JCO臨界事故で被曝した住民の請求を棄却 国策に屈し健康被害を認めない水戸地裁判決
「原告の請求、棄却」。2月27日午前10時過ぎ、裁判長の声が水戸地裁の法廷内に響いた。その瞬間、外で待つ支援者へ結果を知らせるため、原告大泉夫妻の長男実成さんが外へ駆け出し、地裁正門前で「不当判決」と大きく記した幕を広げた。
取材していた多くのマスコミ関係者も一斉に走り出た。主文が朗読されただけであっという間の閉廷。全国から駆けつけた支援者たちも、ため息まじりに重い腰を上げて法廷を出る。
1999年9月30日に発生したJCO臨界事故。事故が起きた転換試験棟の目の前で仕事をしていた大泉昭一さん、恵子さん夫妻は、健康被害に対する損害賠償を求めて民事裁判を起こした。残念ながらその第1審は、完全敗訴となった。
2002年9月3日に提訴してからこの日まで5年5ヶ月を要した。24回の公判が開かれ、証拠調べで原告側は8人の証人を申請、6人が認められて本格的な論戦が繰り広げられた。被告のJCOや住友金属鉱山側は証人を立てられず、原告側は内容的に圧倒してきた。しかし水戸地裁は、原告の請求そのものを棄却したのだ。
昨年10月浜岡原発運転差し止め訴訟でも、住民側の訴えを一方的に退け、国と電力会社の主張を代弁するだけの不当な判決が下された。今回の判決もまた、国策である原発推進の流れに与したものだ。三権分立がきちんと機能しているとは言い難い。
「臨界事故被害者の裁判を支援する会」(以下、支援する会)は即座に記者会見を開いた。原告の大泉夫妻、弁護団を務めた海渡雄一氏、伊東良徳氏、そして多くの支援者、メディア関係者が出席。昭一さんの皮膚疾患を診察し原告側証人に立った近畿中央病院皮膚科部長佐藤健二医師も関西から駆けつけた。
冒頭支援する会事務局長で東海村村議の相沢一正さんは、「全面敗訴だが、不当な判決としか言いようがない」と怒りを露にする。判決にざっと目を通した弁護士は、以下の点で判決内容を批判した。
①原告が被曝した中性子線の線量を政府見解の6・5mSVとしており、日本原子力学会や原告側証人の主張する線量よりかなり低く評価している。
②裁判所は原告側証人として主治医、専門家が証言した内容を、「高度な蓋然性が認められない」と否定した。あれだけ中性子線を浴びたにも関わらず、被曝と健康被害との因果関係が認められなければ、原子力事故の被害者は救われない。極めて非人道的な判決だ。
③大泉昭一さんの皮膚疾患(紅皮症)と中性子線との因果関係を否定する理由を見ても、裁判官が公判で明らかにされた症状の経過を正しく理解しているとは考えられない。
④大泉恵子さんは事故以前からうつ状態だとするJCO側の主張を受けいれ、判決は恵子さんのPTSD(心的外傷後ストレス障害)を否定した。しかし内容的を見るとPTSDについて基本的な理解すらしていない。
(記者会見の詳細については、本誌6~7面で特集)
弁護士のコメントを受け昭一さんは、「敗けたけれども、事故を風化させないために裁判を起こした意義はあった」「今日の判決を『はいそうですか』と認めるわけにはいかない」と決意を新たに。
恵子さんは、「JCOや住友金属鉱山だけでなく、国も全く信じられない。今日の判決要旨をマスコミにしか渡さず、私たちには見せてもくれない。こんな国を相手にしていくのは不安だらけだ」と涙ながら語った。
記者会見終了後、支援者は輪になって今後の取り組みに関する会議を開催。大泉夫妻は控訴への固い意志を明らかにした。敗訴に肩を落としていた支援者たちも、夫妻の決意に励まされ共に控訴審へ望むことを決定した。
JCO事故後も、原発では相次ぐトラブル隠しが発覚した。昨年新潟県中越沖地震で重大な被害を受けた柏崎刈羽原発は、立地の際活断層が見落とされていたことが明らかとなっている。
被曝による住民被害を二度と繰り返さないために、国策に抗するこの裁判を支援し続けていきたい。
市民講座ハチドリの会
