「高尾山秋の1000人ハイク&エコラボキャンプ」 和居和居デッキへの行政代執行にプロテスト
圏央道のトンネル工事が進む高尾山で11月2日と3日、「高尾山秋の1000人ハイク&エコラボキャンプ」が開催された。主催したのは高尾山の自然保護を訴える「虔十の会」。
「虔十の会」は今年2月、圏央道八王子南インターチェンジと接続する高尾山トンネル南抗口のトラスト地に「和居和居デッキ」を建設。ここでの様々なイベントを通じて多くの人々にトンネル工事の不当性を訴えてきた。
こうした動きに危機感を感じてか、国土交通省はこのデッキに対して行政代執行処分を行おうとしている。しかしトラスト地の境界をめぐって国と市民団体は東京高裁で係争中だ。この裁判の結果すら待つことなく行政代執行をするなど許されない。抗議の意思を示す緊急イベントに多くの人々が参加した。
<六ヶ所でも高尾山でも自然が壊される>
11月2日は天気に恵まれ、大勢の観光客が高尾山を訪れた。京王線高尾山口駅前では「虔十の会」スタッフが「トンネルを掘らないで」と書かれたTシャツを販売してアピール。人混みの中でもTシャツはよく目立ち効果は抜群だ。
午後3時過ぎからは、裏高尾の日影沢キャンプ場でライブとトークが開始された。会場には様々なブースが並ぶ。イラクでの人道支援を行ってきたNPO・PEACE ON、沖縄辺野古のジュゴンの保護を訴えるグリーンアクションさいたま・ピースアクションチーム、茨城県東海村の菜種油を販売する市民講座はちどりの会など多彩だ。
トークは映画監督の鎌仲ひとみさん。話題のドキュメンタリー映画『六ヶ所村ラプソディ』では、青森県六ヶ所村の核燃料再処理工場問題を追った。映画は各地で自主上映され、多くの人が再処理工場の問題を知るきっかけとなった。鎌仲さんはノルウェーでの環境運動を紹介し、「生態系が損なわれれば、人間の力では取り戻せない。その価値を伝えなければいけない。あきらめずに続けることが大事」と訴えた。
「虔十の会」代表・坂田昌子さんは、「高尾山に貯えられた水は豊かな生態系を形作っており、トンネル工事はその構造を根本的に破壊する」と指摘。「六ヶ所村と高尾山の問題は同じ。たくさん箱物や道路を作り、自然を壊して、何が残ったのか。持続可能な社会へ転換するのか、何も残らない未来を選ぶのかの分岐点にある」と語りかけた。
日が暮れ辺りが暗くなる頃、会場にはキャンドルが灯され、幻想的な光の中でライブが行われた。
<代執行に向けデッキを囲い込む国交省>
翌日は行政代執行の対象となっているデッキを約70名で見学。最初にトラスト地の地権者「むささび党」事務局・米田徳治さんが航空写真を基に作製した地図を配り、土地の境界について説明。
「昔、この一帯の山では周辺住民が薪や下草を刈り取っていた。その一部がトラスト地。厳密に計測する必要がなかったので目測で番地を区切っていたから、境界がどこなのか本当は国土交通省も分かっていない。土地の収用委員会でも境界に関して、『異なる言い分がある』ことを認めている。私たちはもう一度収用委員会を開くべきだと裁判で訴えてきた」
にも関わらず国土交通省は10月初旬、「道路法第71条第1項の規定に基づき」「事業の支障となるので平成20年10月25日までに除去」しろと「戒告書」を送付してきた。その後デッキを撤去しなければ11月18日~12月17日の間に行政代執行を行うと通告。裁判で係争中のトラスト地を一方的に買収済みと宣言し、そこに構造物を建設しているから道路法違反だと主張している。
既に国道20号からデッキへ通じる道の入り口にはフェンスが張られている。国交省は10月27日、「工事現場の安全確保」と称して道を封鎖、代わりに「遊歩道」を設置した。これにより以前は5分で行けたデッキまで30分もかかるようになった。反対運動への露骨な嫌がらせであり、同時に何が何でも工事を進めようという国交省の焦りがあらわれている。
さっそく国交省が作った「遊歩道」に向かう。まるでトンネルの東側斜面に鉄パイプと鉄板で組まれた足場だ。人一人がようやく通れるぐらいの幅しかなく、梯子のような場所もある。最初の上りを終えると視界が開け、眼下に緑の鉄板で覆われた建物が見える。トンネル工事現場だが、中は見えない。
米田さんは、目の前に見える山の斜面を指差す。「コンクリートで覆っているが、ところどころ黒いシミができている。あれは湧水した箇所。雨が降ると斜面から一斉に水が噴き出す。そのくらい水を含んだ地層です」。
高尾山トンネルは、海底トンネルと同じ工法で掘削されている。出水量が多いからだが、それだけ地下水が豊富である証拠だ。トンネル掘削が地下水流出につながることは容易に想像できる。
工事現場を過ぎると道は沢に向かって下る。沢沿いに下りればすぐにデッキだが、沢にはフェンスが張ってあり、警備員が配置されてデッキに近づけない。沢にかけられた橋を渡り、もう一度尾根に向かって上る。何段も続く足場のために税金が無駄になっている。
尾根に出ると稲荷山から続く遊歩道に合流。それを下ると右手にこの春崩壊したトンネル工事現場が見えてくる。3月26日、城山八王子トンネルの上り線北側斜面が崩壊し、トンネルは完全に埋まった。直前に作業員はひび割れに気づき退避し、その3分後に崩れ落ちたらしい。原因はまだ分かっておらず、工事は中断したままだ。再開の目途すら立たないのに、なぜデッキの撤去を急ぐ必要があるのか?
尾根を下りようやくデッキに到着。トンネル工事現場にかけられている仮橋の鉄柱が山の斜面に突き刺さっている。脇を流れる沢の水は、工事によって涸れてしまった。
米田さんは「国交省は道路法に基づいて行政代執行を行うと主張するが、見てのとおり道路もできておらず、立木も伐っていない。そもそもデッキは地権者の土地にあり代執行の対象ではない」と指摘。すでに東京地裁に代執行令の取り消しを求める行政訴訟を起こし、代執行停止の申し立てを行っている。
違法・不当な高尾山トンネル工事に抗議の声を上げ、世論の力で工事を止めよう。
