映評『アイコンタクト』 デフリンピック世界女子サッカー大会に初出場した「もうひとつのなでしこジャパン」
2009年9月デフリンピック世界女子サッカー大会に初出場した、もうひとつのなでしこジャパンのメンバー18人を描いたドキュメンタリー作品。
デフリンピックとは4年に1度、世界規模で行われる聴覚障害者のための国際総合競技大会。
出場資格は聴力損失が55デジベル(一般的な住宅街の昼間の騒音)を超えていると認定された者。
競技中はいかなる補聴器も人工内耳の外部装置使用も認められない。
だから試合中のコミュニケーションはアイコンタクトと手話のみ。
ボールを追ってばかりでは他のメンバーとアイコンタクトは取れない。
映画の中で「あっ、そこそこ!」「シュート!シュート!」などと思わず声をあげそうになる位歯痒いシーンもあった。
しかし、試合中の彼女達には周りの声援や、コーチの怒鳴り声、ボールの音、ブブゼラの音さえも聞こえない。
簡単そうに見えるが、健聴者と同じように試合をするのは何倍もの努力が必要なのだ。
デンマーク戦の時、突然全くの無音になった。中村監督の演出である。
無音の中で試合だけが、ただひたすら映し出される。
これが、彼女達のいる世界なんだ。彼女達と私が一体になった様な気がした。
驚いたのは、こうした国際試合でも実績の無い女子チームは全額自己負担での渡航であること。
ハンデのある人達の大会に対する助成金はあまりにも少ない。
映画の冒頭では、彼女達の家族の苦難や学校や職場の事なども語られ、健聴者が知らない事実も語られる。
でも彼女達は明るく前向きでサッカー大好き。
美人でオシャレで、手話だけどよくしゃべる。
今すぐに彼女達の輪に入って一緒におしゃべりしたい気分になる。
そしてサッカーを知らない人でも充分楽しむ事が出来る、そんな素晴らしい作品だ。
(琴子クリストフル)
監督=中村和彦
2010年/日本/88分
2010年9月18日からポレポレ東中野で公開
詳細 http://www.pan-dora.co.jp/eyecontact/
(2010年10月号掲載)

