ドリームキャッチャーは奪われても未来への夢は壊れない! 高尾山「和居和居デッキ」の行政代執行
国土交通省は11月18日午前9時、圏央道高尾山トンネル工事に反対する市民団体「虔十の会」「地権者の会・むさゝび党」がトンネル南坑口に建設したデッキに対し、行政代執行を開始した。圏央道建設では初めての行政代執行となる。
<「白い繭」のような和居和居デッキ>
デッキには前夜から大勢の支援者が駆けつけた。夜通しキャンドルが灯り、音楽が奏でられ、高尾山の未来を語り合う。
朝日が差し込むころには、女性たちが美しく着飾り、国交省の役人たちを待ち受ける。全国から1000個以上集まったドリームキャッチャー(ネイティブアメリカンの魔よけのお守り)は、繭のようにデッキを守っている。
午前9時、国交省の職員、ガードマン、作業員など総勢100名以上がデッキに押し寄せる。国交省は代執行に先立ち、デッキに通じる迂回路を封鎖。支援者や当事者の「むさゝび党」メンバーが近づけないようにした。相武国道事務所の担当者が行政代執行令書を読み上げる。「只今から行政代執行に着手します。作業の妨害になるので立ち退いてください」。警備の警察官の姿も見え、ものものしい雰囲気だ。
「虔十の会」代表・坂田昌子さんは「デッキの建っている土地は、境界をめぐって現在も裁判で係争中。一方的に道路予定地と宣言して代執行をするのはおかしい。国は釈明する義務がある」と抗議。
しかし国交省側は「法令の手順通り進める」と答えるだけ。迂回路の封鎖を解除するよう求めても「作業エリア内だから」と全く聞く耳をもたない。
作業員が1階部分に入り込みドリームキャッチャーなどの撤去を開始すると、デッキにいる30人の支援者が「壊さないで!」「話し合いをしてください」と一斉に声をあげる。「どれだけ多くの人たちの想いが込められているか分かりますか!」と涙を流して叫ぶ女性たち。坂田代表は「このドリームキャッチャーは多くの人がトンネル工事に反対している証拠。その意味を考えて欲しい」とマイクで叫ぶ。
支援に駆けつけた元地方公務員の男性は、「土地を確定できていないのにこんなことをして大丈夫か。公務員としての責任が問われる」とアピール。マイクを握った女性は「高尾山の植物種は数千種。豊かな生態系は豊富な地下水で成り立っている。トンネル工事はそれを破壊する。将来の子どものためにもよく考えて」と呼びかけた。
<非暴力・不服従で抵抗を続けたが>
非暴力・不服従で粘り強い説得姿勢を続ける支援者に、国交省は手を出すことができず、作業は膠着状態に突入した。
一方で迂回路の封鎖によってデッキへの通行を阻まれた「むさゝび党」は高尾山のふもとで記者会見。武山健二郎・代表代行は、代執行の不当性を訴えた。同時にデッキ内の支援者に対し自主退去を要請してきた。
これを受けて坂田代表は支援者を集めて事態を説明。「本当に残念だけど、退去するしかない。せめてマスコミにドリームキャッチャーに込められたみんなの想いをきちんと取材してもらおう。私たちが退去する代わりにマスコミがデッキに入って取材できるよう、国交省と交渉したい」。
国交省はこの条件を受入れ、退去後に報道関係者をデッキに入れると約束した。支援者はデッキとドリームキャッチャーの姿をしっかりと目に焼き付け、全員で記念撮影。それぞれが持てるだけの荷物を手にし、午後12時40分、名残惜しげにデッキを後にした。
最後に坂田代表は集まった人々に対し「トンネル工事はまだ始まったばかり。これまでこの問題はなかなか報道されなかったが注目は高まっている。多くの人が集まって抗議したことで国交省の職員も耳を傾けていた」と激励、今後の運動の展望を示した。
実際、工事は大量の出水のためセメントミルクを注入して壁面を固めた上で掘削する方法へと変更されたが、それでもうまくいっていない。今年3月に崩落した城山八王子トンネルも埋まったまま。今回の代執行は、工事が進展しない国側の焦りの現れだ。デッキは破壊され、ドリームキャッチャーを奪われても、高尾山の未来を守ろうとする人々の夢は壊れない。
