日本はアメリカのスターウォーズ基地になる

 安倍首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」は、5月18日に初会合を持った。

 首相は冒頭、「国民の生命、財産を守るために、日米同盟がより効果的に機能するようにすることがこれまでにも増して重要である」と述べ、集団的自衛権行使の是非を検討するよう指示した。

 具体的には、以下の4つのケースについて検討が始まる。

 ①米国を狙った第三国の弾道ミサイルをミサイル防衛システム(MD)で迎撃可能か。

 ②公海上で自衛艦と並走中の米艦船が攻撃された場合の反撃は可能か。

 ③「武力行使と一体化しない」との条件で既に行われている補給、輸送、医療以外の多国籍軍への後方支援は可能か。

 ④国連平和維持活動(PKO)で、他国の部隊又は隊員が攻撃を受けている場合の武器使用は可能か。

 この懇談会のメンバーは、岡崎久彦元駐タイ大使や葛西敬之JR東海会長など13人だ。

 共同通信によればこの内12名は、「集団的自衛権行使は違憲」とするこれまでの政府解釈を批判したり、解釈変更を求めていた人たちだ。

 連立与党の公明党太田昭宏代表ですら、「いわゆる右寄りの人、乱暴な議論をする人たちが多く入っているということを、多くの人たちが心配している」と批判するぐらいだ。

 実際初会合では、集団的自衛権行使を否定する意見は出なかった。最初からデキレースなのである。

 これまで政府は、1981年の国会答弁「集団的自衛権の行使はわが国を防衛するための必要最小限度の範囲を超え、憲法上許されない」を踏襲してきた。

 にも関わらず、単なる首相の私的諮問機関がこれを覆す議論を開始したのである。

 こうした動きに対し秋山収元内閣法制局長官は、5月18日付朝日新聞のインタビューで次のように批判している。

 「内閣法制局は憲法の規範的な意味を守ってきた。首相はそうした積み重ねを無視しないでほしい。時の政府の判断で解釈を変更できるのなら、公権力を縛る憲法の意味が失われてしまう」

 安倍首相は、憲法は時代にそぐわないから改憲が必要だと主張してきたはずだ。

 しかしその一方で、私的諮問機関を利用して歯止めなき解釈改憲に踏み出した。

 こんな政府の暴走が許されるなら、どんな新しい憲法を作っても何の意味もない。改憲論議以前に、立憲主義と議会制民主主義そのものが脅かされている。

 そもそも日本に集団的自衛権行使を求めているのはアメリカだ。

 ロバート・ゲイツ米国国防相は、4月30日にワシントンで開かれた日米防衛首脳会談で、「日本は米国領土を狙った弾道ミサイルを要撃しなければならない」と要請した。

 アメリカは、日本を本土防衛のミサイル基地にしたいのだ。

 それだけではない。偵察衛星や大気圏外でのミサイル迎撃と一体のものであるMD構想は、アメリカの世界戦略そのものだ。

 米軍が1999年に作成した『2020年へのビジョン』では、「世界経済のグローバル化はこれからもつづき、〝持つ者〟と〝持たざる者〟の格差は広がるだろう」、「アメリカの権益と投資を守るために、軍事作戦の宇宙面を支配する」、「他国に宇宙へのアクセスを与えない」と、宇宙軍戦略の重要性を明言している。

 ネオコンの代表的論客であるローレンス・F・カプランも、「ミサイル防衛は実際にはアメリカを守ることを目的としていない。それは世界支配の道具なのだ」と語っている。

 ゆえに日本が集団的自衛権を認め、日米共同のMDが強化されれば、アジアの核軍拡競争はさらに加速する。

 既に中国はMDに対抗するためミサイルの多弾頭化を進め、ロシアは最新式のICBM(大陸間弾道ミサイル)やMDの配備・開発を進めている。

 安倍政権は、アメリカのスターウォーズ計画に日本を組み込もうとしている。それは日本・アジアの平和と安全を脅かすことにしかならない。