『Actio』特集「日本を変える選挙の夏!」を読んで若者こそ選挙へ! 映画『遭難フリーター』監督 岩淵弘樹さん 人生に迷ってもいいから自分らしく生きたい
パート・アルバイト・派遣などの非正規労働者が占める割合は年々増加。特に若者の非正規比率は急激に高まっている。自らの派遣労働の日常を撮影した『遭難フリーター』監督の岩淵弘樹さんに現場の実態を聞いた。
<非正規労働の現実をリアルに描く>
◆映画を撮ったきっかけは
高校生の頃から、何か表現したいと思い、山形の東北芸術工科大学へ進学しました。在学中に山形映画祭関連のワークショップで土屋豊さん、雨宮処凛さんと知り合い、雨宮さんに誘われてイラクへ「人間の盾」として行ったりもしました。
その後、東京に行きたい気持ちと600万の借金を返さなければいけないこともあって、2006年3月から埼玉のキャノンの工場で派遣社員として働き始めます。
そこでの生活を携帯電話でブログに書いていたのですが、それを土屋さんと雨宮さんが読んで、非正規労働者の立場から見たものを撮ったらいいんじゃないかと。とにかく目の前のものを記録しようとポケットに小さいビデオカメラを入れて、ふと思ったら取り出して撮ることを繰り返しました。
2007年の3月まで工場で働きながら撮影し、4月、5月と実家の仙台に帰って編集。土屋さんと雨宮さんの3人でタイトルを考え、最終的に「岩淵くんの場合、自分で迷い込んでいるから遭難だ」ということで『遭難フリーター』になりました。
◆工場の現場はどうでしたか?
指示をしなければ何もできない人や、作業を全然覚えられない人、本当に「どうにかしろよ」というような人がたくさんいました。自分より年上のそういう人たちに対してすごくイラッとしたり、少し怒鳴ったりもしました。
工場の周りにはパチンコ屋とサラ金と風俗の3つがあって、皆、パチンコで勝ったら風俗に行き、負けたらサラ金にいくわけです。負のスパイラルですよ。
けれども当たり前のことですが、話をするとみんな色んな人生を経ている。様々な境遇の人が派遣社員をやっている。派遣だからダメなんだと人生を否定した言い方はしたくないですね。派遣という働き方が悪いとは思いません。
派遣切りがあった時に「いつ解雇されてもおかしくない働き方が派遣。それを分かって働いていたはず。だから文句言うなよ」と言う人がいました。しかし実際にそこまで考えて働くでしょうか。全て自己責任だとバサッと切られるのはやだなあと思うんですよ。
自己責任もあるだろうけど、社会的に解決すべきこともある。だから自己責任と社会責任の両方だと思います。
◆派遣会社に抗議したこともありますね
僕らは群馬の高崎のトレーニングセンターで2泊3日の研修を受けてから、埼玉の本庄工場に仕事に行きました。その際1日8時間研修を受けて、3日間で8000円もらっただけです。群馬県の最低賃金よりも下回っている。それで東堂さん(仮名)というおじさんが派遣会社に文句を言いにいった。
行く前に職場のロッカールームで「おかしくねえか」とみんなを誘うんですが、誰もとりあわない。僕は興味があったので2人で派遣会社の社員と話をしに行きました。最終的に東堂さんが「俺達は機械じゃないんだ。人間なんだ」「なめるのもいいかげんにしろ」とガツンと言ってくれたんですね。
しかし多少の改善はありましたが結局、会社は最低賃金問題には触れず、僕ら2人だけに1日分の給料を出して問題を内々で握りつぶしました。
声を上げる人、上げない人、現場では本当にバラツキがあるんだと感じます。強要するつもりはないですが、みんなもう少しちゃんと考えたら働きやすくなると思います。
★続きは『Actio』1294号(2009年8月1日発行)で!
いわぶち・ひろき
1983年宮城県生まれ。東北芸術工科大学映像コース卒業後、製造派遣大手・日研総業からキヤノンのプリンター工場に派遣され働く。その生活を記録したドキュメンタリー映画『遭難フリーター』が、山形国際ドキュメンタリー映画祭2007ニュードックスジャパンに招待される。著書に『遭難フリーター』(太田出版)。『遭難フリーター』自主上映のお問い合わせ先:合同会社東風Tel.03-5389-6605
