課題山積のG8を民衆の力で動かせるか 

6月30日中央大学駿河台記念館で「2008年G8サミットNGOフォーラム」主催のドイツ(ハイリゲンダム)サミット報告会が行われた。この報告会でスピーチした「環境と開発に関するドイツNGOフォーラム」代表のユルゲン・マイヤー氏による現地報告を紹介する。同氏はG8への提言活動の中心を担った活動家だ。                                                                                  (文責・編集部) 

ユルゲン・マイヤー氏

NGOはG8に市民の声を反映させる

 歴史的に振り返ると、第1回サミットは1975年フランスのランブイエで開かれました。73年のオイルショックがきっかけで開催されたのです。

 この会議では、輸入エネルギーに頼らず依存度を減らすことが決議されました。同時に省エネルギー対策を実施し、再生可能エネルギーを開発することが大きな目標として掲げられました。

 そもそもサミットは、エネルギー問題をきっかけに始まったわけです。一度だけですが、再生可能なエネルギーを実現するための産業特別部会が設置されたこともあります。

 ところが2001年のサミットに参加した米ブッシュ大統領は、再生可能エネルギーについては議論したいくないと主張し、それまでの合意は反故になってしまいました。

 気候変動の問題、アフリカの貧困に関する問題などが議論されるようになったのは、2005年イギリスのグレンイーグルズ・サミットからです。

 ただアフリカの貧困問題に関しては、未だ十分な論議が行われていません。2005年のサミットでは、アフリカへのODA(政府開発援助)を2010年までに250億ドル増額することが約束されました。しかし、実際のスケジュールは発表されていません。残念ながらG8の歴史は、決められた約束が果たされなかった歴史でもあります。

 こうした現状を打開するために、昨年ロシアで開催されたサミットから市民参加のG8が発足しました。政府と市民団体、NGOの三者が協力して会議を開きます。

 この会議には、各国の首脳が指名した準備担当官が政府を代表して参加します。官僚から選ばれたこの人たちは、シェルパと呼ばれています。シェルパとは本来登山家が山の頂上(サミット)にたどりつくための案内人ですが、国際政治の舞台ではG8サミットの準備をする人たちを意味します。

 シェルパの存在は一般の人々にはあまり知られていませんが、大変重要な役割を担っています。ハイリゲンダムでは14人のシェルパが活躍しました。G8にプラスしてEUからオブザーバー参加があり、さらにブラジル、南アフリカ、中国、インド、メキシコも参加したからです。

 今回のサミットでは、本会議を前に世界各国から20名のNGO代表がドイツのメルケル首相と会談しました。私たちがコーディネートしたのですが、世界中から20名のNGO代表を選ぶのはとても困難な作業でした。100人以上の人がメルケル首相との会談を望んでいたからです。

 私たちは他にもさまざまな活動を行いました。例えばNGO独自でロビー活動を行ったり、省庁で官僚との話し合いを持ちました。NGOの主張をまとめたジョイントペーパーも用意しました。NGO側の意見を分かり易く伝えるために、一つのメッセージにまとめる必要があったからです。

 参加したNGOは多岐に渡るテーマや要求を掲げているので、まとめるのは大変な作業でした。そこで今回は、サミットの議題に絞って提言をまとめました。

多様な立場のNGOの協力が必要

 NGOのなかには大きなデモを企画する人たちもいます。それは大切な運動ですが、ただし車を燃やしたり破壊活動を行うのは行き過ぎです。

 今回はNGO同士が反発せず、お互いに協力し合うことが大きな課題でした。立場や意見の違いを巡ってNGO間で激しく批判し合うことはよくあるからです。

 大切なことは、市民社会の利益になることは何かを問い続けることです。その基本的立場を確認しあいながら様々な意見をコーディネートし、対立が起きた場合には仲裁するのが私たちの主な役割でした。

 私たちはデモも大切な表現手段だと考えています。勿論、どれほど進歩的な官僚でも、彼らにデモに参加してくれとまでは言いません。ただデモが人々の関心を呼び起こす大きな意味を持っていることを理解してもらいたいのです。

 また反グローバリズムを掲げるNGOに対しては、あなた達の敵を見誤ってはならないとメッセージを発しました。彼らの敵はNGOグループではないし、進歩的な官僚でもありません。反グローバリズムを掲げる人々の本当の敵は、化石燃料を扱っている企業やアフリカの貧困に一銭も出そうとしない国々なのです。

 今回ドイツでは、オルタナティブ・サミット(もう一つのサミット)も開催されました。オルタナティブ・サミットでは、G8で議題となった気候変動やアフリカ、貿易や債務の問題が議論されました。G8では論議されていない生物多様性の問題も取り上げられました。これは次のサミットで必ず議題となるテーマだと思います。

 今後国際的なレベルでのNGO相互の協力はますます必要です。貧困や気候変動など、様々なテーマに取り組んでいるNGOの連携も求められます。さらに私たちは、社会運動とNGOがリンクすることが重要だと考えています。様々なNGOと社会運動体が役割分担し、運動の多様性を追求していくことが大切です。

 ハイリゲンダム・サミットでは、様々な点で成果をかちとりました。メルケル首相も各国から支持されましたが、NGOの側もロビー活動で成功をおさめました。また様々な市民運動をしている仲間も、それぞれの活動を通して成果を得ています。

 不十分な点は、アフリカやエイズ問題に関して何ら具体的な成果が得られなかったことです。話し合いはたくさん行われましたが、現実的な結論が出ませんでした。気候変動に関しても進展は見られたのですが、実のある結果があまり得られませんでした。

 エイズや様々な疾病に関する基金は、合計600億ドル拠出されるはずですが、実際にはそれよりだいぶ少なくなるのではないでしょうか。私たちの計算では、300億ドルほど不足すると推測しています。

 国連の気候変動に関する枠組み会議は、ブッシュ大統領が反対していることもあり2005年のグレンイーグルズ以降進展がありません。サミットで約束されたことが果たされていないのです。

 こうしたなか2008年日本で開催されるサミットは大きなチャンスです。洞爺湖サミットに市民の声を反映させるために、多くのNGOや市民団体がコミットする必要があります。

 日本のNGOが国際的に重要な役割を担うチャンスでもあります。ぜひ協力していきましょう。

PROFILE▼ユルゲン・マイヤー
環境と開発に関するドイツNGOフォーラム代表。ドイツ緑の党創立メンバーで国際事務局など党内の役職を歴任。1993年よりドイツ・アジア財団代表。1996年より現職。1963年生まれ。44歳。

(1248号 2007年7月25日発行)