気候変動問題の国際情勢 バリ会合からG8洞爺湖サミットへ 日本は議長国として劇的な排出量削減を掲げて欲しい
昨年12月3日から14日まで、インドネシア・バリ島で国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)が開催された。COP13を前にした11月28日、2008年G8サミットNGOフォーラム環境ユニットの主催で行われたジェニファー・モーガン氏特別講演要旨を紹介する。彼女は現在E3G(第三世代環境主義―Third Generation Environmentalism Ltd.)の気候・エネルギー安全保障担当理事で、以前はWWF気候変動プログラム代表を務めた。
<平均気温が2℃上がればレッドゾーンに突入する>
今日は地球温暖化問題をグローバルに、そして科学的に、さらに政治的に検証してみたいと思います。合わせて来年のサミットを前にして、私たちNGOが何ができるのかについても考えてみたいと思います。
では先ず気候変動問題を科学的に検証してみましょう。とりわけ私たちの社会はどの程度気候変動の影響を受け入れられるものなのかについて考えてみたいと思います。IPCCは気候変動の打撃、影響についてどの程度受容できるものなのか検討しました。そして平均気温が2℃以上高くなると、レッドゾーンに突入すると警告しています。レッドゾーンは、食料の安全保障が脅かされ、北極海の氷が溶融し、あるいは異常気象が頻発するなどの大変大きな影響が出ることを意味します。
同時に一度レッドゾーンに突入すると、CO2の排出を抑制するためにはますますコストがかかるようになります。余りにもコストが高すぎて、ほとんど実施不可能になる可能性があります。つまり環境的な影響についてと、温暖化対策についての両者に関してレッドゾーンが存在するわけです。そのラインを超えてしまえば取り返しがつかなくなる閾値があるわけです。ですから私たちは、温室効果ガスの排出量を抑制してレッドゾーンに突入しないように歩んでいかなくてはなりません。
しかし国連気候変動枠組み条約事務局が発表している最新の排出量データによれば、日本、カナダ、ノルウェー、ニュージーランドなど軒並み排出量は増えています。排出量削減に成功しているのはEUのみです。レッドゾーンに突入しないためには、想像以上に時間がありません。排出量については2010年、遅くとも2015年をピークとし、それ以降は急激に削減し続けなくてはなりません。先進国については2050年までに60%、極端な場合には80%程度削減しなければならないのです。もちろん先進国だけでなく、途上国も2020年頃から削減しないとレッドゾーンに突入します。
<京都議定書を引き継ぐ新しい国際条約を>
今年3月のEU首脳会議では、レッドゾーンに突入しないために地球の平均気温上昇を毎年2%以下に抑制する目標を確認しています。EUは温室効果ガスを2020年までに1990年比で20%削減すると宣言しており、他の国々がこの目標に同調すれば30%削減を目指すとしています。
合わせて2020年までに、全エネルギー消費のうち2割を新規の再生可能なエネルギーが占めるようにし、エネルギー効率を20%引き上げると発表しています。さらに2015年までにCO2を固定化するためのデモンストレーション・プラントを12基建設する予定です。
一方アメリカのブッシュ政権は、気候変動対策のための取組みに現在も反対し続けています。彼は就任以来7年間、その姿勢を変えていません。ただし、大統領選挙において民主党の候補者はすべて気候変動について相当強い姿勢を打ち出しています。
例えばヒラリー・クリントン候補は2050年までに、1990年比で80%排出量を削減すると公約し、そのためにキャップ・アンド・トレードを即刻導入すると述べています。アメリカ上院でも、リーバーマン、ワーナー両上院議員により温室効果ガスを削減する法案が提出されたばかりです。
カリフォルニアをはじめ各州も削減へ向けて動き出していますし、600名の市長も京都議定書に記されている数値目標を達成すると発表しています。やっとアメリカでも国際公約実現へ向けて建設的な動きが出てきており、2009年1月に新大統領が就任して以降は、様々な行動計画が積極的に実施されていくと期待しています。
アメリカに並ぶ排出大国である中国は、経済成長率とエネルギー消費が連動しないよう国家的に極めて高いエネルギー効率を目標に掲げています。再生可能なエネルギーについても注目しています。国家指導部は、エネルギー安全保障や気候変動リスクについての意識や方向性をこの1年で大きく変えました。ただしその実施については数多くのチャレンジが求められると言わざるを得ません。
グローバルに見た場合、私たちは気候変動およびエネルギーについての新しい国際的な条約が結ばれる入口に立っています。新しい条約は以前と比べより幅の広い、深いものになると思います。そこでは様々なジレンマ、そして多様さを共有しなければなりません。貿易協定とは違い、ギブ・アンド・テイクではないからです。
しかし、そこには新たなチャンスがあるはずです。気候変動問題に解決策を提供する新たな産業も生まれてくるはずです。あらゆる資力と技術が投入されなければなりません。私はバリ会議がそのきっかけになればと願っています。
<世界中が議長国日本に注目している>
2012年以降、京都議定書以上に意欲的な協定が必要です。さらに意欲的な拘束力のある目標値が各国に与えられなければなりません。途上国に対しても、エネルギー消費や森林伐採についてステップ・バイ・ステップで拘束力のある対策を課す必要があります。
京都議定書で制定された以上に、カーボン・マーケットは拡大すると思います。いったんカーボンに価格がつけば、ローカーボンな技術開発が促進されます。さらにそれらの技術の移転なども促進する必要性があります。それにより過去10年間たどってきた排出量の増大曲線をなんとか押さえ込む、それを下向きにさせる努力が必要です。
貿易と投資の流れも切り替えなくてはなりません。現在石炭、石油などカーボン集約的な投資および貿易は極めて活発です。しかしローカーボン技術が他の技術や商品と競合できるマーケットを作り上げていく必要性があります。
さらに気候変動に最も影響を受ける、最も脆弱な最貧国に対する支援体制を強化しなければいけません。現在のところこれらの国への協力や支援はほとんど行われていません。
バリは、これらの交渉のためのスタートラインです。そして来年のG8で何が期待されているのかをお話ししたいと思います。来年は日本が議長国です。本年のG8では気候変動が主要議題となりました。ドイツのメルケル首相とブッシュ大統領は白熱の議論をし、各国からアメリカへ相当プレッシャーがかけられました。EU、日本、カナダは2050年までにグローバルな排出量を50%削減すると主張し、これを受けてロシアとアメリカは検討することになりました。
2012年以降の国際的な条約は、国連の枠組み条約下に置くと合意され、その交渉期限は2009年になりました。ですから私たちは、ブッシュ政権がこの合意から目をそらさないように促す必要があります。特に来年洞爺湖でG8が開催されている最中、ブッシュ大統領はアメリカで国際会議を開催する計画を進めています。
こうした動きに惑わされることなく、2008年のG8でも気候変動は主要議題であり続けなければいけません。日本は逃げるわけにはいかないのです。日本は気候変動にどれだけ真剣な姿勢で取り組むのかを示す必要があります。ドイツは今年の議長国として、2020年までに1990年比で40%削減を発表しました。日本も議長国としてのリーダーシップを発揮するのであれば同様に、あるいはそれ以上に意欲的な削減目標を発表する必要があります。
その上で2008年のG8に期待したいことは、まず第1にローカーボン技術を適応させていくための資金調達です。また世界共通の自動車の燃費目標値や発電におけるゼロエミッションなど、各国がローカーボン社会にコミットメントすることが必要です。
私は日本の首相が来春、劇的な排出量削減目標を発表すると共に、即刻キャップ・アンド・トレードを導入することを期待します。日本が2050年までに、あるいは2020年までにどこまで排出量を削減するのか、首相が具体的に発言していただけたらと思います。
みんなが日本に注目しています。
(文責 編集部)
