一口に派遣社員といっても色々ある

 私は、ある半導体大手企業R社のマイコン設計を請負う会社に派遣されている派遣社員だ。職場はR社の事業所内にある。

 昨年末R社は、年末年始に半導体7工場を平均10日休止し、自動車、情報家電の需要減などに対応して生産を減らすと決定。グループ会社の派遣社員約1000人を今年3月までに削減すると発表した。

 世間で吹き荒れている「派遣切り」をイメージされるかもしれないが、私の場合は少し事情が異なる。今、問題になっているのは「登録型派遣」の場合が多い。これは、派遣労働を希望する労働者があらかじめ派遣元(派遣会社)に登録しておき、派遣先が見つかれば、一定の期間を定めて派遣元と労働契約(雇用契約)を締結するものだ。期間が終われば派遣元との労働契約も終了する。つまり次の派遣先が見つからなければ職を失うことになる。

 私は、派遣元と期間を定めない労働契約で雇用される「常用型派遣」。立場的には派遣会社の正社員なので、派遣先から切られてもすぐに解雇されることはない。会社が直接請負っている仕事もあるので、新たな派遣先が見つからなかった場合はそれを行うことになる。とはいえ会社でプールできる人数は限られている。派遣先が見つからない社員が増え過ぎれば、会社そのものが潰れる。

<正社員にはこだわらない>

 R社の発表後、派遣先の会社は「派遣切りはしない。残業を減らし、景気が回復するまで社員も派遣もワークシェアして共に乗り切る」と私たちに伝えてきた。この御時勢では大変有難い話だ。

 そもそも私の派遣先はマイコンの設計を請負っており、人員削減の対象となった製造部門ではない。この仕事自体は慢性的な人手不足だ。プロジェクトの性格上、製品の量産が立ち上がるまで仕事は続き、万が一切られるとしても製品が製造工程に移ってからだ。

 しかも私の派遣先は、派遣社員の教育に少なからぬ投資をしてきた。各種講習を受講させるなど、自社社員同様の教育を行い、日常業務においても区別なくいろいろと指導をしてきた。今ここで派遣を切れば、景気回復時にまた新しい派遣を入れて一から教育しなおさなければならない。それでは効率が悪いのだ。

 そもそも派遣社員の教育に熱心な理由は、教育にかかる費用を勘案しても派遣のほうが人件費が安いからだ。そのため私の派遣先企業は、不景気を乗り切ろうと派遣の比率を高めようとしているぐらいだ。

 そんな会社の都合を踏まえた上でも、正直いって私は今の状況に満足している。人権侵害がまかり通る中小零細企業の正社員に比べれば、職場環境は恵まれている。小綺麗なオフィスで、経済的には安定しており、技術を向上させる教育も受けられ、さらに技術が向上すれば給料も上がる。

 いわゆる派遣社員といわれる「登録型派遣」の状況は改善する必要があると思う。しかし同じ派遣社員といっても、私のような「常用型派遣」の場合はどうなのか。

 そもそも知識集約型の産業、IT業務は人に属する要素が強い。何かのプロジェクトを成功するには、その都度必要なスキルを持ったエンジニアが必要になる。企業にとっては情報のやり取りをスムーズにし、生産効率を上げるには派遣社員を雇う方がいい。雇われる側にしても色々な企業に派遣され、スキルを磨くことは転職の際に有利になる。そうした意味で派遣の一律禁止論には疑問に思うことが多い。

  戸坂零一(30代 派遣会社社員)

(1286号 2009年2月25日発行)

 

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