文=小山宮佳江(こやま みかえ)
2009年4月に家族で藤野町に移住して、トランジション藤野で活動中。藤野で4世帯が住む共同住宅を作る、「里山長屋暮らし?藤野プロジェクト」のメンバー。こちらは、トランジションタウンの「住」版。里山長屋暮らしブログ 
http://blog.canpan.info/nagaya/

<藤野っておもしろい>

 新宿から中央線の電車にゆられて1時間。高尾山を過ぎるとどんどん山が深くなります。神奈川県相模原市藤野町は、森と湖と芸術がある里山です。

 人口約1万人。地元の人と移住して来た人の割合はちょうど半分ずつくらい。
 都心に通勤する方も多くいらっしゃいます。
 戦後から、芸術家が移り住み、自由で開放的な風が流れています。

<日本初のトランジション・タウン、藤野>

 2年ほど前、当時イギリスに住んでいた榎本英剛さんはそこでトランジション・タウン運動に出会い感銘を受け、パーマカルチャーを一緒に学んだ仲間に呼びかけて帰国後の2008年6月、トランジション・ジャパンを立ち上げました。

 トランジション・タウンの発祥の地、イギリスのトットネスと藤野には共通点がいくつかあります。

・パーマカルチャーを教える学校がある
・シュタイナー学校がある
・アーティストがたくさん住んでいる
・都心からの移住者が多い

 こうした理由から榎本さんは、藤野を自身のトランジション活動の拠点に定め、2008年8月に移住し、もともと知り合いだった藤野在住2年目の小林一紀さん、恵里奈さん夫妻に呼びかけて三人でトランジション藤野を発足しました。

 そして、どのように活動してゆくかを丁寧に話し合い、小規模のプレゼンテーションを重ねていきました。

<実は相思相愛だった>

 2009年2月に、初めて参加者を広く募った説明会を開いたところ、40人あまりの方が参加してくださいました。

 「石油に依存したままでは私たちの暮らしは立ち行かなくなる。地球と共存する生き方に移行しよう」というトランジション・タウンの考えに、多くの方が共感してくださいました。
 また、数名の方が、活動に積極的に参加したいと手をあげてくださいました。

 「スピードと便利さを追求した世の中にすごく不安と不満を感じていた」、「明るい光やビジョンのようなものに向かって手を取り合って生きている姿を、子どもたちに見せたい」と考えて活動の場を探していた仲間が、実は近くにいたのでした。

 さっそく、手をあげてくださった方々とミーティングを何度か行い、ワークキング・グループを作りました。
 今ではコアメンバーは10数名。メーリングリストに登録してくださっている方は53名になりました。

<みんなでできるからたのしい>

 5月頃から活動が活性化し、ソーラークッカー作り、草木染め&ふんどし作り、梅干し作り、地元のイベントへの出展など、次々と様々なイベントを行ってきました。

 メンバーからは、「前から梅干しづくりをしたいと思っていたけど、ハードルが高かった。みんなといっしょだからできた。よかった!」「いっしょに作ったり、考えるたりすることが楽しい。情報を交換できることがありがたい」とうれしい声が上がっています。

 メンバー同士のお茶会で、「メールやパソコンを利用しないと、情報が伝わらないのはおかしいね。手書きのかわら版なら、わかりやすく様子を伝えることができ、しかもつながっていると感じてもらいやすいんじゃないかな」という声が出て、6月からかわら版も作っています。

<合い言葉は「たのしく、つながる」>

 ミーティングや幼稚園・保育園への子どもの送り迎え、庭先バーベキューなどで、メンバー同士よく顔を合わせます。

 それぞれの価値観や夢についていつも話し合っています。

 トランジション・タウンの活動を始めて、どう感じているのか。改めて何人かのメンバーに尋ねてみました。

 「藤野に移住してくるまでは、持続可能な生活に転換するには、ハードから変えなければと思っていた。田舎に行かなきゃ、畑を始めなきゃ…って。でもトランジション・タウンを知って、ソフトを変えることから始められる、まずは自分が変わればいいということに気がついた」

 「同じことを考えている人同士でつながることができてうれしい」

 「語り明かした訳ではないのに、価値観の共有ができて信頼し合えていることがうれしい」

 「孤独感がなくなった」

 「何かを所有するという概念がなくなった。みんなで分け合えばいいと思うようになった」…。

 一人ひとりが手応えを感じています。

 一方で、「ハレ(イベント)は、ケ(日常)があるからできるんじゃないか。もっと日常を大切にしよう」と話し合ったこともあります。
 何かをしなくてはいけない、常に全力でかかわらなくてはいけない、と力んでしまうと活動が長続きしないことに気づきました。

 子どもも大人も無理せず、得意なことを活かし、一人ひとりの個性やペースを認め合うことを大切にしつつ、流れに導かれて活動をつないでいきたいと思っています。

<地域通貨に期待>

 これからの目標は、「地元の方とさらにつながっていく」こと。

 8月には「タネバンク」を立ち上げ、野菜のタネを自由に入れて交換し合える箱を、コーヒーとパンを販売し地域の人々が集う福祉施設内に設置させていただきました。

 子どもたちが色紙でタネ袋を作り、野菜のイラストを描いてくれました。

 さらに、藤野町で使える「地域通貨」の可能性を模索する勉強会を開催することにしました。

 9月には、千葉県鴨川で「安房マネー」という地域通貨を実践している林良樹さんの話を聞き、トランジションタウン高尾の加藤久人さんから教わりながら「地域通貨シミュレーションゲーム」を楽しむイベントを開きました。

 地元の方と密接につながる藤野ならではの活動を、楽しみながら一つずつ実践していきたいと思っています。

 町を歩いていると、地元の方から、「今度は何をするの? 楽しみにしてるわよ」とお声をかけていただくことも増えてきました。

 楽しいことは、連鎖していくと思っています。

 一人ひとりが描く夢やビジョンがつながり合えば、すばらしい地球に生かされた持続可能な暮らしをすることがきっとできる。そう感じています。
 ご興味のある方はぜひご連絡ください。

トランジション藤野ブログ
http://blog.canpan.info/team-80/
メール ttfujino@gmail.com

トランジション・タウンとは、ピークオイルと気候変動という危機を受け、市民の創意と工夫、および地域の資源を最大限に活用しながら脱石油型社会へ移行していくため3年ほど前にイギリスではじまった草の根運動です。

(弊誌2009年11月号掲載 この記事はPDFファイルでご覧になれます 1296fujino )

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