多くの住民が核開発の犠牲となっている 

 インドのジャドゥゴダ鉱山周辺では、長年のウラン採掘による放射能汚染で、住民に深刻な健康障害が出ている。
 8月6日、広島で開かれた「第4回NO DU(劣化ウラン兵器禁止)交流集会」(報告は4面)において、インド・セントラル大学のテジャスウィニ・マダブシさんが現地の反ウラン鉱山開発運動について語った。    (文責・編集部) 

 


テジャスウィニ・マダブシさん
 

 JOAR(ジャルカンディ反ウラン団体)は、インド・ジャルカンディ州で放射能反対運動をしている組織です。

 ジャルカンディ州のジャドゥゴダはインド最初のウラン鉱山で40年操業しています。もともとこの地方はサンタル族やホー族などアディヴァシ人(先住民族の人達)の居住地でしたが、彼等の耕作地はインド・ウラニウム公社(UCIL)に没収されました。土地と交換に住居と仕事がもらえる約束でしたが、その約束は十分に果たされていません。

 鉱山の操業後、奇病がこの地域で急増していることがわかりました。流産や不妊、精神的・身体的発達障害の症例が多く発生しました。とくに子どもや中高年の死亡率が上昇しました。最初、住民はなぜ家族が突然死したのか理由がわからず戸惑っていました。次第に人々はウラン鉱山や廃棄物・鉱滓池に疑いの目を向けるようになりました。

 一方、農民たちはUCILに取られた土地は勿論、自分の土地も完全に耕作不能になりました。人々は直接・間接にUCILに依存せざるを得なくなってしまったのです。

<住民は立ち上がったが>

 このような状況のもとで数人のジャドゥゴダ住民が立ち上がって、JOARを結成しました。しかしJOARの運動は、州当局やUCIL、また時としてUCILに生活手段を頼る同じ村の住人たちと対立するものでした。

 彼らは情報を集め、それを全ての人々に広めました。同時にUCILの説明・結果責任を追及しつづけました。継続的闘争の結果、鉱山の安全対策は改善しました。今日では教育を受けていない平均的な女性でも放射能の簡単な意味や放射能が与える健康や環境への影響を知っています。

 近年、独立組織・アニュムクティ(Anumukhti)が、ジャドゥゴダ地域の科学的な健康実態調査を行い、放射能の影響を受けていない類似の地域と比較研究をしました。その結果、すでに栄養失調状態の住民は放射能による病気の発症率が高いことが判明しました。がん、慢性肺疾患、結核、中絶、不妊、様々な障害がみつかりました。

 今年6月にはIDPD(Indian Doctors For Peace And Development ・平和と発展をめざすインド医師連盟)が調査を行いました。また、京都大学の先生による放射能研究も行われ、私たちの運動に科学的裏付けを与えてくれています。私たちはこのような研究がもっと行われることを願っています。また皆様からのより多くの援助を必要としています。

 放射能や環境、健康問題は経済的・社会的問題にもなっています。すでに述べたように、農業が大規模に破壊されました。人々は医者に診てもらうお金も薬を買うお金も、飲み水を買うお金もありません。家族や自分が今後働いてくらしをたてる見通しも立たないのです。この悪循環で人々の借金はかさみ、子どもたちはごく小さいときから学校をやめて低賃金の仕事を余儀なくされます。

 また、この地域の少女たちは「なかなか結婚ができない」と話していました。彼女らは不妊症で結婚生活ができるほど丈夫でないと差別されているからなのです。

 もうひとつ例をあげましょう。サントシュ・パトロという老人は脚にできものができ、それが細菌に感染していました。ガンの疑いがありましたが、彼自身は自分の苦痛の原因がわかりませんでした。同じUCILで日雇い労働をしていた妻は急死しています。

 医者はちゃんと彼の病気の診断をせず説明しないままでした。そのうち村人達が伝染病だと思って、彼を村から追い出してしまったのです。彼には子どもがおらず、人の住まない空き地に3ヶ月間暮らしました。JOARは彼の住処を捜し、松葉杖も用意しました。

 これは決して特殊な事例ではありません。彼の妻の死や子どもが生まれなかったことは放射能に原因があると考えられます。

<核のないインドを目指して>

 彼への村人たちの仕打ちや無理解は、UCILが雇用者への福祉を無視したことによって悪化しました。

 現在UCILは新しくウラン採掘を行おうと、アンドラ・プラデシュ州、カルナタカ州、メガラヤ州などの地方に勢力拡大をはかっています。地元ではMAUP(反ウラン・プロジェクト)やKSU(カシ学生連合)などの市民による反対運動が起こっています。

 ジャデュゴダと同様の事態が起こらないようにするのは我々みんなの責任です。我が国では核科学者たちは国民的英雄になり、核関連の学問は難解で知的な分野だと重んじられています。しかし今や裏面を知るべき時です。市民による反対運動がウランと核のないインドという目標に達することを確信しています。

 米国などの発展した国々がエネルギー需要を抑制しない今、インドやパキスタンなどの途上国は選択肢がなく、グローバル化した世界で生き残るために核大国の野望をもたざるをえません。インド・米国の核協約はその一例です。しかし、核大国化の野望に反対するのは我々の義務です。

 インド・パキスタンの関係は困難な時を経てきましたが、今や友好関係は進展しました。私たち若者は、我が国の安全保障が核兵器で他国を脅すことによってではなく、我々のうちなる敵対関係をなくすときに実現すると考えます。平和は私たちの権利であり、私たちはこの権利を確保しなければなりません。

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ドキュメンタリー映画『ブッダの嘆き』(1999年 インド)                       ブッダは涙をこぼしている

 ジャドゥゴダ鉱山のウラン公害を告発したのがスリプラカッシュ監督の『ブッダの嘆き』だ。2000年3月に日本で開催された第8回地球環境映像祭では大賞を受賞、NHK衛星でも放映された。

 映画は最初、ジャドゥゴダ地域の先住民族の祭りを映し出す。書き記された歴史を持たない彼等は、踊りや歌で苦難の歴史を語り継いできた。そうした村人の土地をウラン公社は接収し、ウラン鉱の採掘を開始した。

 ウラン公社は、テーリングダム(鉱滓池)に、どす黒い放射能を帯びた廃液を流し込む。洪水になればテーリングダムからの汚染水が、水浴や洗濯など生活に使う川へと流れる。乾期になれば細かい粒子の鉱滓が砂嵐となって村を襲う。水も土も空気も放射能で汚染されるのだ。

 精錬され製品となったイエローケーキ(ウラン精鉱)はラカ鉱山駅から運び出される。しかしその輸送用ドラム缶は腐食し、液体が漏れだし、あたりにイエローケーキが散乱している。労働者は皆、素手と裸足だ。

 ウラン鉱山で働いていた住民は、放射能の危険性を一切知らされることなく、防護服もマスクもない状態で採掘作業を行ってきた。村人の多くは皮膚ガンの前段階と考えられる皮膚病を患い、ガンや白血病も多い。  州環境委員は「住民たちの健康障害は放射線の影響だ」と訴え、ある科学者はUCILの杜撰な管理について「犯罪的行為だ」と憤る。

 しかしUCILの職員は「何の問題もない」と一切耳を貸そうとはしない。そればかりか、新しいテーリングダム建設の為、州政府と軍警察の力を借りて、何の通達もなく村人の家をブルトーザーで破壊してしまった。

 映画は生存権を求めて立ち上がり、抗議行動を開始する住民たちを映し出す。オレンジ色のはちまきをした村人は太鼓を叩き、水と森を返せとデモを行う。何人もが警官に殴打され、逮捕されたが、なんとかUCILに対し森周辺地の獲得を断念させた。しかし根本的な問題は解決していない。

 ジャルカンディ反放射能同盟のガンシャム・ビルリは「ウラン採掘が停止されるまでたたかいは続く」と語り、奇形の子どもや病いに倒れる人をみて、「この地で生まれた、我々のご先祖さまであるブッダは涙をこぼしていなさるだろう」と訴えた。

(1251号 2007年9月10日発行)