私は祝島の公民館で『祝の島』を観ました。
 私が感じている祝島の魅力が、本当にそのまま映画になっていることに感動しました。
 そして、上映中、お母さんたちの楽しげな笑い声に包まれながら、こんなにも素晴らしい島に関われていることを、幸せに感じました。

 この約10ヶ月間、上関原発建設計画への抗議活動をしながら、祝島の人たちと多くの時間を過ごしてきました。
 今では、お家に呼んでいただくこともあるくらい、関係が深くなっています。

 その中で、祝島の人たちの優しさ、強さ、生きる力の逞しさ、受け継がれてきた文化の素晴らしさ、積み重ねられてきた生活の歴史を感じています。
 同時に原発問題が、祝島の人の心、生活の中に常に存在していること、それがもたらす祝島の人の辛さや悲しさを感じます。

 映画の中で、「原発は悔しいね」と語った漁師さんの言葉が心に残っています。
 島の人たちは長い間、平和に仲良くやってきたのに、原発計画が持ち上がったことで、建つ前から島の生活や人間関係を壊されてしまっているのです。
 私はそれが、とても悔しいです。

 祝島の人は、一人一人がとても魅力的です。
 それは、一人一人が故郷や自分の暮らしを愛し、誇りと信念を持って生きているからだと思います。
 島選出の議員さんの「私たちは命を懸けてやっているんです。あなたたちも(推進するなら)命を懸けてやってください」という議会での言葉は、まさしく祝島の人たちの心を反映していると思いました。

 祝島の人たちは足るを知り、自然と人と密接に繋がって生きています。
 厳しい自然の中、決して楽ではないけれど、人間として幸せな生き方がここにはあるのです。

 また、祝島の人たちは、自分たちで生活を作って生きていく力を持っており、自然の大切さを知っています。
 だから、原発計画が持ち上がり、補償金を目の前に積まれても、揺らぐことなく大切なものを守る強さがあるのだと思います。

 この映画は、原発問題を前面に押し出してはいませんが、祝島の人々の暮らしぶりを映すことで、かえって原発の不自然さ、不必要さが強調されているように感じます。

 私自身、祝島の営みが好きです。
 例えば、映画冒頭に出てくる漁師さんの一本釣り。
 焦ることなく、いっぺんに大量に採ろうとするわけでもなく、魚のペースに合わせて、しかも一匹一匹に話しかけながら釣っています。
 命に対して愛情をもって接しているのが伝わってきました。

 その姿勢が、祝島の人たちの根底にあります。
 一本釣りは、魚の苦しむ時間が短いので、味が全然違うそうです。
 時間はかかるけれど、大切なものを守ろうとする祝島の営みを象徴しています。

 祝島の漁業は、採るのも加工するのもほとんどが手作業で、直に命に触れていると感じられます。
 ひじき採りなどを経験させてもらいましたが、自然の力、豊かさを感じると共に、自然の恵みをいただくことに感謝の気持ちが湧いてきました。

 第一次産業は、そんなことに気づかせてくれる産業であり、祝島の人たちは昔からそうやって自然と共に生きてきたのだなと思いました。
 だから「命の海」そのものであり、その海が埋め立てられるとなれば、当然反対すると思います。

 晴れた凪の日に、カヤックに乗って原発予定地・田ノ浦の海に漕ぎ出すと、その海水の透明度、美しさに驚きます。
 海草の上では、まるで海の森の上を歩いているかのような気分になります。
 魚がカヤックの下を泳いでいくのが見えます。

 浜から海を見れば、空の青を映して4色の青のグラデーションが広がっています。
 そしてその先には祝島が見えます。
 この海を埋め立ててほしくない。そんな思いで私は今日も抗議活動を続けています。

 この宝物みたいな映画を多くの人に観てもらい、それぞれに大切なことを感じてほしいと思いました。

 

『祝の島』
監督=纐纈あや
2010年/日本/105分
公式サイト http://www.hourinoshima.com/
東京 ポレポレ東中野、広島 横川シネマにて上映中
全国順次公開

【STORY】
1000年前、沖で難破した船を助けたことから 農耕がもたらされ、 子孫が栄え、 現在に至るまでいのちをつないできた小さな島がある。山口県上関町祝島。瀬戸内海に浮かぶ人口約500人のこの島は、人が暮らしやすい環境とは決して言えない。しかし島民は海からもたらされる恵みに支えられ、暮らしを営んできた。1982年、島の対岸4キロメートルに原子力発電所の建設計画が浮上。祝島の人々は「海と山さえあれば生きていける。わしらの代では海は売れん」と、自分たちの生活を守るべく、28年間反対を続けている。

 (2010年9月号掲載)

 

One Response to 映評『祝の島(ほうりのしま)』「宝の島を映した宝物のような映画」虹のカヤック隊 ありす

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