「チベットに自由を!」「チベットに人権を!」

 4月13日、日曜夕刻の東京渋谷。キャンドルマーチの先頭で必死に訴えるのは、在日チベット人のドルマさん。彼女の両親は、チベット動乱最中の1959年ネパールへ亡命した。インドへ亡命したダライ・ラマ14世の後を追ってのことだ。

 そこで生まれたドルマさんは、その後インド国内のチベット子ども村(TCV)で育てられた。TCVはダライ・ラマ法王の実の姉妹が、チベット難民の子どもたちのために運営してきた施設だ。

 5年前、日本に住んでいたお兄さんを慕って来日したドルマさん。必死に日本語を勉強し、介護福祉士の資格も取得した。「私たちは自分の国が存在しない難民です。ダライ・ラマ法王が亡命して既に50年近く経っています。その間チベットでは中国政府による抑圧が続いてきました。このままではチベットの宗教や文化が死んでしまう。本当に緊急事態なんです」。

 こうしたチベットの危機的状況をなんとか支援しようと、キャンドルマーチには300人以上が参加した。「Free Tibet」と記したキャンドルを手に、「We shall overcome」を歌いながら歩く人々。チベット亡命政府の鮮やかな旗が風にたなびく。

 発起人の一人である高橋まりえさんは、2年ほど前からチベット問題に関心をもった。

 「今回の事件で亡くなった方々、そして50年間に渡る中国政府の武力弾圧により被害に遇った方々へ哀悼の意を込めて企画しました。そして今後の平和的解決へ向けて祈りを込めて歩きたいと思います」

 彼女が参加するTSNJ(TIBET SUPPORT NETWORK JAPAN)は、チベットへサポート活動を行う様々なグループが相互連絡するネットワーク組織。ますます激しさを増す中国政府のチベットへの人権侵害を許さないために、4月にはTSNJを含めたさらに幅広いネットワーク「SAVE TIBET NETWORK」が発足した。

 マーチ出発前に宮下公園で行われた集会では、チベット・亡命政府からの緊急声明も紹介された。それによると、4月2日中国共産党委員会チベット自治区書記は「先のチベット〝暴動〟に参加した者を4月末日までに裁き、最も厳しい刑に処する」との声明を発表。7日にはラモチェ寺の約100人の僧侶のうち70名が逮捕され、武装警察に包囲されている僧院内では食料不足のために飢餓が深刻化している。

 既に中国政府は、少なくとも140名を殺害。さらに逮捕・拘束された1400名以上の人々は、正当な訴訟手続きや公正な裁判を経ずに処刑されようとしている。だからこそ全世界では、北京オリンピック聖火リレーへの抗議活動が巻き起こっている。アメリカではサンフランシスコ市議会までが「抗議をもって聖火をむかえる」と決議したほどだ。

 欧州議会も4月10日、中国政府がダライ・ラマ14世との対話を開始しなければ、「五輪開会式への出席について、不参加を選択肢に入れたEU共通の方針策定を目指すことをEU首脳に求める」との決議案を賛成多数で採決した。

 チベット問題への国際的批判がこれほど高まっているにも関わらず、5月胡錦濤国家主席来日を控える日本政府の態度は及び腰だ。4月10日渦中のダライ・ラマ14世がトランジットで来日したにも関わらず、中国政府に配慮して安倍前首相夫人が面会しただけでお茶を濁した。

 ダライ・ラマ14世は繰り返し「チベットの将来については、私は、中華人民共和国という枠組み内で解決を図ると決意しています」と語っている。チベットの人たちが求めているのは分離・独立ではなく、文化的・宗教的なアイデンティティーであり基本的人権そのものだ。それすら支援できないとしたら、日本政府の人権感覚は国際社会の信頼を完全に失うことになる。

(1266号 2008年4月25日発行)

横断幕を掲げ中国政府のチベット弾圧に抗議(4月13日・東京渋谷)