ガソリン税論議よりエコロジカル税制改革を 環境税で福祉や社会保障を充実させるEU諸国
現在開催中の通常国会は、「ガソリン国会」「道路国会」と呼ばれている。3月末で期限切れとなるガソリン税暫定税率を延長するか否かを巡り、与野党が激しい攻防を繰り広げているからだ。
当初与党は、現行の暫定税率を5月末まで2カ月延長する「つなぎ法案」を目論んでいた。野党が過半数を占める参議院で否決されても、憲法59条で定められた「60日ルール」により衆議院で再可決する。この時間稼ぎにより暫定税率をさらに10年延長する租税特措法改正案を成立させる狙いだった。
しかし民主党をはじめとする野党各党は、参議院の存在を無視した暴挙だと猛反発。結局与党は「つなぎ法案」を取り下げ、やっと本格的な予算審議が開始される。「ガソリン値下げ隊」を発足させ「道路利権VS国民生活」を掲げてきた民主党は、暫定税率延長に反対する構えを崩していない。
確かにこの税制は矛盾だらけだ。本来揮発油税法で定められたガソリン税(揮発油税+地方道路税)は1リットル当り28・7円。ところがオイル・ショック最中の1974年以降、53・8円も上乗せされてきた。当初は2年間だけの「暫定」措置のはずが35年近く続き、税収は「道路特定財源」として政官財の利権の温床となっている。
国土交通省は税率維持を前提に、今後10年間で59兆円もの金を投入して約4700キロの高規格道路を全国に建設する計画だ。しかしピーク・オイルを迎えた今世紀、原油の価格高騰はさらに加速し現在の2〜3倍になる日はそれほど遠くはない。ガソリンを湯水のように利用することを前提にしてきたモータリゼーションの時代は終わった。
しかも日本は急速に少子高齢化しており、景気減速も相まって国内の新車販売台数は年々減少している。さらに、若者の「クルマ離れ」も顕著だ。こんな状況にも関わらず道路建設に莫大な税金を投入し、その税収を確保するために暫定税率を維持しようなど、時代錯誤もはなはだしい。
とは言え、反対する民主党も選挙向けパフォーマンスばかりが先行している。暫定税率を廃止してガソリン価格が25円値下がりしたとしても、原油高騰の流れを止めることはできない。今こそ化石燃料に依存した経済や社会構造を変革するために、環境税(炭素税)を含めたエコロジカル税制改革こそ提起すべきだろう。
少なくとも暫定税率分は道路特定財源から外して一般財源に繰り込めば、税収は社会保障や福祉充実に活かすことができる。事実上の炭素税化により深刻化する地球温暖化問題に取り組むと同時に、格差を是正しセーフティネットを強化することが可能だ。多くのEU諸国は90年代にこうしたエコロジカル税制改革を行い、経済と環境、福祉を調和させながら持続可能な社会を展望している。
多くの日本国民も同様の政策を望んでいる。先頃毎日新聞は、CO2削減を定めた京都議定書を履行するために生活レベルを下げることができるか否かの全国世論調査を行った。49%が「できる」と答え「できない」の41%を上回り、環境税導入も47%が賛成し反対の42%を上回った。さらに政策的には「風力発電や太陽光発電に補助金を出す」(41%)が最も期待され、温暖化防止を名目に原発を増設することには、賛成39%を上回る50%が反対した。
既得権益の保持に汲々とする与党や、国会内での政争ばかりに走る野党は、こうした広範な国民の声にこそ耳を傾けるべきだろう。一国の予算は、その国のビジョンを体現するはずだ。
