消極的な政府の姿勢を今こそ市民が変える時

文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会は、8月5日、福島第一原発事故に伴う賠償範囲を示す中間指針を取りまとめた。賠償対象には、政府指示に伴う住民の避難費用や、汚染された牛肉や農産物、さらに「風評被害」も含められることになった。しかし自主判断で避難した住民への賠償は全く盛り込まれなかった。自主避難者への賠償を求めて政府交渉を続けてきたNGO団体の一つFoE-Japan の満田夏花さんに話を聞いた。  (聞き手=編集部・温井立央)

<20mSvはあまりにも高すぎる被曝基準>

◆政府の避難区域設定は妥当でしょうか?

 今、政府が定めている避難区域はいくつかのカテゴリーに分かれています。まず福島第一原発から20㎞圏内は法的に立ち入りを制限できる「警戒区域」。さらに年間積算線量20mSvを基準に、それを超える恐れがある地域を「計画的避難区域」と設定しました。また20~30㎞圏内で計画的避難区域でない地域を「緊急時避難準備区域」、そのほかに年間積算線量20mSvを超えることが推定される地点が、「特定避難勧奨地点」として設定されています。

 まず私たちが問題にしたのは、年間積算線量20mSvの避難基準は高すぎるということです。これは福島県の学校の校庭利用基準にもなり、大きな批判が高まりましたが、大人にとっても高い基準です。

 そもそも福島原発の事故前、日本の法令では公衆の被曝限度量は年間1mSvでした。それがいきなり20倍になった。これは放射線管理区域の基準よりもはるかに高い数値です。 放射線管理区域は、放射線を扱うような病院や大学の研究所などにあります。立ち入りが制限され、立ち入る人はきちんと訓練を受けた人でなければならない。もちろん18歳未満の人は入ってはいけない。

 その基準が年換算で5・2mSvですから、20mSvは4倍近い放射線量になります。そんな場所で、どうして子どもも大人も普通に24時間暮らしても良いのですか?

 国際的に見ても、年間20mSvは高すぎます。たとえばドイツの原発労働者に適用される最大線量は年間20mSvです。フランスは、年間10mSvを基準に住民に避難を促進させるべきだと日本政府に勧告を出しています。チェルノブイリ事故では、汚染地域の避難基準は何度か変わりましたが、最終的に年間積算線量5mSv以上を避難の義務区域としています。

 もう一つの問題は、避難区域の設定の仕方です。今は政府が定めた避難区域の人は強制的に避難しなくてはならず、それ以外の地域の人は避難したくても補償金が受け取れないことになっています。

 チェルノブイリでは、年間被ばく線量が1~5mSvの地域を避難の権利区域としています。権利区域とは、その地域にとどまってもいいが、避難した場合は補償やサポートが受けられる区域のことです。

 このチェルノブイリの経験をふまえるならば、今の計画的避難区域のほかに、自主的避難に対して補償やサポートがされる区域を設けるべきです。私たちはこれを「選択的避難区域」と名付け、避難の権利が認められる区域として設定すべきだと主張しています。

(続きは本誌1318号でご覧ください)

FoE-Japan http://www.foejapan.org/
※8月12日、 FoE Japan を含めたNGO3団体は、東京電力に、自主避難者・避難予定者の請求書と、要望書を提出。自主避難者に対しても正当な賠償を支払うべきと訴えた。

 

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