『Washington Post』1月17日号掲載の、同誌スタッフライター、キャロル・D・レオニッグの記事を紹介する。リーマンショックで致命的な被害を被り、税金により救済された企業が、タックスヘイブンで脱税していると暴いている。(訳・見出し 水澤努)

 

  <毎年1000億ドルを合法的に脱税>

 ほとんどのアメリカ企業は利益への課税を回避するため海外で企業活動を展開している。政府の発表によると、その中には国民の税金を投入することで救済された企業も存在する。

 GAO(政府説明責任局・元会計検査院)によると、AIG、バンクオブアメリカ、シティーグループ、モルガンスタンレーなども国家から救済をうけた。しかし税金をもらう一方で、租税回避できる場所にいくつもの子会社を持っている。

 上位100社のうち83社はケーマン諸島、バミューダ諸島、ヴァージン諸島などのタックス・ヘイブンへ逃げ込み、所得を非課税口座に移している。

 これらはみな現状では合法だ。だが今日のアメリカ経済の苦境と、脱税の抜け道を封鎖するとのオバマ新大統領の選挙公約を合わせて考えれば、こうした合法的脱税に終止符が打たれる可能性がある。財務省の見積もりでは、企業がタックスヘイブンに所得を逃避させることによって毎年1000億ドルの脱税がおこなわれている。これに対し議会でも、税の全額徴収を強制する立法の声が上がっている。

 企業が課税回避のため故意にタックスヘイブンへ逃避しているのかどうかについて、GAOは調査していない。しかし一般に海外の子会社は、税金対策や企業活動を公衆の目から隠すため歴史的に利用されてきたと指摘される。

 逃げ込んでいる企業の中にはペプシ、エクソン、DELL、ダウケミカルなど家庭でおなじみの企業もある。GAOの調査によると、タックスヘイブンで課税回避をおこなう100企業のうち63企業は国と契約関係にある。例えばキャタピラー、ベアリングポイント、ボーイング、メルク、クラフトなどだ。国会議員はリストにある14社については特に目を光らせている。これらの企業は最近の金融危機にともない、財務省から財政支援を受けているからだ。上院議員のドーガンとレビンはGAOの調査報告書を使って脱税者を追いつめようとしている。

 ドーガンは訴える。「アメリカ人は自分たちの納めた税金でこれらの企業を救済した。にもかかわらず企業は自分の儲けから税金を払おうとせず海外に隠した。国民が怒るのも当然だ。私たちの行動は愛国心の表現なのだ」。

 ある企業はあくまで合法的な措置だと主張し、課税回避の指摘を否定している。2社はインタビューに応じ、海外での展開が最終的に課税を減らすものとなるか否かは実際には分からないと語った。

 「われわれは世界中で事業を展開している。これをもってわれわれがタックスヘイブンを利用していると責められるのは馬鹿げている」。AIGのスポークスマン、アシューは主張する。

<オバマは国家の正義と品格を正せるか>

 オバマは選挙公約でアメリカ企業が所得を海外のタックスヘイブンに逃避させることを禁じると誓った。2007年には上院議員としてレビン議員と共にタックスヘイブンの濫用を制限し、海外での企業活動内容の透明性を義務づける法案を提出している。

 タックスヘイブン諸国はいくつかの企業のいかがわしい会計を隠匿しているという指摘も存在する。だが国税庁の調査官はこれを追及しきれていない。

 2007年に法案を提出したときオバマは語った。「これは国家の正義と品格を問う問題だ。法の網をかいくぐる個人や企業を取り締まり、法を守り真面目に働く人々が損をしないようにする必要がある」。

 これまでも度々提出されながらも議会では不人気だったこうした法案は、タックスヘイブンの問題点が明らかになるにつれ支持を集めつつあると、税の専門家は指摘する。

 議会で企業の脱税を証言したタックスヘイブン問題の専門家ジャック・ブラムは語る。

 「何よりもわれわれにとって必要なのは税収だ。収益をタックスヘイブンに持ち逃げする犯罪的行為は国家財政を再建しようとする努力に敵対するものだ。この明白かつ愚かな法の抜け道を塞ぐことは重要である」

 レビンは、「すべての企業がタックスヘイブンを使っているわけではないし、使用の度合いにも大きな差がある」と指摘している。彼のレポートによると、シティーグループは427の子会社をタックスヘイブン諸国に持っている。うち91社がルクセンブルグ、90社がケイマン諸島、35社がヴァージン諸島にあり、スイス、香港、パナマ、モーリシャスにも存在する。GAOによるとモルガンスタンレーはタックスヘイブン諸国に273の子会社を持っており、うち158社はケイマンにある。

 レビンは、「ペプシはタックスヘイブン諸国に70の子会社を持つのに比し、コカコーラは8社しか持たない。またモルガンスタンレーの273社に比べ、ファニーメイはゼロ、キャタピラーは49社だがディアーは3社に過ぎない」と続けた。

 モルガンスタンレーはこれに関するコメントを拒否したが、シティーグループは次のような声明を発表した。「シティーには世界中に4000以上の子会社が存在し、数億の人々と100カ国以上の国々にサービスを提供している」。

(1286号 2009年2月25日発行)

 

 

Comments are closed.