海は人類の大切な共有財

 12月23日、「絶滅の危機に瀕する西のコククジラと沖縄のジュゴンを保護するために」と題する講演会が東京都渋谷区のウィメンズプラザで開かれた。主催は「北限のジュゴンを見守る会」で、IFAW(国際動物福祉基金)とグリーンピースジャパンが協賛。講師は海生哺乳類研究者・粕谷俊雄さん。

 粕谷さんはイルカ、クジラ、ジュゴンなどの生活史を1960年から研究し、保全管理の仕事に携わってきた。しかし研究を進めるうちに人間による捕獲や汚染などによって海生生物が大きく減少していることに気づいた。

 コククジラは体長13~14メートルで海底のエビなどを餌とするが、19世紀に大量に捕獲され急速に減少。1937年に国際条約で捕獲禁止となり、その後北太平洋東部では数が回復した。一方、北太平洋西部では捕獲が続き、一時は絶滅状態になったが、1990年代以降は少ないながらも生存が確認され現在に至っている。日本では2008年1月に捕獲・販売・所持を禁止したが、混獲防止対策は検討中だ。

 粕谷さんは「日本での死亡事故を減らせばゆっくり増加するというが、朝鮮半島・中国沿岸の環境悪化や年に1~2頭の事故死が続くと数は減少する」と指摘。ジュゴンに関しては、1997~2000年に調査を行い、早急な保護対策が必要であると訴えた。

 「沖縄島は日本のジュゴンの主要な生息地。自然が残され、良好な餌場がある。しかし捕獲数は減っている。すでに1933年には、危険な状態にあると報告されていた。もっと早く1970年代に保護対策がとれたはずだが、そうしなかったのは行政の怠慢。縦割り行政の弊害と政府が軍事を優先したため」

 最後に「海は人類の共有財。漁業者だけでなく、石油採掘などの鉱業、船舶などの運輸にも利用されている。そして海産物を食べている消費者にも海を保護する責任がある。私たちは動物の事故を減らし、その生存を保証する責任を負っている。産業の努力、行政の支援、科学者の警告が不可欠であり、その3者を監視し怠慢を告発する市民の努力が必要」と締めくくった。

 講演後は活発な質疑応答が交わされた。ジュゴンの餌である海草(うみくさ)は、辺野古の米軍基地建設のための埋め立てによって壊滅的被害をうけるだけでなく、養殖場の設置や海砂利の採取、陸上の赤土の流出、ゴルフ場からの除草剤によっても被害を受けることが明らかにされた。

 また辺野古の基地建設に関わる環境アセスメントに関しては「与えられる影響がどのくらいまでならば許容できるのか、そのレベルが明らかにされていない。目標をはっきりさせるべき」と、建設を前提にした調査のあり方に疑問を呈した。

絶滅の危機に瀕する西のコククジラと沖縄のジュゴンを保護するために