「歴史にはこう記されるだろう。この変革の時代において、もっとも悲劇的であったのは、悪人たちの辛らつな言葉や暴力ではなく、善人たちの恐ろしいまでの沈黙と無関心であった、と」(マーチン・ルーサー・キング・ジュニア)

 9月上旬のある日、上関で知り合った友人から連絡がありました。彼は大学に通いながら今の社会に疑問を感じ、理想の暮らし方を模索する途中で祝島にたどり着き、それから原発の問題と直面することになりました。

 自分の中に浮かんできた疑問に向き合う熱心さと純粋さがとても印象的だった彼は、2009年9月から始まった中国電力による工事強行の中で現地に身を置き、工事阻止と監視をするメンバーの一人として活動し続けてきました。

 そんな彼が、この9月11日から経産省大臣と内閣総理大臣宛の請願を目的にしたハンガーストライキを始めるとのこと。彼は今年1月にも山口県庁前で4人の仲間と10日間のハンストをおこない、全国から注目を集めました。

 3月末に田ノ浦で会った際、「ハンストをきっかけに何か新しい流れが生まれればと思っていたけれど、2月末から工事が強行され、3月には原発事故が起こって流れが止まってしまった」と。外的な要因によって世界が変わることを期待するよりも、自分たちの行動によって変化を起こすことを常に考え続けている彼らしさを感じました。

 ハンストという行為に対して賛否両論があることを承知の上で、彼が考え続け、対話を求め続け、行動し続けてきた流れの中での決断として、このハンストを支持します。

 その上で、彼らの本気の行動に触れることで想起される、「自分には何が出来るのだろうか」という問いに本気で向き合い続け、自分の行動をもってその問いに応じていくことを続けたいと思います。

 今はテレビやパソコンの前で届かぬ批評をする時ではなく、それぞれがそれぞれのやり方でやれることをフルでやっていく時だと思います。そんな彼からメッセージをもらったので掲載します。

 「将来を想うハンガーストライキ」

 東日本大震災、原発事故から半年の9月11日。新しい首相、内閣に変わって原発の方針が注目される中だからこそ、このタイミングで国の機関で一番深く原発に関わる経済産業省の前で原発のことを訴えてハンガーストライキを行おうと思いました。

 原子力発電がウラン採掘をする人、地元の住民、労働者、事故のリスク下にいるすべての人々、放射性廃棄物が残される未来の人々といったあまりにも大きな犠牲の上にあるという事実。

 そして、原発事故で漏れ出ている放射能は、綺麗な空気を吸うことや安全な食べ物を食べることなど、当たり前だった僕たちの暮らしを奪い去ってしまったこと。

 僕たちがハンストという手段をとったのは、原発がそれだけ命に関わる問題であることを訴えたい、そして原発に対する若い世代の真剣な想いを世間に示したいという気持ちが強くあったからです。

 電気を使っているだけで、こんなにも失うものがあるなら、そんな電気はいらない。僕たち自身の未来とこれから続いていく命のために、安心して暮らせる社会を創る行動をしていこうという想いをこのハンストに込めます。

 岡本直也
 ※ブログ「将来を想うハンガーストライキ」
   http://hungerstrike.jimdo.com/

連載<脱原発を目指す旅> 冨田貴史(RadioActive)

【とみた・たかふみ】1976年千葉県出身。京都在住。ドキュメンタリー映画『六ヶ所村ラプソディー』を携えて少人数で語り合う上映会を全国120か所で開催。エネルギー、お金、暦の未来について語らうワークショップのファシリテーター。今年5月に完成予定の映画「ミツバチの羽音と地球の回転」の広報・宣伝に携わる。原子力、核による放射能汚染、被ばく、それらが持ち込まれることによって起こるあらゆるトラブルの解決を願うブログ「RadioActive」http://radio-active.cocolog-nifty.com/blog/で情報発信中。著書『わたしにつながるいのちのために』

(2011年10月号掲載)

 

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