希少生物の宝庫・田ノ浦を埋め立てていいの? 長島の自然を守る会 高島美登里さんインタビュー
瀬戸内の原風景を守りたい
瀬戸内海の入口、山口県熊毛郡上関町長島。ここに中国電力は原子力発電所の建設を計画し、現地では反対運動が続いている。中国電力の環境アセスメントのずさんさを批判し、貴重な生物の調査を続ける「長島の自然を守る会」高島美登里さんに聞いた。(写真提供:長島の自然を守る会)

プロフィール▶たかしま・みどり
山口県熊毛郡上関町在住。「長島の自然を守る会」代表。上関町長島の生物多様性を守る活動を続ける。長島の自然を守る会ブログ「スナメリ通信」http://green.ap.teacup.com/sunameri/
生物のホットスポット
◆専門家も驚く貴重な生物がいますね
瀬戸内海の自然海岸は現在21・4%しか残っていません。そんな中、上関町長島には75%もの自然海岸が残っており、多くの生物が生息しています。特に原発建設予定地の田ノ浦は、多様な生き物が棲む場所、ホットスポットだと研究者は指摘しています。
調査を始めたきっかけは中国電力が1999年に提出した「環境影響評価準備書」でした。その報告書は余りにもいい加減なもので、私たちは独自に日本生態学会や日本ベントス学会などの研究者に調査を依頼しました。すると調査をはじめた研究者が口々に「ここは世界遺産にすべきだ」と。
私たちも改めて長島の自然の素晴らしさを実感しました。特に田ノ浦は瀬戸内の原風景が残る貴重な場所だと気づき「過去からの預かり物を未来に渡す責任がある」と、1999年「長島の自然を守る会」を立ち上げました。
昨年は世界でも約5000羽しかいない非常に珍しい鳥カンムリウミスズメを田ノ浦や周辺の海域で確認しました。ペンギンに似た小型の海鳥で、国際自然保護連合(IUCN)が絶滅危惧種に指定し、国の天然記念物にもなっています。親鳥と雛、そして羽根が生え替わる頃の姿を確認しました。繁殖期だけでなく1年を通じてこの近海で暮らしていると考えられます。
今年は大型の水鳥オオミズナギドリの巣穴を、田ノ浦から4・5キロ離れた宇和島で発見し、雛を育てていることを確認しました。普通太平洋などの外洋にしか生息しない鳥で、瀬戸内海のような内海で繁殖が確認されたのは初めてのことです。他にも国の天然記念物のカラスバトや、絶滅危惧種のハヤブサなどがいます。
小型のクジラであるスナメリもよく見られ、長島周辺は瀬戸内海最大級の繁殖地だと専門家が指摘しています。先日はイルカがジャンプしている姿も目撃されました。
田ノ浦は貝の種類も非常に多く、183種の貝が確認され、新種の巻き貝「ヤシマイシン近似種」も発見されています。ヤシマイシンの属するカクメイ科の貝は貝類の「始祖鳥」とも言われ、貴重なものです。他にも世界で一個体しかないナガシマツボや、イソコハクガイなど絶滅危惧種8種も確認されました。
そして海底には百種を超える海藻が生い茂っています。特に杉の葉に似た海藻のスギモクは、本来は日本海側にしか生息しないもので、瀬戸内海に大きな群落があるのは極めて珍しいことです。
スギモクは3月の2週間だけ生殖部分がふくらんで金色に輝き「風の谷のナウシカ」に出てきたようなお花畑を作ります。また海底の粗い砂の中には「人類の祖先」とも言われる原索動物ナメクジウオも多数生息しています。本当に多様な生物が棲んでいる場所なのです。
(続きは本誌2010年2月号でご覧ください)

