危険で無用なダム建設を中止し、地域住民の生活再建を

 民主党は八ッ場ダムの建設中止を公約に掲げた。
 しかしダム本体工事こそ着工していないものの、国道付け替えなどの付帯工事は続いている。
 一方で温泉街の疲弊は著しく、地域の人口流出、過疎化は止まっていない。生活再建は置き去りにされたままだ。

 こうした中、11月21日、八ッ場ダムの今後の問題と課題について、東京都文京区の東大でシンポジウムが開催された。
 主催は八ッ場あしたの会、共催は八ッ場ダムを考える1都5県議会議員の会。

 水問題研究家の嶋津暉之さんは、政権交代後の経緯を語り、民主党の「(ダム建設)中止の方向は変わっていない」と強調。
 しかし八ッ場ダム検証作業のメンバーのほとんどが「建設推進側」であることを指摘し、「ダム事業者である関東地方整備局が検証作業をおこなって、客観的・科学的な検証が行えるのか疑問」とした。
 さらに大きな問題として、「ダム湖による災害誘発の危険性が評価基準に入っていない」ことを訴えた。

 八ッ場ダム水没予定地の住民が移住する代替地は、ダム湖周辺に建設されている。
 しかしその多くは土質の悪い地滑り地帯。
 にも関わらず打越代替地は30メートルを超える盛り土を施している。
 ダムに貯水すれば地滑りで崩壊する危険性がある。

 2010年11月、国土交通省は安定計算にミスがあったとして地盤補強を行うと発表したばかり。
 しかし修正後の計算でも、盛り土の下に地下水が流れないとの非現実的な想定。嶋津さんは「今回の補強工事では大地震時に崩壊する危険性が残る。
 このような欠陥代替地を住民に売ることは許されない。
 官製の耐震偽装ではないか」と批判した。

 シンポジウム後半は、ダム予定地の生活再建がテーマ。
 八ッ場ダムと同じく民主党がマニフェストに掲げた熊本の川辺川ダム中止について、「子守唄の里・五木を育む川辺川を守る県民の会」の寺嶋悠さんが現地の様子を報告した。

 川辺川ダムは、熊本県と流域の八代市、人吉市、相良村などが建設中止を求めており、問題解決は容易であるように考えられた。
 しかし中止作業は一向に進展していない。
 原因は水没予定地・五木村の生活再建のメドが立っていないからだ。

 「川辺川ダム計画は止まったといわれていますが、現状としては法律的には止まっていない。五木村もダム建設中止に同意していない」

 五木村の大半の住民は代替地へ移転しており、役場なども移転済だ。
 2008年9月にダム建設中止を表明した熊本県は、基金をつくり村の産業振興をおこなっている。
 地元食材を利用したレストランの建設や、地元農家と共に古民家を再生するなど、自然を生かした再生型・住民参加型の取り組みだ。

 しかしダム関連に伴う国道の付け替えや、ダム計画で約束された代替農地事業は休止中のままとなっている。
 また広大な水没予定地は、河川予定地に指定され国有地となっており、村が自由に使えない状況だ。

 「予定地を利活用することはダム中止を受け入れることになる。するとダム関連の予算が外れ、国の予算支出の根拠がなくなり、村や県が事業負担することになる」。
 国の法整備の遅れによって事業資金のメドが立たず、住民がダム中止を語ることができない状況に追い込まれているわけだ。

 国の対策の遅れは八ッ場ダムも同じ。
 地元、長野原町議員の牧山明さんは「(ダム建設が)止まった場合でも、止まらなくても生活再建については国と下流都県で責任をもってやっていただきたい」と訴えた。

 八ッ場あしたの会の渡辺洋子さんは、「水源地域対策特別措置法が、ダム建設の際に地域振興の財源的裏付けとなった。中止になるとそれがなくなる。地元の人は中止=棄民政策につながることを非常に恐れている」「国や群馬県が、地元の人たちが生活再建を考えられるような態勢を整えなければいけない。ダム関連事業=生活再建ではない」と、地元住民の生活を支援する具体的な取り組みが必要だと訴えた。

 (編集部)

 

One Response to シンポジウム「八ッ場ダムはどうなるのか」―明日のために必要なことー

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