<小出裕章さんが森の中のステージで講演>

 人出がピークに達した午前11時、いよいよ小出裕章さんの講演だ。ステージ前には続々と人が集まり、配布された資料を手に木陰を選んで座る。

 
小出裕章さん講演1

 小出さんは冒頭、「昨日私がバスに揺られてきた高尾駅から今私が座っているステージまでは、おそらく5キロ弱だと思います。地球の46億年の歴史をこの距離に当てはめると、人類が生まれた400万年前はどの辺りだと思いますか?」と会場に質問を投げかける。

 「キャンプ場の入口の辺りですね」との回答を受け、「そうですね。私の位置が現在だとすると、人類が生まれたのはわずか4メートル先でしかありません。そして人類がエネルギーを大量に使うようになった産業革命から現在まではわずか200年。私の唇の先ほんの0・2ミリです。ところがこのほんの一瞬の期間に、人類はそれ以前の400万年のなかで消費したエネルギーの倍以上を使ってしまいました」と語る小出さん。

小出裕章さん講演2

 小出さんの分かり易い語り口に、参加者はあっと言う間に引き込まれていく。「人類が膨大なエネルギーを消費したため、地球の生命環境は激変し、厖大な生物種が絶滅に追い込まれています。しかし、『人類』のすべてに罪があるわけではありません。この地球には現在65億の人々が生きていますが、全人口のわずか4分の1を占めるいわゆる『先進国』の人々が世界のエネルギー消費の7割以上を占めています。残りの4分の3、つまり約50億人の人々は平均以下のエネルギーしか使えず、11億人の人々は『絶対的な貧困』に喘いでいます」。

 「すでに日本には55基もの原子力発電所が動いています。原子力は私たちが豊かに生きるために必要だと言われます。しかし、既に私たちは生命環境を破壊するほどにエネルギーを使いすぎているのです。日本ではすでに1人当たり平均で12万キロカロリーものエネルギーを使っています」

 小出さんはおだやかに、ゆっくりと語り続ける。木漏れ日のなか、葉が風に揺れ、ヒグラシが鳴いている。「私たちが幸せに生きるために果たしてこれ以上のエネルギーが必要でしょうか?」との問いかけが参加者の心に染みていく。話の合間には、友人のシンガー姫野洋三さんの「若狭の海」、そしてジョン・レノンの「イマジン」が流された。

小出裕章さん講演3

 小出さんは、 宮澤賢治の次の言葉を紹介した。「世界がぜんたい幸福にならないうちは 個人の幸福はありえない」、「個性の優れる方面に於て、各々止むなき表現をなせ」。

 そして最後に、「私はなんとか原発を止めるために、自分が持っている力を出し尽くします。みなさんも、それぞれが取り組んでいる場所で、それぞれの力を発揮してください」と提起。質疑応答を含め、講演会は予定を超えて2時間に及んだ。(小出さんの講演の詳細は、Actio1252号に掲載する予定です)

(続く)   (前の記事へ)