5月ダブリン会議でクラスター爆弾全面禁止条約を オスロ・プロセスは着実に前進している グリーンアクションさいたま 渡辺栄一
クラスター爆弾禁止条約制定を目指すオスロ・プロセスの第4回国際会議が、2月18日から22日までニュージーランドのウェリントンで開催された。
最終日の22日、日本を含む82カ国は年内に禁止条約を成立させることを謳った「ウェリントン宣言」に署名しこれを採択。最終交渉の場となる5月ダブリン会議までに、署名国はさらに増えていくと期待される。
<オスロ・プロセスが国際社会の主流に>
「宣言」では、民間人に甚大な被害をもたらすクラスター爆弾は容認できないとし、その使用・生産・移動を禁止。さらに不発弾の除去や、被害者に対する治療やリハビリなど救済措置を目的とする枠組み作りの必要性も訴えている。
クラスター爆弾の全面禁止にむけオスロ・プロセスが始動したのは昨年2月。以降会議への参加国は49カ国(オスロ)、68カ国(リマ)、138カ国(ウィーン)、122カ国(ウェリントン―財政上参加できなくても「宣言」に署名することを伝えた国もある)と着実に拡大してきた。
一方、クラスター爆弾の全面禁止ではなく制限を目指す動きもある。オスロ・プロセス不参加国の米国・ロシア・中国などが主導する国連の「特定通常兵器使用禁止制限条約」(CCW)締約国会議。しかしCCWへの参加国は102カ国に留まっている上、昨年11月の会議で意見対立が表面化。運営規則として「全会一致」を原則とするCCWでは、条約づくりの目処すら立っていない。
こうしたなか、ノルウェー政府やNGO「CMC」(クラスター兵器連合)が主導して始まったオスロ・プロセスこそが国際社会での主導権を握りつつある。未だ様々な課題を抱えつつも、10年前の対人地雷禁止条約を彷彿させ、同時にそれを上回る成果も積み重ねてきた。
今回のウェリントン会議に先立つウィーン会議(2007年12月)では、条約草案を巡る議論のなかで犠牲者支援をより明確化することで合意した。対人地雷を禁止したオタワ条約では、犠牲者支援は第6条「国際協力と支援」に包括されていたが、オスロ・プロセスでは第5条「犠牲者支援」を独立した条文とすることで一致したのだ。
アフリカやアジア諸国などクラスター爆弾の被害国は、爆弾投下国の除去責任を明確化し、国際社会が協力して被害者・地域への医療や経済支援を行うことを強く求めていた。これを受け「ウェリントン宣言」にも犠牲者支援は盛り込まれ、参加国の共通合意となっている。
<ダブリン会議にもちこされた課題>
一方ウェリントン会議では、5月のダブリン会議にむけ「全面禁止派」と「部分禁止派」との争点も明確になった。条約草案を巡り議論になったのは次の3点。
①禁止対象にする爆弾の定義、②アメリカなど条約に参加する見込みのない国との「合同演習」の扱い、③禁止実施までに猶予期間を設けるか。
①については、ノルウェーやオーストリア、ニュージーランド、ペルー、インドネシア、などは「全面禁止」。日本、英国、フランス、ドイツ、オーストラリアなどは最新型クラスター爆弾の除外を要求。
後者は、不発率1%未満、目標識別能力を備えた子爆弾、自己破壊機能、子爆弾の数が10個未満などの条件を満たせば、「代替兵器」として永続使用できると主張している。
しかし最新型のクラスター爆弾の性能には疑問がある。2006年レバノン南部にイスラエルが投下したクラスター爆弾には、公称不発率1%未満、自爆装置を備えた改良型のM85が含まれていた。しかし停戦後に調査した国連地雷除去センターは、「(改良型の)不発率1%未満は実現できていない」とし、全面禁止を訴えている。
ノルウェーのNGO「NPA」も実地調査により、M85の不発率は10%以上だとウィーン会議で報告。「不発率1%未満なら人道的」とする主張は欺瞞的であると同時に実証的でもない。
②は、オスロ・プロセス不参加国の米国の意志が反映されたものだ。米国は会議に先立ち「すべての不発弾被害の中でクラスター爆弾が原因となる割合は小さい」「クラスター爆弾禁止キャンペーンは、不発弾問題全般に取り組むのではなく、一つのタイプの弾薬に汚名を着せようと試みるものだ」との文書を各国メディアに配布。
これを代弁するかのように、非加盟国(=米国)との合同軍事演習を可能にする条文改定を促す文書をオーストラリアが作成し、英・仏・独・カナダなどが連名で配布した。また日本は独自に、非加盟国のクラスター爆弾使用を黙認する条約修正案を提出した。
CMCは名指しでこれら諸国を、「禁止条約を骨抜きにしようとしている」と批判している。
③については、「部分禁止派」の中にも微妙な違いがある。ドイツや英国は不発率の高い旧来型爆弾の即時廃棄を受け入れている。ところが日本は、保有している旧来型の爆弾廃棄までに猶予期間を設け、「必要不可欠な場合」は使用できるとする立場だ。
日本がクラスター爆弾を頻繁に使用することはほとんど考えられない。日本の主張で得をするのは米国やイスラエル、ロシア、中国といった大量保有国。とりわけ旧型兵器を実戦により処分する米国やイスラエルだろう。日本はここでも米国の言いなりなのである。
<日本政府を動かすキャンペーンを>
とは言え、今回日本が「ウェリントン宣言」に署名したことは、条約推進派の国々やNGOから驚きをもって歓迎された。日本は昨年2月のオスロ会議に参加し、その後も国際会議に大勢の代表団を派遣し続けるが、CCWを優先する立場から発言も態度表明もしない不気味な存在と思われていた。
今回オスロ・プロセス賛同の立場に豹変した理由の一つは、5月ダブリン会議への参加条件を得るためだろう。ダブリン会議では禁止条約の最終交渉と採択が予定されている。これに参加するために日本は決断を迫られたわけだ。
だが他方で、日本政府は依然としてCCW優先の立場を崩していない。ウェリントン会議後の記者会見で町村官房長官は次のように答えている。
「日本はたとえばですね、幾つかの主張をしていたわけですね。信頼性とか正確性を備えたクラスター弾は規制の対象外でよろしいとか、あるいは信頼性、正確性の低いクラスター爆弾については、一定の移行期間後に禁止すべきであると。もちろん、開発とか生産はただちに禁止するということなのですね。そういう主張をですね、5月のダブリン会議において検討すべきものということになったんですね。それならば日本の主張も認められたんだなということで、ウェリントン宣言への参加を表明したということであります」
ゆえに今後求められていることは、こうした玉虫色の日本政府の立場を「全面禁止」へと後押しすることだ。そのためには、クラスター爆弾禁止にむけた国内世論を盛り上げていくことが不可欠。ノルウェーやニュージーランドなど「全面禁止派」諸国には、これを望む確固たる国民世論が存在する。
グリーンアクションさいたまは、外務省、防衛省へ向けたハガキとメールのキャンペーンを展開している。、またJCBL(地雷廃絶日本キャンペーン)が中心となって4月にクラスター爆弾のサバイバー(被害者)を招いてのイベントを予定。CMCはダブリン会議1ヵ月前の4月19日、全世界に向けて「Global Day of Action」を呼びかけている。
もし自分の子どもが、おもちゃやお菓子だと思って触れたクラスター爆弾に指や足を吹き飛ばされたらどうなに辛く哀しいだろうか。一刻も早くクラスター爆弾の全面禁止を実現しなければならない。
※キャンペーンやイベントの詳細は以下のサイトをご覧ください
グリーンアクションさいたま
http://www.green-act-saitama.org
JCBL(地雷廃絶日本キャンペーン)
http://www.jcpl-ngo.org

