安いものには理由がある
   
 食品企業のモラル・責任が問われる事件が相次いでいる。「ミートホープ」や「船場吉兆」、「白い恋人」や「赤福」など毎日のように報道されて呆れる限りだ。

 いずれの企業も虚偽情報を記載した食品を消費者に売りつけていた。しかし問題は、食品表示の偽装だけなのか。そもそも私たちは本当に安全なものを食べているのだろうか。

 例えばコンビニやスーパーで売っている加工食品のラベルを見てみよう。賞味期限や原料の他に、多くの食品添加物がびっしりと書き込まれている。添加物の入ってない物はほとんどない。なぜこんなに添加物を使わなければいけないのか。

 本書は食品添加物にからめて食品製造の舞台裏を暴露するショッキングな内容だ。著者の安部司は、食品添加物商社に勤めていた元トップセールスマン。会社を辞めたきっかけは、自分の開発した「ミートボール」を愛娘が食べたことだ。それはくず肉を20〜30種類の添加物で加工したものだった。

 材料は牛の骨から削り取った「端肉」。そのドロドロのくず肉に、廃鶏のミンチ肉を加えて増量し、「組織状大豆たんぱく」を加える。「ビーフエキス」「化学調味料」で味つけして、食べやすくするために「ラード」や「加工でんぷん」を入れる。さらに機械で大量生産しやすいように「結着剤」「乳化剤」を添加。見栄えをよくするために「着色料」、日持ちをよくするために「保存料」「ph調整剤」、色あせ防止に「酸化防止剤」を使用。

 さらにミートボールにからめるソースは、まず氷酢酸を薄めてカラメルで黒く着色。それに「化学調味料」をプラス。ケチャップはトマトペーストに「着色料」で色づけし「酸味料」を加え「増粘多糖類」でとろみをつける。

 恐るべき添加物の量だが、こうした例は加工食品だけではない。今や調味料も添加物でつくられる時代なのだ。一番身近な例はスーパーで特売される1リットル200円の「醤油」。本物の醤油ならば原料は丸大豆・小麦・食塩だが、ニセモノ「醤油」の原料は、脱脂加工大豆・アミノ酸液・ブドウ糖果糖液糖・グルタミン酸ナトリウムなどの添加物だ。これらが「新式醸造しょうゆ」と称して売られており、他にもみりん・塩・砂糖・酢などでも「ニセモノ」がはびこっている。

 筆者は、このように大量の添加物を一度に摂取することに警鐘を鳴らす。毒性テストは単品使用の場合のみで、複合摂取のリスクは不明だ。

 添加物が少ししか表示されていなくても、安心はできない。巧妙なごまかし、抜け穴があるからだ。例えば「ph調整剤」は1種類ではなく、実際は「クエン酸ナトリウム」「酢酸ナトリウム」など何種類もの添加物の総称だが、「一括表示」で「ph調整剤」としか記されない。添加物の表示が3種類ぐらいでも、実際はその何倍もの添加物が使用されているわけだ。

 さらに原材料からもちこされる添加物(キャリーオーバー)は「表示免除」されている。例えば焼き肉のたれの場合、先ほどのニセモノ醤油も「しょうゆ」と表示されるだけ。コーヒーフレッシュのような容器の小さいもの、あるいはバラ売りのものも表示が免除される。ラベルだけでは何が含まれているか分からない仕組みになっているのだ。

 こうした現実を踏まえた上で、著者は企業だけでなく、消費者の側の問題も指摘する。多くの消費者が安さと見た目と手軽さを求めた結果、添加物の入った食品が市場を席巻したのだ。

 かく言う私も以前は出来合いのものばかり買っていた。しかしこの本を読み、素材となる野菜や肉、魚を買って調理することが多くなった。夏場ならキュウリやナスなど新鮮な旬の野菜が安く手にはいる。手間がかかるぬか漬けは無理でも、塩でもむだけでスーパーで売っている漬け物よりも断然美味しい。

 自分で料理すると、食材の産地も気になる。地元で手に入るのに、わざわざ北海道や九州産の野菜を買う必要はない。私の住む練馬には農家が多く、近所の直売所でとれたての野菜を買って料理すると格別だ。

 すべて無添加にするのは無理だが、食生活を見直して少しでも添加物のないものを選ぶことは可能だ。本書は消費者の意識を変える良いきっかけになると思う。

            (岩本洋)

(1257号 2007年12月10日発行)

『食品の裏側』