私はここ数年市民サークルの仲間と共に、大阪府能勢町であいがも農業に取り組んできた。

 大阪近郊に住む私たちにとって、能勢町までは車で1時間ほどかかる。とても毎日通える距離ではない。月1〜2回、週末に行くのが精一杯だ。

 身近な場所でも農業に取り組みたいと議論になり、私たちは今年初め皆で地元の市民農園に応募することに決めた。誰かが抽選に当たったら、その場所で自然農法に挑戦する計画だ。

 皆で決めたことなので仕方なく私も応募したが、実は当たらないで欲しいと心から祈っていた。結局全員が抽選に外れ、私は胸を撫で下ろした。

<市民農園の抽選に当たった>

 ところが数日後、私の元に市役所から電話があった。「抽選で当たったのに権利を放棄した人がいるので畑が余っている。ぜひ畑を借りていただけませんか?」。

 早速仲間に相談した。「やっぱり借りなきゃ駄目かな?」と躊躇する私に対し、誰もが「ぜひ借りて欲しい」と言う。私は渋々市役所に行き、借地代1万円を支払って申し込み手続きを終えた。かくしてこの4月から家庭菜園に取り組む羽目になった。

 しかし4月には国家試験の受験があり、それ以外にも様々なイベントが目白押しでとても畑に行くどころではなかった。その結果何も植えていない私の畑は、周囲の畑を借りている人たちに1ヶ月間踏みつけられ土が硬くなった。周囲の畑は柵で囲われ、既に5月にはそれなりに作物が育っていたのに、私の畑は草も生えず荒れ野状態が続いたのである。

 ようやく畑に着手したのは5月のゴールデンウィークだ。その日、他の市民サークルの仲間たちは能勢町であいがも農法の田んぼ作業に参加していた。一人残った私は、荒れ野状態の硬い畑の土を深さ20センチほど掘り返した。

 午後になって能勢から帰ってくる仲間に「腐葉土を買ってきて欲しい」と頼み、掘り返した土に鋤き込む。ナス、トマト、キュウリの苗とサラダ水菜の種も買ってきてもらい、さらに仲間からはつか大根と枝豆の種(大豆)をもらって撒いた。囲いも作って荒れ野はあっと言う間に畑らしくなり、周囲の畑の人たちは驚いていた。

 とはいえ不精な私は、3日に1度雨が降らない日に水をやるだけでそれ以外の手入れは何もしなかった。そのためはつか大根とサラダ水菜は芽が出たものの、瞬く間に虫たちの餌食になってしまった。

<野菜は食べられる雑草だ>

 6月上旬、虫にやられたはつか大根とサラダ水菜の場所にオクラを植えた。さらにピーマンとレイシを追加。この頃から雨が降らない日は必ず水をやるようにした。それでも梅雨に入って雨の日は多く、あまり手間はかからなくなった。

 たっぷりの水と夏の太陽のなか、畑の作物は元気良く育っていく。6月半ばにはキュウリやトマトが実り始め、下旬にはナスが実った。しかしナスは虫食い状態のものが多く気になっていた。

 ある日、小雨のなか畑に行き、実っているナスをもごうと手を伸ばすと、何か柔らかいものに触れた。ナメクジだった。ナスの虫食いの原因はナメクジだったのだ。小さいナスが食われると、たとえ小さな傷でもその先は栄養が行き届かずに硬くなってしまう。これには本当に困った。

 対策を思案しているなか、ある日ナメクジの巣を発見した。畑の回りに柵を作った際に余った廃材の中に巣食っていたのだ。蒔いた水や雨がたまり湿った場所ができ、そこにナメクジが大量発生していた。それまで寝転がっていた廃材を立てかけて水がたまらないようにしたら、ナメクジの被害は急に少なくなった。

 そうこうしているうちに7月になり、伸びが遅いオクラも下旬には60〜70センチになり、花が咲き実を結んでいる。レイシも食べられるようになった。夏場はナス、キュウリは毎週3本くらい、トマトは10個ほど採れる。仲間と一緒に収穫し、おすそ分けする。8月に入りナスがあまり採れなくなった。実が割れるようになったので秋ナスの準備に切り替えた。枝葉を大胆に切り落とす。そこから新芽が出て、秋には再びナスがなるそうだ。

雑草のなかで育つゴーヤ

 当初の計画通り、私の畑は自然農法を目指している。農薬は使わないし、雑草も生えたままに放置しておく。そのため畑はまるで草むら状態だ。その草をかき分けると野菜が生えている。雑草と野菜の共存だ。

 最初はとてもシュールに見えたが、「野菜は食べられる雑草」と割り切ってしまうと自然な光景に見えてくる。何より雑草のなかでたくましく育つ野菜は美味しい。サークルのミーティングの際、ビールのつまみにした採れたての枝豆は本当にうまかった。

<自然農法はなかなかいい>

 草むら状態に放置された私の畑だが、さすがに周りの畑を借りている人たちは草を刈って欲しいと頼みにくる。しかし、『SENKI』1197号(2005年12月5日発行)で自然流家庭菜園に取り組む徳野雅仁さんは次のように語っている。

 「『野菜がよく病気になるのですが、どうしたらいいでしょうか』と相談されることがありますが、そんな時『草をちょっと生やしてください』とアドバイスします。そうすると『病気がなくなりました』とみんな驚かれます」

 なぜ雑草を生やしたほうがいいのか? 徳野さんは二つ理由を挙げている。一つは作物は土壌伝染性の病気になりがちだが、雑草があると雨が降っても土砂が飛び散らずに感染しにくくなること。二つ目は雑草を生やすことで自然に土が耕され、微生物豊かな土壌になるから作物も病気になりにくくなること。

 実際に私の畑の土は肥え、ミミズも生息している。本当は雑草を刈らないほうが良いと思うのだが、周囲の人の声をまったく無視するわけにもいかないから、私はとりあえず雑草の根を残し、見えている部分だけ刈るようにしている。

 今年の春、期せずして市民農園の抽選に当った時には、畑仕事は時間の無駄だと思っていた。しかし最近は、そんなに手間もかからず安全で新鮮な野菜が手に入る自然農法ならまんざらでもないかなと感じている。

 むしろ野菜の様子を気遣い畑に水をやる時間は、日頃の職場のストレスを忘れていいものだ。実は毎日のようにブログに野菜の様子をUPすることが、私の何よりの楽しみになっているぐらいなのだ。

 セキスイハイムの太陽光発電機付き住宅のコマーシャルは、「自分たちの消費するものは自分たちが育てる」がキャッチコピーだ。これは私の畑にこそピッタリくる言葉だと思う。

 市民農園は1年契約で、最長2年まで更新できる。来年も借りてみようかなと思っている今日この頃だ。

  山咲唯一 (40代 プログラマー)

(1250号 2007年8月25日発行)