ごみ減量の基本は3R(Reduce・Reuse・Recycle) サーマルリサイクルを主軸にするのは疑問だ 吉永一矢(清掃労働者)
東京23区では2008年度から、廃プラのサーマルリサイクル(熱回収)が始まろうとしている。既に私が働く区では、昨年10月より一部地域で実施されている。
これまで23区では、廃プラは燃やさないごみとして収集され、埋め立て処分されてきた。しかし2004年東京都廃棄物審議会は、「廃プラは貴重な資源であり、埋め立て不適物だ」と埋め立て処分の中止を求めた。さらに05年環境省中央環境審議会で廃プラのサーマルリサイクルが打ち出され、ついに23区でも実施されることになったのだ。
<逼迫する埋め立て処分場>
東京都廃棄物審議会は、①廃プラは容積で埋め立てごみの5割を占め、最終処分場逼迫の原因、②都内で埋め立てられた廃プラのエネルギー量は22万世帯分の電力に相当するなどをサーマルリサイクルの理由として述べている。
また事業主体の東京23区清掃一部事務組合は、焼却灰を溶融スラグ(1200度以上の高温に加熱して、溶融―固化することによってできる人工砂)化し、建設用資材やインターロッキングブロック(レンガ状のもの)として使用することで、最終処分場の延命がはかれると主張している。
確かに東京都の埋め立て処分場は逼迫している。その延命だけを考えれば、廃プラの焼却処分は有効な方法だ。清掃工場の建て替えも進み、焼却時にダイオキシン等の有害物が発生する恐れも低くなった。全ての清掃工場は発電施設やボイラーを備え、売電や地域への熱供給を行っている。焼却灰の全量スラグ化の計画も進行している。環境省も廃プラのサーマルリサイクル方針を打ち出したから、今後全国の自治体でも加速されるだろう。
しかしごみ問題の本当の解決は、資源循環型社会を形成することだ。こうした観点からすると、廃プラのサーマルリサイクルを安易に実施することには大きな問題がある。
知ってのとおり、ごみの減量には3Rが重要だ。第1のRはReduce(発生抑制)、第2のRはReuse(再使用)、第3のRはRecycle(再生使用)だ。これは資源循環型社会形成推進基本法にも示されている。つまり本来なら、廃プラを焼却して熱を回収する方法は、ごみ処分の最下位に位置づけられて導入されるべきものなのだ。
残念ながら、資源循環型社会形成推進法や容器包装リサイクル法の成立以降も、発生抑制や再使用はなかなか促進されていない。こうした現状をそのままにして、廃プラをリサイクルを名目に焼却処分すれば、発生抑制や再使用へのインセンティブを消失させてしまう。むしろプラスチック製容器包装の大量生産―大量消費―大量廃棄を招きかねない。
実際、サーマルリサイクルが始まろうとしている現在でも、ペットボトルとトレーを除いた容器包装プラスチックの分別収集・リサイクルを実施している区は、23区中わずかに10区だけなのだ。
<製造者責任を重くすべきだ>
またペットボトルのリサイクル率は、容器包装リサイクルが施行された97年以降高まっているが、同時に生産量も増えて続けている。つまり根本的な問題は、現行の容器包装リサイクル法にあると私は思う。
容リ法では、容器包装をリサイクルしていくうえで、事業者・消費者・自治体の役割分担を明確にしている。事業者には再商品化を、消費者には分別排出を、自治体には分別収集と保管をそれぞれ義務付けている。
しかし、現状では事業者の負担が軽過ぎて、発生抑制や再使用へ向かうインセンティブが働いていない。逆に自治体にとっては負担が大き過ぎるため、きめ細かい分別収集を実施できない自治体は多い。
環境省の調査によれば、2004年度において白色トレーを除いたプラスチック製容器包装の分別収集を行っている自治体は、全市町村数3053のうち707(23%)、人口カバー率で37・4%にとどまっている。
廃プラのサーマルリサイクルが推奨されれば、財政難に苦しむ自治体はプラスチック製容器包装の分別収集から撤退することも考えられる。そうなれば事業者は作りたい放題・売りたい放題で、ごみは税金を使って焼却処分する構造になる。容リ法の換骨奪胎、資源循環型社会形成とは逆の方向に向かいかねないのだ。
そうならないためには、容リ法を改正して事業者の負担を大きくすべきだ。リサイクルにかかる費用を事業者に負担させ、その一部を価格に上乗せするなどの政策が必要だろう。そうすれば事業者には、コスト削減のため必要最小限の、リユース・リサイクルしやすい材質の容器包装を使うインセンティブが働く。消費者にも環境負荷に応じた費用を負担してもらい、大量消費を抑制することができる。
ゆえに東京都23区は廃プラのサーマルリサイクルを実施する前に、まずは容リ法の改正を働きかけるべきだ。環境省もまた、容リ法の改正にこそ力を入れるべきだろう。
私はリデュース・リユースが徹底的に行われた上でなら、焼却したほうが効率のよい廃プラのサーマルリサイクルにまで反対するつもりはない。しかし、現状での導入には反対だ。
このまま大消費地東京区部でサーマルリサイクルが導入されたら、循環型社会の形成に水をさす。日本が資源循環型社会に向かっていくのか、今までとおり大量生産―大量消費―大量廃棄の社会であり続けるのか、今が分岐点だと思う。
