私は埼玉県ふじみ野市の障がい者サークル「とんぼの会」に関わっている。活動の中で、ノーマライゼーション、ユニバーサルデザイン、バリアフリーなどの言葉に触れることが多い。福祉を語る上で必ず出て来る言葉だが、どのような意味があるのだろうか。

 まずノーマライゼーション(normalization)だが、これは1960年代に北欧諸国から始まった社会福祉の概念だ。「障害者と健常者とは、お互いが特別に区別されることなく、社会生活を共にするのが正常なことであり、本来の望ましい姿であるとする考え方」(フリー百科事典、ウィキペディアより)である。障がい者の存在や意志を無視した健常者中心の考え方を改めるものであり、国連の「国際障害者年」(1981年)のテーマ「完全参加と平等」へとつながった。

 しかし障がい者がノーマル(普通)に暮らすには、様々な障壁が立ちはだかる。例えば車椅子ではのぼれないような階段などだ。こうした障害(バリア)をとり除くのがバリアフリーだ。

 バリアフリーは障がい者や高齢者などを対象にしたものだ。これに対して、ユニバーサルデザインは「できるだけ多くの人が利用可能であるようデザインすること」が基本コンセプトだ。バリアフリー概念の発展形ともいえる。身近な例では、シャンプーとリンスを区別するために容器に付けられたギザギザやノンステップバス、多機能トイレなどだ。

 自らポリオの後遺症を持つ建築家ロン・メイのユニバーサルデザインセンターは7原則を提唱している。①どんな人でも公平に使える事、②使う上で自由度が高い事、③使い方が簡単で、すぐに分かる事、④必要な情報がすぐに分かる事、⑤うっかりミスが危険につながらない事、⑥身体的負担の軽減(弱い力でも使えること)、⑦接近や利用するための十分な大きさと空間を確保する事。

 障がい者だけでなく、性別や年齢の区別なく、妊婦を含めて、誰もに使い易いことを目指すのがユニバーサルデザインだ。

<ハードとソフトを充実させた新法>

 高齢化社会を迎え、最近は車椅子を使用している人を町でよく見かける。そんな時代に応えての事なのだろう、ユニバーサルデザインやバリアフリーの考えは今や国土交通省の政策に頻繁に出てくるようになった。もちろん障がい者運動の地道な活動の成果も反映している。

 2005年、国土交通省は「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」をテーマに「ユニバーサル政策大綱」をまとめた。あらかじめバリアを作らないユニバーサルデザインの考えを大きな枠組みにしたのだ。

 その施策の1つ「一体的、総合的なバリアフリー施策の推進」のために、それまでのハートビル法(高齢者、身体障害者が円滑に利用できる特定建築物の促進に関する法律・1994年)と、交通バリアフリー法(高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律・2000年)は1つの法律にまとめられた。これが2006年12月に施行されたバリアフリー新法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)だ。

 新法の内容には目を見張るものがある。1つは、全ての障がい者が対象となったことだ。これまでの交通バリアフリー法では、対象を「高齢者、身体障害者」と限定していた。けれども対象者が拡大したことで、人工肛門、人工膀胱創設者等、内部障がいの人にも使いやすいトイレの設置が加味された。

 利用する施設を広く面的にとらえ、整備を促していることも注目できる。今までの公共交通機関・道路・信号に加え、建築物・路外駐車場・都市公園なども対象となった。さらにこれらを結ぶ経路も特定事業として位置付けられている。

 また当事者が参画し、基本計画に利用者の視点を反映するシステムになった。市町村が策定する基本構想の内容を、当事者である高齢者や障がい者が提案出来る制度が新設されたのだ。提案を採用しない場合でも、理由を説明、公表する義務がある。

 他にも「スパイラルアップの導入」がある。スパイラルアップは、当事者が具体的施策の内容を検証し、追跡調査をして見直し、新たな措置や施策を講じることだ。このスパイラルアップを国の果たすべき責務として位置付け、バリアフリーの持続的発展を保証するものになっている。どんな良い法律が出来ても、具体化され、利用者にとって使い勝手が良くなければ意味がないからだ。

<心のバリアフリーが一番大切>

 このように新バリアフリー法は、ハード面だけでなくソフト面の充実をはかっているところが画期的だ。その1つとして「心のバリアフリー」の促進を挙げているのも良い。

 未だに、障がい者に対してバスやタクシーの乗車拒否があると聞く。ノンステップバスでさえ「乗車してからの安全を保証出来ない」との理由で、乗車拒否する事もあるそうだ。バリアフリーが問われているのは行政だけではなく、私たち自身でもある。

 例えば北海道旭川市はバリアフリー基本構想策定にあたって、2006年に障がい者、高齢者を中心とする意識調査を実施した。その結果、「バリアフリーを進めるために市民と取り組むべきこと」との問いに対し「声掛けや手助けなど心のバリアフリーをすすめるべき」「違法駐輪などのマナー向上の対策支援」などが挙げられた。

 こうした心のバリアフリーと同時にもう1つ問題がある。建築物を新しく作る場合は罰則があっても、改修の場合は相変わらず努力義務でしかないことだ。残念ながら地方財政の逼迫、公共交通事業体の財政事情で、改修に足踏みしてしまうのが現実だ。

 「(法律には)良いこと書いてあるけど。近くの駅の設備、何とかなんない?」との声も多い。私の住んでる街もユニバーサルデザインどころか、、バリアフリーもまだまだだ。
 歳をとり、病気や事故で障害を負うこともある。バリアフリーは誰にとっても身近な問題だと思う。

(1260号 2008年1月25日発行)