちばん館前に線量計がセットされました。15日6時20分、毎時44・7マイクロシーベルトを記録しましたが、ちょっとおかしいと思いませんか。ジャーナリストの方が計った際には100をオーバーしていたんです。今テレビや新聞で報道されている飯舘村の線量は、2・4~2・5マイクロシーベルト。でも実際は5~6、高いところだと10マイクロシーベルト、俺の家も6くらいある。だから私は除染してから計測器をセットしたのでないかと言い続けているんです。
3月19日、私は部落の人を集めて知り得る限りの指示をしました。「とにかく表には出るな。どうしても出なければならない時には必ずマスクをしろ。肌は露出するな。帰ってきたら必ず上着は玄関で脱げ。すぐに風呂に入って、きれいに洗え。子どもを絶対に外に出すな」と。
3月23日に国はSPEEDIの結果を初めて公開しました。何百億円もかけて整備したSPEEDIは、5000枚もデータを出しながら公表したのは2枚だけ。それを見ると、原発から北西に向かって飯舘村に放射能が直撃しています。
飯舘村の汚染が分かった後、私のところに新聞記者、ジャーナリスト、テレビ局がいっぱい取材に来ました。それで「全国の人に飯舘村の現状を知ってほしい」、「同心円の避難区域の外に『タンコブ』をつくれ」と言いました。20キロ圏外でも、飯舘村を含めた汚染の高い地域を避難区域にすべきだと言ったのです。
ところが新聞社もテレビ局も報道しない。「私の言いたいことを放送するのであれば協力しますよ」と言ったにも関わらず、見事にカットされていた。でも私の提起した「タンコブ」は、後に見事に計画的避難区域になったわけです。
(続きは本誌1319号でお読みください)
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