7月29日に行われた参議院選挙において、安倍自民党は歴史的大敗を喫した。

 自民党は改選前64議席を37議席に減らし、連立を組む公明党も選挙区で擁立した5人中3人が落選する惨敗となった。まさに国民は、安倍自公政権に対して明確な不信任を突きつけたのである。

 投票日に朝日新聞社が実施した出口調査では、56%が安倍首相に「代わってほしい」と回答している。ところが、こうした国民の意志を無視黙殺し、安倍首相は早々と続投を宣言した。

 「反省すべき点は反省していかないといけないが、私の国造りはまだスタートしたばかりだ。改革を進め新しい国をつくっていくために、これからも総理として責任を果たしていかなければいけない」

 自民党惨敗を伝える投票日夜の報道番組で、安倍首相は「私の国造り」を続けると公言した。結果責任が問われる政治家としての資質も、一国のリーダーになる能力も見識も持ち合わせていないのだ。こんなミーイズム丸出しのリーダーに導かれた国は滅びる。

 そもそも今回自民党が大敗した原因は、自公政権の政策に対し国民の多くがNOを突きつけたことにある。国内では格差が拡大する一方で、年金や福祉などの社会保障制度は完全に破綻しつつある。

 外交政策では、相変わらず対米追随一辺倒だ。恣意的に人選した私的諮問委員会でこれまで政府が積み上げてきた憲法解釈を勝手に変更し、日米安保の下での集団的自衛権行使に踏み込もうとしている。

 一方でタカ派で固めた安倍政権は、アメリカの対北朝鮮政策の転換を理解できない。その結果日本は拉致問題に拘泥し続け、今や六カ国協議の「お荷物」と化している。

 自民党の敗因は、相次ぐ閣僚の「政治とカネ」問題やスキャンダル発言、歴史的に隠蔽されてきた「消えた年金問題」だけではないのだ。

 今回改選前32議席から60議席台に躍進した民主党は、「生活が第一」をスローガンに掲げ、マニフェストでは子ども手当創設や農業の戸別所得補償制度を提起した。さらに外交政策では、イラクからの自衛隊即時撤退を打ち出した。

 とりわけ農家への所得補償制度は、構造改革のなかで切り捨てられてきた農村部で歓迎された。その結果地方の29の1人区で民主党は圧勝、逆に自民党は東北、四国で全敗した。

 若者の貧困が深刻な問題になるなか、多くの無党派層も民主党に投票した。朝日新聞の調査では、自民14%に対し民主は51%と圧倒的に支持されたのだ。

 こうした現実を前にしてもなお、安倍首相は「基本路線については多くの国民のみなさまに理解していただいている」と恥ずかしげもなく語っている。連立を組む公明党の太田代表も首相続投を支持している。二人とも、ただただ政権の座にしがみつきたいだけなのだ。

 さらに深刻なことは、自民党内からポスト安倍を輩出できないことだ。小泉前首相の強烈なリーダーシップに依存してきた自民党だが、蓋を開けてみれば次世代を担う人材が見当たらない。

 戦後永らく政権政党として君臨した自民党は、今や自浄作用を喪失し、溶融しつつある。二大政党が競い合い、いつでも政権交代があり得る緊張感のある政治が必要だ。

 今回の選挙戦で安倍首相は、「私と小沢さん、どちらが首相にふさわしいか、国民に聞きたい」と演説して回った。結果は明らかとなった。

 国民の審判を無視し、自らの言葉に責任をとれないリーダーが政権の座に居座るようでは、日本の議会制民主主義はますます空洞化する。

 安倍政権に残された選択は、即刻総辞職するか、さもなくば解散・総選挙しかないはずだ。

(1249号 2007年8月10日発行)