とっても簡単!今日から始める「半農半X」 ダンボールコンポストで野菜作り
以前本紙で「ダンボールコンポスト」の記事を読んでから、僕も真似して始めてみた。半年前のことだ。
年が明けてから多摩に小さな庭の付いた一軒家を借り、同居人と鍬を握って庭を耕して野菜を育てている。その肥料供給源として大活躍しているのが「ダンボールコンポスト」だ。
<ダンボールコンポストを畑の肥料に>
自宅でコンポストをというと、庭に専用の容器を設置したりとか、生ゴミ処理機を購入したりとか考えがちだが、ダンボールコンポストはその点で画期的である。
〈その1〉 金がかからない
ダンボールコンポストは、ほとんど金がかからない。ダンボールコンポストにはいくつか方式があるが、僕が実践しているのはいちばん金がかからなくて簡単なものだ。準備するものは、段ボール箱1個、ピートモス(園芸用土。泥炭化した珪藻土を加工したもの)1袋、もみ殻くん炭(炭化した稲もみ)1袋だけ。
ダンボールはスーパーでもらってくればタダだし、ピートモスやもみ殻もDIYショップであわせて千円ちょっとだ。1回に使うのは半分で、それで最低3ヶ月は持つから、半年の生ゴミ処理がたったの千円で済んでしまうことになる。
〈その2〉 ゴミを入れて混ぜるだけ
次に作り方だが、①ダンボールの底を二重にする、②①にピートモス:もみ殻くん炭=3:2の割合(大体でよい)で混ぜた基材を半分くらい入れる、③②に布をかぶせて虫除けのフタとする。凝ったものでなくてよい(僕はいらなくなったTシャツを切ってかぶせている)、④毎日生ゴミを入れてかきまぜる。
以上。箱を直接床に設置せず、風通しをよくするなどの注意を守ればあとは勝手に発酵が進む。
〈その3〉 どこでもOK
このコンポスト、生ゴミ特有の悪臭が全く出ない。代わりにするのは森の中にいるような?腐葉土の匂いだ。僕もこれには驚いた。匂いが出ないから置き場所も問わない。ダイニングに置いてもいいし、座敷に置いてもいい。
生ゴミの分解がすすんで、基材がダマになったら投入終了。1日の生ゴミ量が500グラムの場合、目安は3ヶ月。土と混ぜてさらに1ヶ月ほど寝かせると堆肥の完成だ。
寒い季節に温度が上がらず発酵が進まない場合、米ぬかを1㎏ほど混ぜると温度がカーッと上昇して発酵が進む。生ゴミの湿気を吸ったダンボールを餌にダニが増えることがあるが、そんな時も米ぬかを投入して高温に保てばいつの間にか退散している。
さて、そうしてできたコンポスト堆肥を早速庭の畑にすきこんで使ってみる。化学肥料と違い、堆肥には土の粒子をつなぎとめて通気性を保つ働きがあるという。団粒化のしくみだ。
まず植えたのはジャガイモの男爵。3月に植えてからいつ芽が出るか、いつ芽が出るか、とやきもきして仕方がなかったが、1ヶ月ほどして最初にジャガイモが芽を出した時は同居人と「ヤッター」と小躍りしたものだ。分かれて出てきた株を芽欠きして、ジャガイモは順調に成長している。他にもネギやニラなどの苗も植えてみた。
ちなみに発酵途中のコンポストもボカシ肥料として使っている。収穫が待ち遠しい。
<センス・オブ・ワンダー>
ところで、僕がダンボールコンポストに取り組もうと思ったもう一つのきっかけは、塩見直紀氏の著書『半農半Xという生き方・実践篇』(ソニーマガジンズ)を読んだことにある。
塩見氏が提唱する「半農半X」とは生活に農業を取り入れ(=半農)、己の天分、得意なことを生業にして社会貢献しよう(=半X)というライフスタイルのことだ。農的生活と社会起業をミックスした考え方、といえるだろうか。
早い話が、自分でも農業やってみたいなあ、と思ったのである。こういったライフスタイルは本や雑誌で読む分には理想的で結構だが、いざやろうとすると「畑を借りるのは大変…」「都会の生活を捨てられない…」などと尻込みしがちだ。
しかし塩見さんは著書の中で「半農とは田畑を借りることだけを意味しない。大切なのは畑の広さではなくて、センス・オブ・ワンダーだ」と訴える。農業を通じて作物を得ることは、単に食糧を獲得する手段としてだけではなく、自然の恵みに感謝し、生命をいただくことでもある。蒔いた種から芽が出ればうれしいし、天気はどうだろう、水やりはどうだろう、病気は、害虫は…と、いろいろ気になりだす。
僕は去年から自宅デスクに旧暦カレンダーを掲げ、二十四節気と七十二候を気にするようにしている。そうしてみて分かったことだが、現在使われている新暦(太陽暦、グレゴリオ暦)よりも太陰暦(正しくは太陽太陰暦)の旧暦の方が、実は自然の移り変わりをよく捉えている。私たちが肌で感じる季節の変化にフィットするのは、実は旧暦の方なのである。
たとえばわたしたちは年賀状に「新春」とか「賀春」とか書いたり、小梅の絵柄を使ったりするけれども、実際に寒さは2月をピークに厳しくなっていく。春なんてまだまだ先、とんでもないという感じだ。ところが旧暦で見れば、2008年の立春は2月4日、正月は西暦の2月7日。日足も少しだが伸び、厳冬の中にも陽射しの暖かさをありがたく思う時分だ。これで梅もほころび始めれば、ああいよいよ春もすぐそこだな、と思うだろう。二十四節気と七十二候は、自然の変化を読み取り、いつ頃にどんな作物を作るかを考える目安として役立つ。旧暦は農事暦なのだ。
こうして農をクローズアップすることで、自然の移り変わりに敏感になる。そしてそこから、私たちに恵みを与えてくれる自然をおろそかにしてはいけないという感情が芽生えるのは、当然の成り行きだ。これが「センス・オブ・ワンダー」であって、例えばベランダのプランターで野菜をつくってみる、というものでもOKなのだ。
<食物のサイクルを自分の手で>
捨てるだけだった生ゴミが肥料になり、新たな作物を育てる。そんな循環のサイクルを自分の手で作れるというのは、何とも面白い。余談だが、東京のセレブ住宅地・成城では小田急が運営する会員制農園『アグリス成城』が今、人気という。1区画6平米、つまり駐車スペース1台分の畑の年間利用料金が、何と約14万円弱!
成城のセレブな方々は自宅の庭を耕して畑にしようとは思わなかったのだろうか…、などとやっかみ半分に思わないでもないが、今や農業は「辛くてしんどい労働」ではなくて「お金を払ってでもする、価値のあるもの」へと変わりつつある。農業の後継者不足や食糧自給率の問題がクローズアップされて久しいが、大きい変化はこうした意識の変化から起こるのかもしれない。
ところでこの春、自宅とは別に友人同士でビルの屋上を借りて屋上菜園を始めた。肥料には友人宅のダンボールコンポストを利用する予定だ。身近な所でダンボールコンポストの輪が広がっている。読者のみなさんも始めてみてはいかがだろうか。
斉藤円華(30代 ライター)
