8月15日にこの映画を観た。
 主演の寺島しのぶが第60回ベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀女優賞)を受賞した事もあり、この日は立ち見客も断わられていたくらい、映画館は混雑していた。

 映画は、中国戦線で民間人らしき女性を炎が拡がる小屋の中で集団レイプする日本兵の姿からはじまる。
 その日本兵である久蔵(大西信満)が傷痍軍人となり妻・シゲ子(寺島しのぶ)の元へ帰還する。
 四肢を失い、口も訊けないキャタピラー(芋虫)となった夫。

 しかし村人は「軍神さま」と崇めたてる。
 部屋の中に寝かされた久蔵の視線の先には、天皇の御真影と軍功を賞した勲章が。
 唯一の自慢なのだろうか、戦争を知らない私にとっては滑稽にしか感じなかった。

 出征以前は、家庭で威張り散らしていた久蔵。
 しかし今は食べて寝てセックスを繰り返すだけ。
 そんな夫に対し妻の立場が次第に逆転する。

 やがて、久蔵は中国戦線でレイプをした女性の顔をトラウマとして思い出すようになる。
 この狂気じみたシーンに圧倒され息ができなかった。

 そして広島・長崎に原爆が投下され、8月15日に敗戦を迎える。

 映画には「神の国」日本を信じて竹やりを持ち、バケツリレーの訓練をし、出征兵士を日の丸で送り出す農村風景が、戯画化されて描き出される。
 その意図は分かるのだが、何か違和感も感じた。あまりにも図式化されていたからだろうか。

 しかしながらここまで「反戦」を直球で投げかける映画も珍しいのではないか?
 若松監督の意欲、情熱が寺島しのぶの演技で倍加されたかのような感じだ。
 夫婦、男と女の生き方も考えさせてくれる作品だと思う。

 監督の主張を受け入れる、受け入れないは人それぞれだが、戦争を知らない人たちに観てほしい作品である。

 (白洲りお)

監督=若松孝二
2010年/日本/84分
詳細 http://www.wakamatsukoji.org/

2010年11月号掲載)

 

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