加入者の7人に1人はタダで年金が受け取れる

                                        谷山進一

 私は健康保険組合で働いている。仕事を通じて日頃から感じている、現在の年金制度の問題点について述べてみたい。

 国民年金には第1号から第3号まで、3つの被保険者資格がある。

 第1号被保険者とは厚生年金未加入者のことで、自営業、無職、学生などが該当する。第2号被保険者は、厚生年金・共済年金加入者を指す。

 この第1号と第2号の被保険者は、毎月保険料を納付しなければならない。

 第1号の場合、世帯収入が一定以下や失業した場合、保険料を免除したり、猶予期間を設ける制度もある。しかし原則はあくまで、納付料に応じてしか年金を受け取れない。

 これに比して第3号被保険者は、本人が保険料を納めなくても国民年金が受給できる。ただしその資格を得るためには、「被扶養者」として認定される必要がある。

 私の業務は健康保険で「被扶養者」を認定することだ。

 資格条件は、①被保険者の直系親族、配偶者(戸籍上の婚姻届がなくとも、事実上、婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、弟妹で、主として被保険者に生計を維持されている人、②被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている人、と定められている。

 実は健康保険組合は、こうした規定に基づいて配偶者を扶養認定した場合、第3号被保険者の手続書類にも判を押し、社会保険事務所に送付しているのだ。

 健康保険は最も「扶養」概念と繋がりが深く、実態を把握していると考えられているのからだろう。

 結果として私は、健康保険の仕事を通じて、年金の第3号被保険者の認定にも関わっているのである。

第3号被保険者の保険料は無料

 第3号の場合、なぜ保険料を納めなくても年金が受け取れるのか? 当然出てくるこうした疑問に対し、社会保険庁はHPで次のように説明している。

 「この第3号被保険者の保険料は、だれが負担しているのでしょうか? これは、厚生年金や共済年金に加入している人々(国民年金第2号被保険者。結婚していない人も、共働きの夫妻も)が高めの保険料を負担して賄っているのです」

 つまり第2号被保険者は、自分の厚生年金保険料にプラスして、扶養する配偶者の国民年金保険料まで支払っていると「みなす」のが現在の年金制度なのである。

 現在公的年金加入者は7000万人余りだが、そのうち保険料負担がない第3号被保険者は約1000万人。

 ちなみに昨今話題となっている公的年金の未加入者、未納者を合わせても400万人程度だ。

 それをはるかに上回る数となる年金加入者の7人に1人は、保険料を納付せずに年金を受けとることが可能なのだ。

 もちろん、第3号被保険者=被扶養者の現実も様々だ。

 そもそも働きたくても働けない人、本当に収入が全くない人もいる。パートで働きながらも、所得税の控除対象配偶者になれる年収103万円以下、あるいは健康保険の被扶養者となれる年収130万円以下しか稼がない人もいる。

 一方で、年収が103万円以下で厚生年金に加入している第1号被保険者も珍しくない。パートやアルバイトでも、1週間の勤務時間が一般社員の4分の3以上であれば社会保険の強制適用の対象となるからだ。

 例えば平均月収101000円未満の場合、厚生年金保険料は1月あたり約7174円となり、この額を事業主と本人で折半する。

 少ない年収にも関わらず、毎月厚生年金の保険料を支払っている人たちからすれば、第3号被保険者の待遇に納得できるはずはない。

 さらに第1号被保険者が納付する国民年金では、減免が全くなければ毎月一律13860円の保険料を全額自己負担しなければならない。

 しかも25年以上納めて満額受給資格が生じても、1月約66000円しかもらえない。

 月額66000円で老後の生活を賄うことなど到底不可能だが、社会保険庁は「本来、健康で文化的な最低限度の生活は、国民の自助努力によって達成されることが基本であり、老後の生活についても、公的年金を中核としつつ、勤労収入や、私的年金貯蓄等の自助努力を組み合わせて、必要な費用を賄うことを基本におくべきです」と開き直っている。

保険料に応じた受給額で公正に

 勿論、「ゆりかごから墓場まで」すべて国が面倒を見るべきだと考えるのは間違いだ。

 しかし健康保険組合で働いている私自身、現在の年金制度の公正性には正直自信が持てない。

 支払った保険料に応じて年金を受け取れる公正なシステムにしない限り、少子高齢化に伴って日本の年金システムはますます崩壊する。

 こんな危機感から、外国の年金制度はどうなっているのかを調べてみた。

 古い資料だが経済企画庁の97年版「国民生活白書」によると、アメリカ・イギリス・スウェーデンなどでも保険料を納付しない配偶者の年金受給権を認めている。

 しかし受け取れる年金の額は、保険料納付者と比べて減額されている。

 同白書は、「我が国では保険料負担者と同額の年金を受給できるという点で、保険料を(負担していない配偶者と)負担している配偶者との公平性の問題は大きい」と指摘していた。私もその通りだと思う。

 ただでさえ多くの国民は、年金制度に対する不信感、不安感を募らせている。

 保険料を支払わないにも関わらず年金を受けとれる第3号被保険者の存在は、年金財政をますます逼迫するだろう。

 私は、20歳以上の学生等にも年金保険料の負担を求めている以上、第3号資格者にも何らかの形で保険料の負担を求めるべきだと思う。

 それが無理なら、せめて外国のように給付金額を制限し、保険料を納付している人の不公平感を少しでも払拭する努力をすべきだと思う。

 ちなみに本年4月より、離婚時の厚生年金分割が可能になった。

 例えば第3号被保険者だった女性が離婚した場合、扶養者の前夫が加入していた厚生年金の最大半分を受け取れる。

 前夫が支払ってきた保険料は、夫婦共同して負担したものだと認められるわけだ。

 この年金制度改革に対し、「離婚が増える」と反対した政治家もいた。実際巷では、今後中高年の離婚は急増すると噂されている。

 社会保険庁によれば、この件に関し全国の年金窓口での相談件数は、昨年10月から今年2月までの5ヶ月間で2万4000件に上る。

 年金受給が夫婦単位ではなく、個人単位で行われることは否定しないが、だとすればなおさら、第3号被保険者は応分の保険料を負担すべきではないだろうか。

                     (神奈川県 30代・法人職員)

1243号 2007年5月10日発行