昨今は、環境問題がテレビ等で取り上げられることが多い。年末年始は多くのテレビ番組を見たが、自然や歴史遺産を取り上げた内容でも、それらが温暖化によって被害を受けているとの話が実に多い。

 ちょっと前は酸性雨やダイオキシン、環境ホルモンの被害が取り上げられていたと思うが、最近は全て温暖化である。それとセットで家電品や自動車の宣伝が流される。急激な景気の悪化により消費者の購買意欲は下がっており、売上げは落ち込んでいるから必死なのは分かるが、やたらと二酸化炭素削減をアピールする。

 車の燃費だけでなく、家電品も二酸化炭素をどれだけ削減したかを強調。住宅も断熱効果の高い素材を使い、二重窓にしてエアコンの利用効率を上げる。挙句の果てには「環境に良い」電気自動車やオール電化住宅まで登場する。一体どうなっているのか?

<石油より早く枯渇するウラン>

 私はこれらの宣伝に今一つ腑に落ちないものを感じる。

 例えば充電式の電気自動車は、走行中にガソリンを燃焼させないため二酸化炭素を排出しない、だから環境に良いとされる。しかし石油を燃やして発電すれば、エネルギーの7割は熱になり3割しか電気にならない。その電気で充電して車を走らせても、充電によるロスなども考慮すればガソリンで車を走らせる場合よりエネルギー効率が悪くなるのではないか? 太陽電池を用いたソーラーカーならいざしらず、これで環境に良いと言い切れるだろうか?

 とはいえ、この手の話をするとたいてい「電気を原子力で発電すればよい」との意見が返ってくる。原子力発電ならば石油を消費することも無く二酸化炭素も排出しないので環境に良い、とクリーンなエネルギーのように考えている人は予想以上に多い。原発の問題に取り組んでいる人以外で、原子力の危険性について認識している人はどれほどいるだろうか。

 昨年12月に行われた講演「終焉に向かう原子力」は、「原発はクリーンなエネルギーだ」などと考えている人にはぜひ聞いて欲しかった。講師は京都大学原子炉実験所の小出裕章氏と作家の広瀬隆氏。両名とも実際にお目にかかるのは初めてだったが、広瀬氏の著書は何冊か読んだことがあった。

 小出氏のテーマは「なぜ六ヶ所再処理工場の運転を阻止したいのか」。原子力に関する基礎的な話から、再処理施設の危険性についてまで分かりやすい説明だった。私が特に関心を持ったのは、高速増殖炉の実用化の見通しについてだ。

 言うまでもなくウランも鉱物資源である以上、いつかは無くなる。実はその埋蔵量は石油より先に枯渇するといわれている。にも関わらず原発を推進する根拠となっているのが再処理だ。使用済燃料からプルトニウムを抽出し、それを高速増殖炉で燃やせばプルトニウムがさらに増える。これにより長期的なエネルギー供給が可能だとされている。

 そんな楽観的な原発推進派の主張は、高速増殖炉と再処理施設が稼働しなくては実現不可能。ところがナトリウム漏れ事故以来「もんじゅ」は運転を停止したままで、原子力開発長期計画の見直しの度に高速増殖炉の実用化計画年度は先延ばしになってきた。現在では、実用化の目途を示すことさえ出来ない状況だ。

 こんな状況なのだから、原発建設に莫大な予算を投入するぐらいなら、太陽光や風力などの自然エネルギー開発にもっと力を入れるべきだと思うのだが、日本のエネルギー戦略はどうしても原発中心に傾いている。その理由は、広瀬氏の講演「日本の核武装計画とアジア情勢」において詳しく解説された。原子力技術開発は実は核武装のために行われていることを、様々な事件や人脈を挙げながら詳細に説明してくれたのだ。

<ゴアは原発推進派の回し者か?>
 
 広瀬氏は環境問題を故意にねじ曲げ、なんでも二酸化炭素のせいにする風潮には問題があるとも指摘。長期的に見れば地球環境が変動するのは当たり前で、仮に現在地球の平均気温が上昇傾向にあったとしても、自然現象である可能性も大きい。

 広瀬氏の批判は、温暖化問題への警告を世界へ発した映画『不都合な真実』を作成したゴア元アメリカ副大統領へも及ぶ。映画のなかで使われたデータの誤りも指摘されている上、ゴアの所属する民主党に政策提言を行うシンクタンクには、原子力発電を推進するものもある。

 ゴア自身がエネルギー産業や金融機関の人脈の中枢に位置し、二酸化炭素排出権を金融商品として売買しようとするウォール街からの資金援助もある。そもそも彼は自分の大邸宅で大量の電気を消費している。つまり環境問題に関心など無く、すべては政治的パフォーマンスだと。

 もしこれがすべて本当なら、「不都合な真実」とはまさにゴア自身に向けられる言葉だろう。「温暖化」や「二酸化炭素」などの言葉を聞くこと自体が不愉快になる。

 とはいえ環境問題にたいして何もしなくてよいとは私も考えていない。日本の人工林は荒れ果てて放置されている。かつて建築用の杉、ヒノキを大量に植樹しておきながら、途中で外材の輸入を認め、国内林業を崩壊させた農林水産省の無計画のせいだ。

 沿岸部では発電所をはじめ、コンビナートから熱水が放出され周辺の海の生物は生息できなくなりつつある。漁業の自給率も減少し、今や日本の食料自給率は4割。最近のテレビ番組では農業問題について取り上げられることも多くなったが、政府の閣僚の話を聞いても有効な具体策は何も思いつかないようである。

 食料問題は環境問題でもある。自給率が少なければ輸入しなければならないが、輸入先のアメリカでは地下水をくみ上げて大規模な潅漑農業を行い、その地下水は枯渇しつつある。農薬や遺伝子組み替えの危険性も問題だ。

 ゴミ問題はどうか。すでに都市部の埋立地は一杯で、山間部では大量の不法投棄が後を絶たない。山間部のゴミから有害物質が出て、それが水源に流れ込み、川を汚染しそれを我々が飲む。都市部では未だに多くの患者が大気汚染による喘息で苦しんでいる。温暖化を問題にしながら都市への一極集中によるヒートアイランド現象は深刻化し、都市での集中豪雨は増加している。まさにやるべきことはいくらでもあるのだ。

 昨年、米大手証券会社リーマンブラザーズの破綻をきっかけに世界は金融危機へと突入し、景気は悪化の一途をたどっている。倒産、失業が相次ぎ、景気対策が叫ばれているが、相変わらず無駄な公共事業、無駄な道路を作ろうとしているようだ。一体役人は何を考えているのか。

 言いたいことは山ほどあるが、何万年にもわたって環境を汚染する放射能のリスクだけは容認できない。いったん二酸化炭素と温暖化問題は脇に置いてでも、とにかく原子力発電のこれ以上の拡大はストップさせるべきだ。

 和泉菊三(20代 会社員)
 
(1286号 2009年2月25日発行)

 

Comments are closed.