ガラス固化で泥沼にはまりついに炉を破壊する事態に! 六ヶ所・再処理工場の建設計画は完全に破綻している サークル・イマジン 久保田誠
年の瀬も迫る昨年12月11日と24日。六ヶ所で核燃料再処理工場建設を進める日本原燃株式会社(以下「原燃」)は、立て続けにガラス溶融炉(A系統)のトラブルを報告しました。
しかもその内容はこれまでの事象とはちょっと次元が違う深刻なものです。なんと溶融炉のなかに入れた「撹拌棒がL型に折れ曲がる」(11日、写真参照)、とともに「(炉の構造上重要な)耐火レンガが破損」(24日)したのです。
トラブルが起きたガラス固化設備では、2007年11月に高レベル廃液を使っての試験運転が始まりました。再処理の過程で出た猛烈な放射性廃液を、ガラス溶液と混ぜて固化する作業です。しかし溶融炉のなかに白金が溜まる問題が発生し、再処理工場の竣工は遅れに遅れてきました。
この間原燃は様々な対策を講じて試験を繰り返してきましたが、結局白金属問題は全然解決できないばかりか、ついには「炉を壊す」最悪の事態に至ってしまったのです。
<〝禁断〟のマニピュレーター操作!?>
そもそもなぜ撹拌棒が溶融炉のなかに入っていたのでしょうか? それは炉の底部のノズルに溜まった白金を無理やり掻き出そうとしたためです。原燃の報告書では、11月23日に行った作業経過を次のように記しています。
「21時30分~23時28分 かくはん操作(中央穴探し)かくはん棒の先端が底部電極の中央穴より若干下と推定できる位置まで挿入できるものの、おもり治具を上下させてもそれ以上深く挿入することができなかった。23時19分頃におもり治具をパワーマニプレータで押す操作を行った」
「底部電極の中央穴」というのは、流下ノズルの入口です。赤熱したガラス溶液の中で炉底の穴を突つくのは手探りですが、強い放射線で汚染された溶融炉での作業はすべて、マニピュレーターによる遠隔操作になります。しかしこのマニピュレーターは、微妙な力加減ができるものでもなければ、人間の指先のように感触を確かめることもできません。
つまりマニピュレーターで撹拌棒を直接操作して炉内を探ったりすれば、炉を傷つけたり壊したりしてしまうことは目に見えています。さすがに原燃もそのリスクは分かっていますから、最初は棒におもりを付け、その適度な加重で炉底の穴を突ついてみることにしたのです。
ところがなかなかうまく挿入できなかった。担当者は相当焦ったのか、おもりの加重だけではダメだと判断したのでしょう。23時19分にとうとうマニピュレーターで棒を直接押す操作をしてしまったのです。
異変に気がついたのは、その後棒を引き上げようとしたときのようです。「何かに引っかかるような状況」で、棒を引き抜けませんでした。原燃はすぐに「炉内を破損した可能性もある」として、国や青森県に通報しました。
急遽ガラス溶液を引き抜きはじめ、とりあえず炉の上部にカメラを挿入したのは12月10日。そこに写った映像は、L字型に折れ曲がった撹拌棒の無惨な姿でした(写真参照)。続いて12月22日には、炉内天井部の耐火レンガが崩落しているのが見つかりました。恐らく折れ曲がった撹拌棒を引き抜こうとした際にぶつかったのが原因とみられています。
残ったガラス溶液を全て引き抜かないと、超合金製の棒が折れ曲げるほどの力を受けた炉底部がどうなっているのかはわかりません。これには時間がかかります。破損した耐火レンガの破片(図1参照)も回収されていません。破片が穴を塞いでいる可能性もあるため、下から特別製のドリルを挿入して流路を確保してからガラス溶液の引き抜き作業に入る計画で、いずれにしろ試験運転はまたまた長期の中断を余儀なくされました。
図1 耐火レンガ破損図
<クリアーできない白金属問題>
最新の科学技術で建設されているはずの再処理工場で、トイレが詰まるようなこんな原始的とも言えるトラブルが起きていることに驚く人も多いかもしれません。しかし再処理工場の中核は、そのままでは保管・処分が難しい高レベル放射性廃棄物を、ガラスで固めてステンレス製の保存容器に詰めるこのガラス固化設備なのです。
ここでは廃液とガラス原料を炉の上から投入し、1100~1200℃の高温で溶融した後、底部のノズルから保存容器(キャニスター)に流下させ充填します。(図2参照)。これが上手くいかないと、再処理にともなって生み出される大量の高レベル廃棄物は、危険な溶液状のまま施設内の貯蔵タンクに溜められ、すぐに一杯になります。その状態でもし地震でも起きて漏れだしたら、大変なことになってしまいます。
しかし07年11月の試験運転開始直後から、ガラス固化体の製造はほとんど上手くいっていません。廃液内の白金属が分離して、炉の底部に沈殿してしまうからです。ガラス溶融炉の底部には加熱用の電極がありますが、沈殿した白金属がこれを覆ってしまうと温度調整が上手くいきません。そればかりか、炉底部で障害物となり溶融ガラスの流下も不安定になります。
この状況を改善しなければ、いずれは溶融ガラスを抜き出すことすら困難になってしまいます。実際、東海村の再処理工場はこの問題で廃炉になりました。当然にも原燃はいろいろ対策を講じてきました。
詰まったトイレに水を流すように、原料ガラスだけを投入して押し流すと一時的には状況は改善されましたが、「不溶解残渣」(核燃料を溶かす工程で溶けきらなかった金属粉)を投入するとまたすぐ沈殿してしまいました。当初設計にはなかった撹拌棒を導入したのもこのためです。しかし、ついにこの撹拌棒で炉そのものを壊してしまう事態となりました。
「マニピュレーターで押す」など、冷静に考えればあり得ない操作をしてしまったことは大問題です。こんな判断ミスをする日本原燃に、もはや高レベル廃棄物を扱う資格はないといえるでしょう。
一方で今回のトラブルは、追いつめられた状況にありがちな、極めて人間らしい行為の結果でもあります。トイレの詰まりならパイプを外したりしていくらでも修理できますが、放射能はそうはいきません。1秒でも傍にいたら即死するような、そんな高レベルの放射性廃棄物を人間が扱うこと自体に無理があるのです。
原燃だけではなく、人間に、人類には手に負えない再処理事業そのものをやめる決断をするべきです。
【参考資料】 日本原燃株式会社http://www.jnfl.co.jp/(写真、図2 原燃HPより。図1 原燃HP参考に久保田作成)
