地震大国の原発はロシアン・ルーレットと同じ

                         山風 征路

ガタガタになった柏崎刈羽原発は廃炉しかない

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 7月16日午前10時13分、新潟県中越沖地震が発生した。

 マグニチュード6・8の巨大地震を生み出した活断層は、東京電力柏崎刈羽原発の直近を走っていた。そのため原発は、設計時の耐震基準を最大6・8倍も上回る揺れに襲われた。

 幸いなことに7機の原発の内3機は定期点検で停止中だった。稼働中の4機の原発はなんとか緊急停止し、最悪の事態は免れた。しかし変圧器では火災が発生し、大気中や海に放射能が漏れ出した。

 東電は未だ原子炉圧力容器など核心部分の被害状況を明らかにしていないが、一歩間違えばチェルノブイリ原発事故と同様の深刻な原発震災だったのだ。設計時の想定を上回る地震の直撃を受けてガタガタになった柏崎刈羽原発は、二度と運転すべきではない。

<1日も早くIAEA調査を>

 地震直後に変圧器から出火し、2時間近く黒煙を上げ続けた刈羽原発3号機。この模様はテレビ映像を通じて全世界に衝撃を与えた。

 トラブル隠しと同様、今回の東電の対応も後手後手に回り、情報公開は遅れている。ワシントン・ポスト紙は、「専門家は東電の説明を受け入れることに慎重だ。日本の原発業界はトラブルを隠蔽してきた歴史がある」と批判。さらにイギリスの科学誌ネイチャーは7月17日付の電子版で、「今後の安全評価報告の結論次第では、(柏崎刈羽の)7基の原発が閉鎖される可能性がある」と報じた。
 
 世界各国の関心が高まるなか、国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は地震から2日後、「実際に原子炉が損傷したかどうかにかかわらず、日本は原子炉の構造、システム、構成部品について全面的な調査を行い、今後の教訓とする必要がある」と語り、IAEAが調査に乗り出す用意があると明らかにした。

 ところが日本政府と東電は、IAEAの調査受入れを保留し続けたのだ。これに業を煮やした新潟県の泉田裕彦知事は、調査受入れを政府に要請。7月22日になってようやく経済産業省原子力安全・保安院は受入れを決定した。IAEA調査を嫌がったのは、何か重大な損傷やトラブルを隠しているからだと疑われても仕方のない対応だ。

 原発事故防止の3原則は「止める」「冷やす」「閉じ込める」だ。先ず問題なのは、地震による激しい揺れのなかで制御棒が正しく挿入されたのか、燃料棒の破損はないのかだ。稼動中だった7号機の主排気筒からはヨウ素が放出されており、燃料棒が破損している可能性は強い。

 さらに原子炉格納容器にぶら下がっている50トンの再循環ポンプに異常があれば、崩壊熱を出し続けている核燃料を十分に冷やすことができない。電源や給水路が断たれれば原子炉は空焚き状態となり、最悪の場合炉心溶解が起きてしまう。

 こうした数々の懸念に対して東電はほとんど情報公開していない。原発サイトを視察した社民党の保坂展人衆院議員は自らのブログで、「一番、不思議なのは地震後に発電所で続いている工事と作業についてである。IAEAの調査前に、修繕出来るところは全部直してしまえということでやっているのか不審を感じる」と述べている。

 政府と東電は被害状況を隠蔽する付け焼刃の修繕工事を直ちに中止し、1日も早くIAEAの調査を受けるべきだ。同時に、京大原子炉実験所原子力安全研究グループや原子力資料情報室など市民サイドの専門家による調査も必要だ。今や原発に対する国民の不信と不安は頂点に達している。


<日本列島は地震の活動期だ>

 この2年ほどの間に、各地の原発は設計時の想定を上回る巨大地震に襲われた。東北電力女川原発は05年8月宮城県沖地震に、北陸電力志賀原発は07年3月能登半島地震に襲われ、そして今回の中越沖地震だ。

 原発の耐震基準を上回る地震が相次いだことで、昨年9月原子力安全委員会は28年ぶりに耐震設計審査指針を改定した。しかし新指針はとても満足なものとは言えない。

 新指針の検討分科会最終回に委員を辞任・退席した神戸大学都市安全研究センターの石橋克彦教授は、今回の地震を受けて7月20日経済産業省で記者会見を行った。会見で石橋氏は、新指針には「重大な不備がある」、「ここでウヤムヤに済ましてしまうと、いずれ、最悪の『原発震災』が発生し、莫大な人命の損失、国土の喪失、日本列島の衰亡、地球全体の汚染、世界の混乱、未来世代への加害を生ずる」と警鐘を鳴らした。

 言うまでもなく近年巨大地震は立て続けに起きており、日本は地震の活動期に入っている。日本列島は北米プレートとユーラシアプレートの2つの大陸地殻にまたがっており、その下に太平洋プレートとフィリピン海プレートが沈み込んでいる。4つのプレートがぶつかり合う日本の地下周辺には、巨大なエネルギーが日々蓄積されているのだ。

 今回の地震は新潟県から神戸市にかけての「ひずみ集中帯」で起きた。幅50キロ、長さ200キロ程のこの地域では、周囲に比べてプレート衝突による縮み方が数倍激しい。

 京都大学防災研究所の伊藤潔教授は、最近この地域で大地震が続いていることについて、「東海、東南海地震に直結するわけではないが、予想される巨大地震を前に、各地の地震が活発化してもおかしくない時期」と指摘している。

 さらに東京大地震研究所の佐藤比呂志教授は7月27日、実にショッキングな解析結果を発表した。今回中越沖地震を起こした海底断層は越後平野南部にある「鳥越断層」と連続している可能性が高く、今後同断層を含む「長岡平野西縁断層帯」全体が活動した場合、マグニチュード8・0規模の巨大地震が起きる可能性があると警告したのだ。

国土地理院の断層解析

国土地理院は新潟県中越沖地震の断層が当初の予想よりも柏崎刈羽原発の近くまで延びていたとする解析モデルを発表。陸地に向かって浅くなる「南東上がり」のモデルを提示した。これまで、政府の地震調査委員会や気象庁は、余震の分布から陸地に向かって深くなる「南東下がり」の断層との見方を示していた。

 マグニチュードは0・2上がるごとにエネルギーは約2倍になる。もしマグニチュード8・0の地震が再び柏崎刈羽原発を襲えば、そのエネルギーは今回の地震の64倍だ。既にガタガタとなった原発はひとたまりもないだろう。


<浜岡原発は即刻運転中止を>

 太平洋沿岸では東海・東南海・南海とマグニチュード8クラスの巨大地震がいつ起きてもおかしくない。静岡大学教育学部小山真人教授は、「2分続く本震、1年続く余震 東海地震、正しくイメージを」(5月10日付静岡新聞)と題して、次のような警告を発している。

 「M8の本当の恐さは揺れの長さなのである。しかもM8級特有の長周期震動をたっぷりと含むから、超高層ビルや石油タンクなどの巨大建築物はさらに長い時間揺れ続けることになる。阪神・淡路大震災を起こした地震(M7・3)の揺れが、たった10数秒で終わったことを思えば、永遠にも思われる恐怖の時間であろう。(中略)M8級の本震ともなれば、M7級の余震を何発も伴うのが普通である」

 長周期震動を含んだ激しい揺れが2分間も続き、マグニチュード7クラスの余震が連続する。これが迫り来る東海地震の実像だ。言うまでもなく、日本の原発はこれほどの巨大地震を想定して建設されてはいない。今回の中越沖地震の教訓を正しく活かすには、東海地震の想定震源域の真上に建つ中部電力浜岡原子力発電所の運転を即座に中止する以外ない。

 同時に、今回の事故に関して東電の経営責任と国の管理責任は徹底して追及されるべきだ。地震は原発の運転にとって最大のリスク要因だ。だからこそ東電は「原子力発電所の建設用地を決める際には、(中略)直下に地震の原因となる活断層がないことを確認しています」と語ってきた。それでも今回の地震を引き起こした活断層を見逃していた以上、東電のリスクマネジメントは完全に破綻したのである。

 東電の経営陣は、経営責任を免れない。実際に7月上旬には4000円台だった東電の株価は事故直後から急落し、7月30日には3150円となり今年の底値をつけている。わずか半月で20%以上暴落したことになる。

 ドイツでは今年6月、原発のトラブルを隠蔽しようとしたスウェーデン電力大手バッテンファル社の欧州法人社長は厳しい批判を浴びて辞任した。東電経営陣は今回の事故や情報の遅れなどの責任をとって総退陣すべきだ。

 また、原発を国策とするがゆえにチェックを曖昧にしてきた国の管理責任も厳しく問われる。地震大国での原発の運転は、ロシアン・ルーレットに等しい自殺行為だ。こんな危険な賭けに国民を巻き込むのを許してはならない。

 自らの命と健康を守るために、今こそ脱原発のうねりを全国から創り出す時だ。

(1249号 2007年8月10日発行)