また繰り返された米兵少女暴行事件 それでもまだ沖縄に基地を押し付けるのか
米兵による少女暴行事件で、沖縄県民は島ぐるみで怒っている。米海兵隊の2等軍曹が女子中学生を襲ったのだ。95年に起きた3名の海兵隊員による女子小学生への暴行事件。8万5000人の県民が抗議し米軍は綱紀粛正の徹底を約束したが、またも同様の事件が繰り返された。
実は95年以降も米兵による性犯罪は相次いでいる。最近だけでも2002年海兵隊少佐が暴行未遂、04年米軍属による暴行、05年空軍兵による小学生への強制わいせつ、07年米軍人子弟による暴行致傷が起きている。
今回は容疑者が基地外に住んでいたため、沖縄県警は緊急逮捕できた。しかし基地内に住んでいれば、日本側が身柄を確保できる保証はない。「日米地位協定」を盾に米軍は身柄引渡しを拒否できるからだ。
ゆえに通報を受けた県警は、容疑者が基地内に逃げ込むことを阻止するため各ゲートにパトカーを緊急配備した。過去には基地内に逃げ込んだ容疑者が、そのまま海外に逃亡した例もある。米軍は日本の国家主権など、完全に無視しているのだ。
にも関わらず町村信孝官房長官は2月12日午後の定例会見で今回の事件に触れ、「ただちに地位協定の改正に話がいくとは、過去の経験だけでいえばそういうことにはならない」とコメントした。沖縄県民がこれほど米兵の凶悪犯罪に苦しんでいるのを尻目に、政府としては何も実際的な手立てをしないと公言したのだ。
激しい怒りに包まれている沖縄では、仲井真弘多沖縄県知事が11日、「女性の人権を蹂躙する重大な犯罪であり、特に被害者が中学生であることを考えれば、決して許すことはできず、強い怒りを覚える」と語った。那覇市議会は12日、被害者らへの謝罪と基地縮小、日米地位協定の抜本的見直しなどを求める抗議決議を全会一致で可決。13日には事件の舞台となった沖縄市と北谷町の議会、14日には県議会も抗議決議を可決した。基地の矛盾のなかでの人権蹂躙に対して、保革に関わらず抗議の声が上がっている。人間の尊厳を問う問題である以上、当然のことだ。
沖縄には在日米軍の約7割に相当する米軍人約2万3000人(06年9月現在)が存在する。日本国土の0・6%にも満たない沖縄に、全国の米軍専用施設の約75%が集中し、県面積の1割を占有している。今回事件が起きた北谷町は、半分以上約54%を基地が占めているのだ。
95年の少女暴行事件に抗議した県民大会では、日米地位協定の早急な見直しや米軍基地の整理縮小を求める決議が満場一致で採択された。しかし日米両政府は、沖縄県民の切実な願いをいっこうに聞き入れようとしてこなかった。それこそ事件が再発した最大の原因だ。
この国の政府は、自国民の苦しみなどそっちのけでアメリカに従属している。2月10日に行われた山口県岩国市の市長選でもそれは明らかだ。前市長の井原勝介氏は米空母艦載機の移転計画に反対していたが、これに対し政府は新市庁舎建設への補助金や米軍再編交付金を凍結して「兵糧攻め」を行った。その結果今回の市長選では、移転容認を掲げた前自民党衆院議員の福田良彦氏が勝利した。
政府は大喜びだが、得票は福田氏47081票に対し井原氏45299票。わずか1782票、得票率51%と49%の差でしかない。しかも朝日新聞が投票日に行った出口調査では、移転反対は47%、賛成18%の3倍近くあった。福田氏に投票した人でも、移転に賛成と答えたのは30%にすぎない。
福田氏は選挙戦で、基地問題よりも市の財政問題や疲弊した地域経済の活性化策を重点的に取り上げ、基地の争点化を避けた。過酷な「兵糧攻め」で疲弊した岩国市民は、苦渋の選択をしたに過ぎない。ほとんどの人たちは基地強化など望んでいないのだ。
国民の切実な痛み、訴えに耳をかさずに「アメとムチ」を振り回し、地域に対立を持ち込み、地方自治を破壊している福田政権。沖縄や岩国をはじめ、基地を抱える地方自治体がどれほど反対の声をあげても、政府はサイレント・マジョリティを背景に当事者の声を押し潰す。まさに「多数者の圧政(ジョン・スチュアート・ミル)」がまかり通っている。
それを変えるには、たとえ少数でも声を上げ続けることが問われている。
