命に値札がつけられる
私たちには何ができるか

 とても重い社会派の映画だった。脚本も手がけた監督の阪本順治は次のように語っている。

 「単なる告発者になるのは嫌だと思いました。自分を正義ととらえた告発者としてではなく、映画で描く出来事が日本人の自分にはねっ返ってくるような作品にしたい。観た人がこれは他人事と決着してしまうような善悪で割り切れる犯罪ものにはしたくない」

『闇の子供たち』(監督・脚本:阪本順治)

<連れ去られる子どもたち>

 映画の冒頭、タイやその隣国で、子どもたちが車で連れ去られる。わずかなお金で売られて行くのだ。親も子も泣き叫んだりはしない。悲しむ余地もないほど貧しいのだろう。着いた先は、狭い檻の中。「ここが今日からお前たちの家だ!帰る所なんかない!」と男が怒鳴る。

 連れ去られた子どもたちは、売春させられ、性的虐待を受け続ける。最後は臓器移植手術の犠牲になる。映画の主人公である日本の新聞社のバンコク特派員南部浩行は、その臓器売買を追跡する。この物語はフィクションだが、描かれている問題は現実だ。

 彼はある日、臓器移植の情報を手に入れる。売買された子どもの臓器が日本人向けに使われるらしい。裏を取るため、臓器提供を受ける日本の家庭を訪ねる。難病に侵され余命何カ月の子ども。日本では、15歳未満は臓器提供ができないし、欧米で手術を受けるにはかなりの時間待たなければならない。親子にとってタイでの手術は残された最後の手段だ。

 南部は、「この子のためなら自分の命もいらない」と云わんばかりの愛情あふれる親に事態を説明する。タイで手術すれば、臓器を提供するタイの子どもの命を奪うことになるから止めてほしいと説得するが、親は「心臓の移植手術をするとしか聞いていない。私の子ども見殺しにする権利があなた方にあるのか」と耳を貸さない。

 取材過程では、マフィアの男チットに「嗅ぎまわるのはやめろ」と銃を突き付けられる。しかし南部は、「買春をするような薄汚い日本人と一緒にされたくない」と立ち向かう。結局ドナーにされる少女を助けることはできなかったが、彼女が病院に連れられて行くのをカメラに収めた。

<豊かな国の大人が少女を買う>

 映画にはもう一人、タイのNGO福祉センター「バーンウンアイラック」で働く若い女性が登場する。新米NGOの音羽恵子は、かつてセンターに通っていた少女アランヤーから助けを求める紙切れをうけとる。少女は売春宿に売られたうえ、「自分は病気になっているらしい。多分ゴミ袋に入れられ捨てられるだろう」と伝えてきた。少女がゴミ収集車に乗せられる寸前で、恵子は体当たりして救出する。

 同じ厳しい現実と向き合う南部と恵子だが、二人の間には深刻な亀裂が生じる。南部は恵子に、「1人を助けても、別の子どもが連れられてくるだけだ。それをくい止めるためには、事実を事実として報道することこそ意味がある」と主張する。対する恵子は、「1人を救えなくて誰を救うと言うのか」と問いかける。半ば絶望し「一緒に日本に帰ろう」と誘う南部。その手を振り切り、「もう私は言い訳しない」とさらに強い気持ちを固める恵子。その姿を見て頭を抱える南部の苦悩は、観る者自身に迫ってくる。

 そんな葛藤を経ながら、彼らはなんとか子どもたちを救いだそうとする。貧しい国では警察官の買収は日常茶飯事。NGOの仲間はマフィアに銃殺され、彼ら自身生命の危機にさらされるが屈しなかった。

 そしてついに売春宿に警察が踏み込み、マフィアも「客」も検挙され、子どもたちは救出される。ボスの命令で子どもたちを買い集めていたチットは、手錠を掛けられ連行される。しかし彼は、無様な裸の姿で並ばされている客たちを眺め、満足げに笑みを浮かべる。

 チットもまた、かつて人身売買によって連れてこられ、檻の中に入れられていたのだろう。売春宿の子どもたちは、たとえ運よく生き延びても、マフィアの手下になるしか生きる術はないに違いない。

 この映画は、幼児買春と臓器売買をテーマに、貧しいタイと豊かな国々を描いている。子どもたちを買いたたき、檻に入れムチ打ち、金を儲けているのはタイの大人たちだが、無抵抗な子どもに性的虐待をしているのは、日本人をはじめ金持ちの国の大人たちだ。

『闇の子供たち』(監督・脚本:阪本順治)

<両目をくり抜かれた子ども>

 私は3年前、フィリピンにスタディーツアーを行った。これをきっかけとして、友人たちと地域でサークルを立上げ、本や衣類などの日用品を現地に贈る活動をしてきた。その枠を拡げて、現地の農業や水の問題などを含めた継続的な自立支援を計画している。

 この7月、友人でもあるフィリピンのソーシャルワーカー、メラニー・カタランさんが来日した。その際、フィリピンで3歳の男の子が両目をくりぬかれ、血だらけで倒れていたというショッキングなニュースを聞いた。それが心のなかに重く残っていただけに、この映画は、とてもリアルに感じられ、私たちに何が出来るかを問いかける映画だった。

 とは言え私たちの活動は、目を覆いたくなるような辛いことばかりではない。フィリピンの人たちと接し、楽しく、また、学ぶことの方が多い。

 そこでお願い。メラニー・カタランさんのホームタウン、ファンガシナン・マーシン村では、台風の被害で小学校が壊れてしまいました。図書館の屋根を修理するためのカンパを募っているので、ぜひご協力をお願いします。

【カンパ振込先】
ゆうちょ銀行口座
10310―95085251 名義 クムスタカ リンク
詳しくは、下記のブログをご覧ください。
http://kumustakalink.blogspot.com/

(1276号 2008年9月25日発行)